マンション管理士の過去問
平成26年度(2014年)
問7
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問題
マンション管理士試験 平成26年度(2014年) 問7 (訂正依頼・報告はこちら)
甲マンションには、4つの専有部分があり、101号室と102号室はAが、201号室はBが、202号室はCがそれぞれ所有している。甲の敷地は、A及びBが敷地利用権(AとBの共有)を有しているが、Cは敷地利用権を有していない。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、甲については、不動産登記法の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることが登記され、また、規約に専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができない旨が定められているものとする。
- A及びBが、Cに対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求したときは、その意思表示によって、一方的に時価による売買契約成立の効果が生じる。
- Aの所有する101号室に係る敷地利用権と102号室に係る敷地利用権の割合は、その割合が規約に定められているときはその割合によるが、規約に定められていないときは等しい割合による。
- Aが、101号室と分離して、101号室に係る敷地利用権について第三者Dのために抵当権を設定した場合に、Dがその抵当権設定時にそれらの分離処分が禁止されていることを知らないときは、Aは、その無効をDに主張することができない。
- Bが死亡して相続人がないときは、Bの敷地利用権は、敷地の他の共有者であるAに帰属する。
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この過去問の解説 (3件)
01
1 〇正しい。
その意思表示によって、一方的に時価による売
買契約成立の効果が生じる「形成権」です。
区分所有法では、建物所有に必要な土地に対す
る権利を「敷地利用権」と定義し、民法で定め
る、一般の土地に対する権利とは別の概念を定義
しています。
また不動産取引との関係から、マンションでは
戸建てと異なった不動産の登記方法をとることに
しました。
それが、設問にある「専有部分と敷地利用権と
を分離して処分することができない」という
建物(専有部分)の権利と土地の権利(敷地利用権)を
一体化して、専有部分の処分(譲渡、抵当権の設
定、遺贈など)に伴い土地の権利も共に動くよう
にしました。
民法の原則により、土地の権利を持っているA
とBは、建物は持っていても土地の権利(敷地利
用権)を有しないCに対して、土地を不法占拠し
ているので、その区分所有権(建物の専有部分を
所有する権利)を時価で売り渡せと請求できま
す。
そこで、この「区分所有権売渡請求権」の性質
の解釈ですが、通常の売買契約と異なり申込みと
相手の承諾という当事者間の意思の合致は必要で
はなく、土地権利者からの一方的な「売り渡せ」
という意思表示により売買が成立します。相手が
その申し出を拒んでも、「売り渡せ」という申し
出は成立します。「形成権」です。
そこで、A及びBが、Cに対し、区分所有権を
時価で売り渡すべきことを請求したときは、その
意思表示によって、一方的に時価による売買契約
成立の効果が生じますから、正しいと判断できま
す。
2 ×誤っている。
敷地利用権の割合は規約がないときは、専有部
分の床面積の割合によります。
敷地利用権の割合は、区分所有法第22条2項
及び同第14条1項によれば、敷地利用権の割合
が規約に定められているときはその割合によりま
すが、規約に定められていないときは、第14条
により、共用部分の持分と同じように、専有部分
の床面積の割合によりますから、誤りと判断でき
ます。
3 ×誤っている。
登記後であれば、善意の相手方にも無効を主張
できます。
区分所有法では、土地の権利である敷地利用権
と、建物の専有部分とは分離して処分(譲渡、抵
当権の設定、遺贈など)ができないとしました
が、この規定は区分所有法だけの規定です。
そこで、区分所有法の制定について知らない人
を保護する規定が区分所有法第23条です。
この区分所有法第23条によれば、相手方Dが
抵当権設定時にそれらの分離処分が禁止されてい
ることを知らないので、Aは無効だと言えないよ
うですが、設問では、既に「不動産登記法の定め
るところにより分離して処分することができない
専有部分及び敷地利用権であることが登記され、
また、規約に専有部分と敷地利用権とを分離して
処分することができない旨が定められているもの
とする。」との条件ですから、第23条の但し書
きにより、登記をした後での処分となり、例え相
手方が分離処分が禁止されていることを知らなく
ても、Aはその無効を主張できますから、誤りと
判断できます。
4 ×誤っている。
民法の共有と異なり、死亡して相続人がないと
きは、国のものとなります。
設問の場合、建物の専有部分はBの個人所有で
すが、土地の権利である敷地利用権は、AとBと
の共有です。
すると、Bが死亡して相続人が(特別縁故者
も)いないとなると、建物である専有部分の帰属
は、民法第959条により、専有部分は国庫のも
のとなります。
一方、AとBとの共有である敷地利用権は、共
有のため民法第255条により、Bが死亡して相
続人がいないと、 その持分は他の共有者であるA
のものになります。
これだと、建物の専有部分は国のものですが、
敷地利用権はAのものになってしまいます。
そこで、区分所有法では、相続関係としては、
区分所有法第24条で敷地利用権には適用しない
こととしました。
つまり、敷地利用権が数人で有する所有権その
他の権利である場合には、民法第255条の「共
有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死
亡して相続人がないときは、その持分は、他の共
有者に帰属する」の規定は適用しないとしたので
す。
その結果、敷地利用権は他の共有者に属さずに
専有部分とともに、専有部分の所有者(特別縁故
者または国庫)に帰属し、建物の権利と土地の権
利はまた同一人に帰属して、分離処分の禁止が適
用されますから、誤りと判断できます。
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02
1.区分所有法では、「敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる」と規定されています。
この売渡請求権が行使されると、一方的な意思表示で売買契約が成立します。
2.1人の区分所有者が複数の専有部分を所有している場合の各専有部分に対応する敷地利用権の割合について、区分所有法では「規約に異なる割合が定められているときを除いて、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、専有部分の床面積の割合による」としています。
規約に定められていないときは等しい割合によるのではありません。
よって、この設問は誤りです。
3.甲については、分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることが登記されています。分離処分が禁止されているため、甲と101号室に対し別々に抵当権を設定することはできません。
登記後に抵当権の設定が行われていますので、その無効を善意の相手方Dにも主張することができます。
よって、この設問は誤りです。
4.民法の規定を適用した場合、201号室は国に、甲の敷地利用権は共有者のAに帰属することとなり、分離処分禁止の規定に反してしまいます。
そのため、区分所有法では、分離処分が禁止されている場合には、敷地利用権は他の共有者Aに帰属しないと定めています。
よって、この設問は誤りです。
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03
1 正しい。
区分所有法第10条に「敷地利用権を有しない区分所有者があるときは、その専有部分の収去を請求する権利を有する者は、その区分所有者に対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。」とありますので、A及びBは、Cに対し、区分所有権を時価で売り渡すべきことを請求することができ、この売渡請求権は形成権となりますので、一方的な意思表示によって時価による売買契約の成立の効果が生じます。
2 誤り。
区分所有法第22条の第2項にあるように、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は「専有部分が数人の共有に属するときは、規約による定めがなければ、専有部分の床面積の割合にあると規定されています。等しい割合ではありません。
3 誤り。
区分所有法第23条にあるように、敷地利用権の分離処分の禁止の規定に違反する専有部分又は敷地利用権の処分については、その無効を善意の相手方に主張することができませんが、不動産登記法の定めるところにより分離して処分することができない専有部分及び敷地利用権であることを登記した後に、その処分がされたときは、この限りでないとされています。したがって、今回のケースでは後者のパターンに当てはまるため、Aはその無効をDに主張することができます。
4 誤り。
民法第255条にある「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」について、区分所有法第24条にて、敷地利用権については適用しないとありますので、この選択肢は誤りとなります。
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