マンション管理士の過去問
平成29年度(2017年)
問12

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問題

マンション管理士試験 平成29年度(2017年) 問12 (訂正依頼・報告はこちら)

甲マンションの区分所有者Aが、管理組合(管理者B)に対し、管理費を滞納している場合における管理費債権の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  • BがAに対し管理費の支払請求訴訟を提起すれば、その訴えが却下された場合でも、時効は中断する。
  • 管理費債権の一部について、すでに消滅時効が完成しているにもかかわらず、Aが時効完成の事実を知らないで、Bに対し、滞納額全額を支払う旨の承認書を差し入れたときは、以後、完成した当該消滅時効の主張は認められない。
  • Aが自ら破産手続開始の申立てをし、破産手続開始の決定がなされた場合、Bが滞納管理費債権について破産債権として届出をしただけでは、時効は中断しない。
  • BがAに対し書面で支払の催告を行う場合、内容証明郵便によるものでなければ、時効中断事由としての催告の効力は生じない。

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この過去問の解説 (3件)

01

この問題は、民法が改正されたため
選択肢を一部変更して解説します。

正解は1と2です。
(出題時の平成29年当時は、2が正解でした)

1.正しい。
選択肢1の文章にある「中断」を改正後の言葉の
「時効の完成の猶予」に変更します。

選択肢1の文章は、
「BがAに対し管理費の支払請求訴訟を提起すれば、
その訴えが却下された場合でも、時効の完成は猶予される。」
に変更します。

民法第147条1項では、
「次に掲げる事由がある場合には、
その事由が終了する(確定判決又は確定判決と
同一の効力を有するものによって権利が確定することなく
その事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)
までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求・・・」
と規定しています。

2.正しい。
民法第152条第1項では、
「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。」
と規定しています。

一度承認した後に、時効の援用するのは、信義則上、許されないとされています。(最判例昭和40年4月20日)

3.誤り。
選択肢3の文章にある「破産債権として届出を」を
改正後の言葉の「破産手続参加時」に変更します。
また、選択肢1の文章の変更と同じように
「中断」を「時効の完成の猶予」に変更します。

選択肢3の文章は、
「Aが自ら破産手続開始の申立てをし、破産手続開始の決定がなされた場合、
Bが滞納管理費債権について破産手続参加しただけでは、
時効の完成は猶予されない。」
に変更します。

民法第147条1項では次の4号で、時効の完成の猶予を規定しています。
「4号 破産手続参加・・・」

4.誤り。
民法第150条第1項では、
「催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、
時効は、完成しない。」
と規定しています。

催告の方法は、規定していないので、内容証明郵便に限られません。

以上より、改正民法によると正解は1と2になります。

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02

1.誤り
支払請求訴訟を提起し、その訴えが却下された場合や取り下げの場合は時効は中断(更新)しません。

2.正しい
記載のとおりです。
Aが時効完成の事実を知らないで、Bに対し、滞納額全額を支払う旨の承認書を差し入れたときは、主張を認めた事になります。
改めて完成した当該消滅時効の主張(時効の援用)をしたとしてもそれは認められません。

3.誤り
滞納管理費債権について破産債権として届出をした場合は、債権の消滅時効は中断(更新)します。

4.誤り
内容証明郵便による必要はなく、口頭や、書面、普通郵便でも時効中断事由としての催告の効力は生じます。
ただし内容証明郵便の方が、いつ誰にどんな内容の手紙を出したか等、催告の内容を証明してくれるため、望ましいといえます。

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03

 民法の規定及び判例に関する出題です。

選択肢1. BがAに対し管理費の支払請求訴訟を提起すれば、その訴えが却下された場合でも、時効は中断する。

 民法147条1項1号により、「裁判上の請求がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。」とされ、同条2項により、「前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。」とされます。

 つまり、「その訴えが却下された場合でも」という部分が、誤りです。

選択肢2. 管理費債権の一部について、すでに消滅時効が完成しているにもかかわらず、Aが時効完成の事実を知らないで、Bに対し、滞納額全額を支払う旨の承認書を差し入れたときは、以後、完成した当該消滅時効の主張は認められない。

 民法2条2項により、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」とされ、判例により、時効完成後の債務の承認は、時効完成の事実を知らなかったときでも、以後その完成した消滅時効の援用をすることは許されないとされます。なぜなら、いったん承認した以上、それに反する主張はなしえないとすることが、取引の保護になり信義誠実の原則にかなうからです。

 つまり、「管理費債権の一部について、すでに消滅時効が完成しているにもかかわらず、Aが時効完成の事実を知らないで、Bに対し、滞納額全額を支払う旨の承認書を差し入れたときは、以後、完成した当該消滅時効の主張は認められない。」ということは、正しいです。

選択肢3. Aが自ら破産手続開始の申立てをし、破産手続開始の決定がなされた場合、Bが滞納管理費債権について破産債権として届出をしただけでは、時効は中断しない。

 民法147条1項1号により、「破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。」とされます。

 つまり、「Bが滞納管理費債権について破産債権として届出をしただけでは、時効は中断しない」という部分が、誤りです。

選択肢4. BがAに対し書面で支払の催告を行う場合、内容証明郵便によるものでなければ、時効中断事由としての催告の効力は生じない。

 民法150条1項により、「催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」とされます。

 つまり、「内容証明郵便によるものでなければ、時効中断事由としての催告の効力は生じない」という部分が、誤りです。

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