マンション管理士の過去問
平成30年度(2018年)
問14

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問題

マンション管理士試験 平成30年度(2018年) 問14 (訂正依頼・報告はこちら)

Aがその所有する甲マンションの101号室を、賃料を月額10万円としてBに賃貸し、これを使用中のBが、Aに対し、5月分の賃料10万円の支払を怠った場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、AB間に相殺禁止の特約はないものとし、遅延利息については考慮しないものとする。
  • Bは101号室の敷金として20万円をAに差し入れているが、Bは、Aに対し、当該敷金返還請求権20万円のうち10万円と5月分の賃料10万円とを相殺することはできない。
  • Bが101号室の故障したガス給湯設備の修繕費用として適切である10万円を支出し、AB間に費用負担の特約がないときは、Bは、Aに対し、当該費用の償還請求権10万円と5月分の賃料10万円とを相殺することができる。
  • BがAに対し弁済期が到来した50万円の貸金債権を有しているとき、Bは、Aに対し、当該貸金債権と101号室の5月分の賃料10万円及びいまだ支払期限の到来していない6月から9月までの賃料40万円とを相殺することができる。
  • AがBに対して不法行為を行った結果、BがAに対する損害賠償債権30万円を有しているとき、Bは、Aに対し、損害賠償債権30万円のうち10万円と101号室の5月分の賃料10万円とを相殺することはできない。

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この過去問の解説 (3件)

01

正答は 4 です。

相殺とは、債権者と債務者が相互に同種の債権と債務を有する場合に、その債権と債務とを対等額において消滅させる意思表示のことをいいます。
相殺が有効になされるためには、お互いの債権について弁済期が到来していなければなりません。

1.敷金は、賃料債権、賃貸借終了後の賃借した物の明け渡し義務の履行までに生ずる賃料相当の損害金債権、その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することとなるべき一切の債権を担保することを目的とするものとされています。
したがって、敷金返還請求権は賃借の目的物の明け渡し時に弁済期が到来します。
そのため、弁済期が到来していない敷金返還請求権と相殺することはできません。

2.故障したガス給湯設備の修繕費用は必要費にあたり、賃借人が必要費を支出した場合、「直ちに」その償還を請求することができ、賃貸人はその支払いをしなければなりません。
したがって、当該費用の償還請求権は弁済期が到来しているので、5月分の賃料10万円と相殺することができます。

3.相殺が有効になされるためには、お互いの債権について弁済期が到来していなければなりません。
ただし、受働債権(相殺の意思表示をした人が持っている債務)については、その債務者である相殺権者が期限の利益を放棄できるので、弁済期にあることを要しないと解されています。
したがって、相殺権者Bが有している弁済期が到来した50万円の貸金債権と、5月分の賃料10万円及び弁済期が到来していない6月から9月までの賃料40万円とを相殺することができます。

4.加害者が不法行為によって損害賠償の責任(損害賠償債務)を負う場合に、被害者に対して別の債権を持っていたとしても、加害者はその債権と不法行為による損害賠償債務を相殺することはできません。ただし、被害者からは、不法行為による損害賠償請求権とその他債務との相殺ができます。
よって、この設問は誤りです。

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02

Aが所有する甲マンションの101号室をBに賃貸し、Bが5月分の賃料10万円の支払いを怠った場合に関する記述について、民法の規定及び判例に基づき、誤っているものを判定する問題です。

相殺に関する事項を中心に、敷金、修繕費用、貸金債権、損害賠償債権などの概念が取り上げられています。

選択肢1. Bは101号室の敷金として20万円をAに差し入れているが、Bは、Aに対し、当該敷金返還請求権20万円のうち10万円と5月分の賃料10万円とを相殺することはできない。

正しい

解説:敷金は、賃料債権や賃貸借終了後の賃借した物の明け渡し義務の履行までに生ずる賃料相当の損害金債権、その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することとなるべき一切の債権を担保することを目的としています。しかし、民法622の2の2項により、賃借人は敷金を賃料の弁済に充てることを請求することができないと規定されています。このため、BはAに対して、敷金返還請求権20万円のうち10万円と5月分の賃料10万円とを相殺することはできません。

選択肢2. Bが101号室の故障したガス給湯設備の修繕費用として適切である10万円を支出し、AB間に費用負担の特約がないときは、Bは、Aに対し、当該費用の償還請求権10万円と5月分の賃料10万円とを相殺することができる。

正しい

解説:ガス給湯設備の修繕費用は必要費とされ、賃借人は、直ちに、その償還を請求することができます。したがって、双方の債権が弁済期にあり、修繕費用と5月分の賃料を相殺することができます。

選択肢3. BがAに対し弁済期が到来した50万円の貸金債権を有しているとき、Bは、Aに対し、当該貸金債権と101号室の5月分の賃料10万円及びいまだ支払期限の到来していない6月から9月までの賃料40万円とを相殺することができる。

正しい

解説:自働債権が弁済期にあれば、受働債権の弁済期は、到来していないくてもよいとされています。したがって、BがAに対し弁済期が到来した50万円の貸金債権と当該貸金債権と101号室の5月分の賃料10万円及び支払期限の到来していない6月から9月までの賃料40万円とを相殺することができます。

選択肢4. AがBに対して不法行為を行った結果、BがAに対する損害賠償債権30万円を有しているとき、Bは、Aに対し、損害賠償債権30万円のうち10万円と101号室の5月分の賃料10万円とを相殺することはできない。

誤り

解説:民法509条により、悪意による不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止が規定されていますが、自働債権の場合は相殺可能です。よって、Bは、Aに対し、損害賠償債権30万円のうち10万円と101号室の5月分の賃料10万円とを相殺することができます。

まとめ

この問題を解く際には、民法における相殺の規定とその要件を理解することが重要です。

特に、相殺が可能な債権の存在と弁済期の到来を確認することで、各選択肢が正しいか誤っているかを判断することができます。

また、具体的な事例や判例をもとに、相殺の適用範囲や例外を考慮しながら正確な答えを導き出す必要があります。

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03

正答は 4 です。

1. 相殺は、双方の債権が相殺適状であることが必要です。
「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。」(民法505条)
貸主に敷金返還義務が発生するのは、借主が建物の明け渡しときです。(最判昭.48.2.2)

民法622の2の2項では、賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときでも賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができないと規定されています。
したがって、敷金返還請求権と相殺することができません。

2. ガス給湯設備の修繕費用は必要費とされ、
民法608条第1項により、賃借人は、直ちに、その償還を請求することができます。
したがって、双方の債務が弁済期にあり、修繕費用と5月分の賃料を相殺することができます。

3. 自働債権が弁済期にあれば、受働債権の弁済期は、到来していないくてもよいとされています。
したがって、BがAに対し弁済期が到来した50万円の貸金債権と当該貸金債権と
101号室の5月分の賃料10万円及び支払期限の到来していない6月から9月までの賃料40万円とを相殺することができます。

4. 民法509条により、悪意による不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止が規定されていますが、自働債権の場合は相殺可能です。

よって、Bは、Aに対し、損害賠償債権30万円のうち10万円と101号室の5月分の賃料10万円とを相殺することができます。

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