大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問23 (世界史B(第4問) 問1)

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問23(世界史B(第4問) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)

歴史上の出来事や人物に対しては、異なる解釈や評価が生じることがある。歴史評価の多様性に関わる次の文章を読み、後の問いに答えよ。

次の資料は、イギリス人作家ジョージ=オーウェルがスペイン内戦に人民戦線側で従軍した体験に基づいて著し、内戦のさなかに出版した書物の一節である。
(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)

資料
7月18日に戦闘が始まった時、ヨーロッパの反ファシストの人々は皆、希望に身震いしたことだろう。ついに、この地で民主主義がファシズムに対して、はっきりと立ち上がったからだ。この10年に満たない数年間、民主的といわれる国々は、ファシズムに負け続けるという歴史を歩んできた。例えば、a 日本人の望むままの行動が容認されてしまった。ヒトラーは権力の座に上りつめ、あらゆる党派の政敵の虐殺に手を付け始めた。そして、b 53ほどの国々が戦争の舞台裏で偽善的な言い合いをしている間に、ムッソリーニはアビシニア人を爆撃した。しかしスペインでは、穏健な左翼政府が転覆されかかった時、予想に違(たが)って、スペインの人々は立ち上がったのだ。それは潮の変わり目のように思えたし、恐らくはそうだった。

上の資料から窺(うかが)えるように、オーウェルは、ヒトラーやムッソリーニの政権と同様に、同じ時期の日本の政権をファシズム体制だとみなしていた。c 世界史の教科書には、これと同様の見方をするものと、日本の戦時体制とファシズムとを区別する立場から書かれているものとがある。どちらの見方にも、相応の根拠があると考えられる

下線部aは、オーウェルが、日本あるいは日本軍が関わった出来事を指して述べたものである。この出来事について述べた文として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。
  • ノモンハン事件で、ソ連軍に勝利した。
  • 満州国(満洲国)を建国した。
  • 台湾を獲得した。
  • 真珠湾を攻撃した。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (1件)

01

この問題は、スペイン内戦を描いたジョージ=オーウェルの言葉から、彼が批判している「日本人の望むままの行動」とは何かを読み取り、時代背景に合った出来事を選ぶものです。

 

 

 

【資料の時代背景を整理】

資料の中では次の出来事が並んでいます。

・「7月18日に戦闘が始まった」→ 1936年のスペイン内戦の開始日

・「ヒトラーが政敵を虐殺し始めた」

・「ムッソリーニがアビシニア(エチオピア)を爆撃した」→ 1935年のイタリアのエチオピア侵攻

これらと同列に語られる「日本人の望むままの行動」も、1930年代前半から半ばの出来事だと考えられます。

選択肢1. ノモンハン事件で、ソ連軍に勝利した。

発生は1939年です。

スペイン内戦(1936年〜)よりも後になります。

ソ連と日本の軍事衝突で、最終的には日本が敗北に近い形で停戦したとも言われています。

時期が合わず、不適当です。

選択肢2. 満州国(満洲国)を建国した。

1931年に満州事変が起き、1932年に満州国を建国しました。

国際連盟の勧告を無視し、日本はこの地域を実効支配したまま脱退(1933年)しています。

「日本人の望むままの行動が容認された」ことを象徴する国際問題として非常に有名です。

時期も内容も資料と一致しており、最も適当です。

選択肢3. 台湾を獲得した。

日清戦争の結果、1895年に台湾を獲得しました。

資料中の「この10年に満たない数年間」には当てはまらず、不適当です。

選択肢4. 真珠湾を攻撃した。

1941年の出来事で、太平洋戦争の開戦を意味します。

こちらも資料の書かれたスペイン内戦当時よりずっと後ですので、不適当です。

まとめ

1930年代前半に、国際秩序に反して強引に行われた「満州国建国」は、当時の日本の軍事行動を象徴する重大な出来事です。

このことを、ジョージ=オーウェルは「日本人の望むままの行動が容認された」と批判的に表現しています。

したがって、最も適当なのは 「満州国(満洲国)を建国した。」 です。

参考になった数0