マンション管理士 過去問
令和6年度(2024年)
問3

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問題

マンション管理士試験 令和6年度(2024年) 問3 (訂正依頼・報告はこちら)

甲マンションの区分所有者はA、B及びCの3名(この問いにおいて「Aら」という。)である。また、同マンションの敷地利用権は、Aらが準共有する賃借権であり、規約には、専有部分と専有部分に係る敷地利用権の分離処分の可否に関する定めは設けられていない。Aらは、甲マンションの敷地の所有者であるXとの間で、土地賃貸借契約を締結している。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
  • Aは、賃借権の準共有持分を処分することについて、Xの承諾を得れば、専有部分と専有部分に係る敷地利用権の準共有持分とを分離して処分することができる。
  • Aが専有部分を専有部分に係る敷地利用権とともに第三者に譲渡するには、敷地利用権の譲渡についてB及びCの同意を得なければならない。
  • Aが専有部分をDに賃貸した場合、AがXから賃借している甲マンションの敷地をDに転貸をしたことになる。
  • Xが敷地をYに譲渡し、敷地の賃貸人たる地位がYに移転した場合であっても、当該敷地の所有権の移転の登記をしなければ、Yは賃貸人の地位をAらに対抗することができない。

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この過去問の解説 (3件)

01

ABC
----
  X
のように、登場人物が多いときは図を描いて整理しましょう。
 

選択肢1. Aは、賃借権の準共有持分を処分することについて、Xの承諾を得れば、専有部分と専有部分に係る敷地利用権の準共有持分とを分離して処分することができる。

誤。敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利(賃借権も含む)である場合には、区分所有者は…

原則:専有部分と敷地利用権を分離処分できない
例外:規約に別段の定めがあれば分離処分できる
(区分所有法22条)

しかし、リード文によれば、「規約には、専有部分と専有部分に係る敷地利用権の分離処分の可否に関する定めは設けられていない」ので、Xの承諾に関係なく、原則通り分離処分はできません。

選択肢2. Aが専有部分を専有部分に係る敷地利用権とともに第三者に譲渡するには、敷地利用権の譲渡についてB及びCの同意を得なければならない。

誤。たとえば、分譲マンションのオーナーであるAが自室を売却することを想像すれば、わざわざご近所のBCの同意を得る必要なんてないことが分かります。
なお、本肢は以下の規定を入れ替えたものと思われるため、区別して覚える必要があります。

自己の持分の処分:単独でできる
共有物全体の処分:共有者全員の同意が必要
(民法251,252条)

選択肢3. Aが専有部分をDに賃貸した場合、AがXから賃借している甲マンションの敷地をDに転貸をしたことになる。

誤。仮に専有部分を「譲渡」すると、敷地利用権を譲渡又は転貸したことになりますが、専有部分を「賃貸」したとしても、敷地利用権を譲渡・転貸したことにはなりません。

選択肢4. Xが敷地をYに譲渡し、敷地の賃貸人たる地位がYに移転した場合であっても、当該敷地の所有権の移転の登記をしなければ、Yは賃貸人の地位をAらに対抗することができない。

正。賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができません(民法605条の2)。

まとめ

日常生活に置き換えてみると答えが分かる場合があるので、積極的にイメージしてみましょう。

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02

敷地利用権の問題は民法と絡めて出題されることが多いので注意しましょう。

選択肢1. Aは、賃借権の準共有持分を処分することについて、Xの承諾を得れば、専有部分と専有部分に係る敷地利用権の準共有持分とを分離して処分することができる。

誤りです。

 

区分所有法第二十二条一項により、『敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。』とあります。今回の設問に『規約に別段の定めがある』とは無いので分離して処分することは出来ません。

選択肢2. Aが専有部分を専有部分に係る敷地利用権とともに第三者に譲渡するには、敷地利用権の譲渡についてB及びCの同意を得なければならない。

誤りです。

 

Aが専有部分を専有部分に係る敷地利用権とともに第三者に譲渡することができ、その譲渡を行う時に他の共有者の同意を得る必要はありません。

選択肢3. Aが専有部分をDに賃貸した場合、AがXから賃借している甲マンションの敷地をDに転貸をしたことになる。

区分所有法第二十二条一項により、『敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。』とあります。

Aが専有部分をDに賃貸した場合は賃借人は賃借している建物を使用することができ、転貸したことにはなりません。

選択肢4. Xが敷地をYに譲渡し、敷地の賃貸人たる地位がYに移転した場合であっても、当該敷地の所有権の移転の登記をしなければ、Yは賃貸人の地位をAらに対抗することができない。

正しいです。

 

民法六百五条の二の三項により『賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。』とあり、当該敷地の所有権の移転の登記をしなければ、Yは賃貸人の地位をAらに対抗することが出来ません。

まとめ

所有権移転登記は基礎的な内容です。

また、敷地利用権の問題は出題されることが多いので理解するようにして下さい。

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03

「区分所有法」と「民法」及び「判例」を組み合わせた幅広い問題です。

一つずつ理解していくことが大切です。

選択肢1. Aは、賃借権の準共有持分を処分することについて、Xの承諾を得れば、専有部分と専有部分に係る敷地利用権の準共有持分とを分離して処分することができる。

誤った肢です。

 

区分所有法第22条第1項に

"敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。"

と規定されています。

 

問題の条件として「規約には、専有部分と専有部分に係る敷地利用権の分離処分の可否に関する定めは設けられていない。」と記載されてありますので、区分所有法第22条第1項の青字部分の適用はありません。

 

となると、赤字部分がそのまま当てはまることとなり、地主Xの承諾があっても分離処分はできません。

選択肢2. Aが専有部分を専有部分に係る敷地利用権とともに第三者に譲渡するには、敷地利用権の譲渡についてB及びCの同意を得なければならない。

誤った肢です。

 

民法612条第1項に

"賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。"

とあります。

 

敷地の賃貸人は地主Xです。Aが専有部分と専有部分に係る敷地利用権を売却する場合、賃貸人Xの承諾が必要であり、BやCの承諾は必要ありません。「X」と「B及びC」を入れ替えた誤った肢です。

選択肢3. Aが専有部分をDに賃貸した場合、AがXから賃借している甲マンションの敷地をDに転貸をしたことになる。

誤った肢です。

 

民法612条第1項に

"賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。"

とあります。

これだけを読むと、「地主さんの承諾がいるのかな?」と思ってしまうかもしれません。

 

大審院昭和8年12月11日に、

"原則として、借地上の建物を建物所有者が第三者に賃貸することは、建物所有者の自由であり、土地賃貸人の承諾を得る必要はなく、土地賃貸人は、土地賃借人が第三者へ建物を賃貸することを拒否することはできない。"

とあります。

 

つまり、土地上の建物(マンションの専有部分)の賃貸の場合は、敷地の転貸にならず地主Xの承諾も不要となります。

選択肢4. Xが敷地をYに譲渡し、敷地の賃貸人たる地位がYに移転した場合であっても、当該敷地の所有権の移転の登記をしなければ、Yは賃貸人の地位をAらに対抗することができない。

正しい肢です。

 

第605条の2
"1 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。"
"2 前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する 。"
"3 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ 、賃借人に対抗することができない。"
"4 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。"

 

と規定されています。

 

民法第605条の2第3項(青字部分)の通り、XからYへの所有権移転登記を経なければ、Yは賃借人に賃貸人の地位を対抗することができません。

まとめ

マンション敷地が別の地主さんのケースの問題でした。

「区分所有法」「民法」「判例」の正確な知識が必要で、難問の部類に入ると思います。

 

 

マンション管理士クラスの、とても低い合格率試験の場合、「解説」だけでなく、根拠となる条文・判例を直にあたると理解が深まると思います。

労力はかかりますが、合格には近づくと考えています。

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