大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)追・再試験
問27 (世界史B(第4問) 問6)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)追・再試験 問27(世界史B(第4問) 問6) (訂正依頼・報告はこちら)

歴史を学ぶ際には、資料の内容だけでなく、作成者(書き手)が生きた時代やその立場も考慮する必要がある。そうした視点に立った次の文章を読み、後の問いに答えよ。

次の文章は、『ローマ人盛衰原因論』という著作の、古代ローマを扱った部分を論じたものである。

『ローマ人盛衰原因論』の著者は、ローマ人の歴史を合理的な因果関係によって説明しようとする。彼によれば、ローマ隆盛の最大の理由は強力な軍隊であった。当初、軍隊は土地など一定の財産を持つ市民から構成され、彼らは祖国の防衛に高い関心があったからである。そして著者は、共和政自体を高く評価する。元老院、市民、役人が相互に各権力の濫用を抑制する体制だったからである。この評価は、彼の後の著作『法の精神』に通じる。
ローマの衰退の原因もまた、軍隊の性質の変化に求められた。共和政末期には、土地を持たない貧しい市民も軍隊に動員されるようになった。また軍隊の活動の場がイタリア半島の外に移ると、軍隊は国家自体ではなく、給与や恩賞を与えてくれる一部の将軍を支持し、カエサルに代表される特定の人物に権力が集中した。著者は、各権力を抑制する体制の崩壊につながったこの変化が衰退の一因であったと考えている。
軍隊自体は、アウグストゥスに始まる帝政の下でも強大であったが、その規律は低下し、維持費も国家の負担となった。そのような軍隊が皇帝の地位をも左右する力を持つようになったことで、軍人皇帝時代の混乱が生じた。ディオクレティアヌス以降は、軍隊の維持費のために重税が課されたため、政治を担っていた富裕層が弱体化した。同時に、軍隊に異民族が利用されるようになり、軍隊自体が弱体化したと論じる。
以上のような軍隊の性質の変化が、ローマの繁栄を支えた軍隊の弱体化につながり、結果として西ローマ帝国は4世紀後半以降の異民族の侵入に対処できなくなって滅亡したと、著者は結論づけている。歴史を論理的に説明しようとする著者の姿勢は、彼が生きていた時代に隆盛した思想潮流を反映している。

前の文章を参考にしつつ、『ローマ人盛衰原因論』の著者について述べた文として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
  • この著者は、王権神授説を唱えた。
  • この著者は、啓蒙思想家の一人に数えられている。
  • この著者は、「国際法の祖(国際法の父)」と呼ばれた。
  • この著者は、フランスの第三共和政を高く評価した。

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この過去問の解説 (1件)

01

『ローマ人盛衰原因論』の著者についてとわれた問題です。

選択肢1. この著者は、王権神授説を唱えた。

著書『家父長権論』にいて王権神授説を唱えたのはイギリスのフィルマーです。フィルマーは、王権を旧約聖書で人類の祖とされるアダムに由来する家父長権であると説きました。『ローマ人盛衰原因論』の著者ではないので誤りです。なお、フィルマーの唱えた王権神授説は、ロックの著書『統治二論』の中で批判されています。

選択肢2. この著者は、啓蒙思想家の一人に数えられている。

『ローマ人盛衰原因論』の著者はルソーです。ルソーは、『社会契約論』を著したフランスの啓蒙思想家で、フランス革命に大きな影響を与えました。これが正解です。

選択肢3. この著者は、「国際法の祖(国際法の父)」と呼ばれた。

「国際法の祖(国際法の父)」と呼ばれたのはオランダの法学者・政治家であるグロティウスです。グロティウスは、著書『戦争と平和の法』の中で国際法を体系化したことから「国際法の祖(国際法の父)」と呼ばれました。『ローマ人盛衰原因論』の著者ではないので誤りです。

選択肢4. この著者は、フランスの第三共和政を高く評価した。

フランスの第三共和政は、普仏戦争中の1870年から第二次世界大戦初期の1940年にかけて存続したフランスの政治体制です。『ローマ人盛衰原因論』の著者であるルソーは第三共和政が樹立される前の1778年に亡くなっているので、第三共和政を高く評価することはあり得ません。よって誤りです。

まとめ

17世紀から18世紀にかけての思想家についての知識が必要な問題でした。もう1度この時期の思想家について、人物名とその思想内容について整理しておきましょう。

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