第三種電気主任技術者の過去問
平成28年度（2016年）
機械 問45

誘導電動機の原理は、
まず固定子(1次側)に電流を流し、回転磁界を発生させます。
この回転磁界が回転子(2次側)に電磁誘導を発生させ、モーターを回転させます。
発生する誘導起電力(V = - N×ΔΦ/Δt)は、起磁力を打ち消すように電流を流します。

以上のことから
アは回転磁界
イは打ち消す
ウは1次
エは2次
となります。


回転子が静止している状態はN = 0、つまりS = 1。
回転数が同期速度と等しい状態はN = Ns、つまりS = 0。

滑りが0に近づくということは、導体の回転速度と回転磁界の差が小さくなるということです。
誘導起電力(V = - N×ΔΦ/Δt)のΔΦ(磁束の変化量)が小さくなります。
つまりSが0に近づくほど、誘導起電力は0に近づいていきます。

このことから
オはsが適切です。

選択肢は5．となります。

三相誘導電動機は、固定子巻線が回転子の回転方向に、１２０°ずつずらして配置されています。そしてそれぞれの固定子巻線に三相交流の電流を流す事によって、固定子の中に回転する磁界を発生させます。回転子はこの回転磁界によって回転トルクが生まれます。従いまして、（ア）には回転磁界が入ります。

その時、回転子巻線の電流は、起磁力（回転磁界）を打ち消す様に流れますので、（イ）には打ち消すが入ります。

固定子巻線には電流を流して磁界を発生させ、回転子巻線にはその磁界により電流が流れます。変圧器も同様、一次巻線に電流を流して磁界を発生させ、その磁界により、二次巻線には電流が流れます。従って（ウ）には一次が、（エ）には二次が入ります。

滑り量ｓとは、回転磁界がｎｓの速度で回転している時、回転子がどの位滑っているかの割合を示します。回転子がｎの速度で回転しているとすると、回転速度の差はｎｓ－ｎですので、回転磁界の回転速度に対し、滑り量ｓは、ｓ＝（ｎｓ－ｎ）／ｎｓで表されます。

よって、回転子が静止している時（つまり回転を始める時）、ｎ＝０ですので、上式よりｓ＝１になります。そして、回転子が回転を始め、ちょうど回転磁界と回転速度が同じになった時（ｎｓ＝ｎ）、滑りｓ＝０となります。誘導起電力は、滑りが大きくなればなる程大きくなり、滑りｓに対し、比例の関係にあります。

回転子が静止している時の誘導起電力をE、滑りｓで回転している時の誘導起電力をＥ’とすると、Ｅ：１＝Ｅ’：ｓ（Ｅ：Ｅ’＝１：ｓ でも良い）になり、Ｅ’＝ｓＥとなります。従って、回転時の誘導起電力Ｅ’は、停止時の誘導起電力Ｅのｓ倍となり、（オ）にはｓが入ります。

以上より、正解は５．となります。

三相誘導電動機の誘導起電力に関する文章問題です。

 

（ア）回転磁界

　三相誘導電動機で固定子巻線に電流が流れると回転磁界が生じ、これが回転子巻線を切るので回転子巻線に起電力が誘導され、この起電力によって回転子巻線に電流が流れることでトルクが生じます。

 

（イ）打ち消す

　回転子巻線の電流によって生じる起磁力を打ち消すように固定子巻線に電流が流れます。

 

（ウ）一次

　固定子巻線は変圧器の一次巻線に相当します。

 

（エ）二次

　回転子巻線は変圧器の二次巻線に相当します。

 

（オ）s

　回転子がn[min^-1]の速度で回転しているときは、回転磁界の速度をn_s[min^-1]とすると、滑りsはs=(n_sーn) / n_sで表されます。このときの二次誘導起電力の大きさは、回転子が停止しているときのs倍となります。