マンション管理士 過去問
令和6年度(2024年)
問5

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問題

マンション管理士試験 令和6年度(2024年) 問5 (訂正依頼・報告はこちら)

区分所有者全員で共有する敷地上にマンションの駐車場があり、規約によってその駐車場の一部を特定の区分所有者だけが使用できる旨の有償の専用使用権が設定されている。この場合における使用料増額の規約変更に関する次の記述のうち、区分所有法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。ただし、専用使用権者の専用使用権は、管理組合との駐車場使用契約に基づくものとする。
  • 専用使用権者に特別の影響を及ぼすべきときは、専用使用権者の承諾を得ることなく規約を変更して、使用料を増額することはできない。
  • 特別の影響を及ぼすべきときとは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合である。
  • 使用料についての増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合であっても、使用料の増額に関する規約の変更は専用使用権者の権利に特別の影響を及ぼすものになる。
  • 専用使用権者が訴訟で使用料増額の効力を争っている場合には、裁判所の判断を待つことなく、専用使用権者が増額された使用料の支払に応じないことを理由に駐車場使用契約を解除し、その専用使用権を失わせることは、契約の解除を相当とするに足りる特段の事情がない限り許されない。

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題は区分所有法の規約の設定、変更及び廃止に関する問題ですが、有名な判例をもとに作られています。

選択肢1. 専用使用権者に特別の影響を及ぼすべきときは、専用使用権者の承諾を得ることなく規約を変更して、使用料を増額することはできない。

正しいです。

区分所有法第三十一条一項により、『規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。』とあります。

この『使用料を増額すること』が『専用使用権者に特別の影響を及ぼすべきとき』と判断されれば専用利用権者も承諾を得ることが必要になります。

選択肢2. 特別の影響を及ぼすべきときとは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合である。

正しいです。

区分所有法第三十一条一項の『規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。』の『特別な影響を及ぼすとき』とは、『規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が一部の区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうもの』という判例があります。

選択肢3. 使用料についての増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合であっても、使用料の増額に関する規約の変更は専用使用権者の権利に特別の影響を及ぼすものになる。

誤りです。

判例によると、『区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料を増額する規約の設定、変更等は、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者の権利に建物の区分所有等に関する法律三一条一項後段にいう「特別の影響」を及ぼすものではない』とあります。

選択肢4. 専用使用権者が訴訟で使用料増額の効力を争っている場合には、裁判所の判断を待つことなく、専用使用権者が増額された使用料の支払に応じないことを理由に駐車場使用契約を解除し、その専用使用権を失わせることは、契約の解除を相当とするに足りる特段の事情がない限り許されない。

正しいです。

判例によると、『マンション駐車場の専用使用権を有する区分所有者が、使用料を増額する集会決議の効力を争い、管理組合の主張する増額使用料の支払義務の不存在確認を求める訴訟を提起し、既に三回の口頭弁論期日が開かれていたにもかかわらず、管理組合が、専用使用権者に対して増額使用料を支払うように催告し、その支払に応じないことを理由として駐車場使用契約を解除する旨の意思表示をしたこと、管理組合の主張する使用料の増額が社会通念上相当なものであることが明白であるとはいい難いことなど判示の事情の下においては、管理組合による右駐車場使用契約の解除は効力を生じない。』とあり、契約の解除を相当とするに足りる特段の事情がない限り許されません。

まとめ

この問題は有名な判例をもとに作られています。

マンション管理士試験で過去にも出題されているので理解できるようにしましょう。

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02

1階のバルコニー側に各専有部分の専用駐車場があるマンションをイメージしましょう。

選択肢1. 専用使用権者に特別の影響を及ぼすべきときは、専用使用権者の承諾を得ることなく規約を変更して、使用料を増額することはできない。

正。規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければなりません(区分所有法31条)。

選択肢2. 特別の影響を及ぼすべきときとは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合である。

正。たとえば、専用駐車場使用料を増額するための規約の変更が必要で合理的なルールなのか、それによって1階区分所有者が受ける不利益を比較し、我慢の限界を超えるようなことであれば「特別の影響を及ぼすべきとき」と言えます(最判平10.10.30)。

選択肢3. 使用料についての増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合であっても、使用料の増額に関する規約の変更は専用使用権者の権利に特別の影響を及ぼすものになる。

誤。たとえば、専用駐車場の修繕に多額の費用を要しているので使用料を増額する必要性と合理性が認められ、かつ、増額幅が世間の相場感に沿っていると認められる場合"であれば"、使用料の増額に関する規約の変更は1階区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすもの"にはなりません"(最判平10.10.30)。

選択肢4. 専用使用権者が訴訟で使用料増額の効力を争っている場合には、裁判所の判断を待つことなく、専用使用権者が増額された使用料の支払に応じないことを理由に駐車場使用契約を解除し、その専用使用権を失わせることは、契約の解除を相当とするに足りる特段の事情がない限り許されない。

正。仮にこの状況で専用使用権を失わせることが許されてしまうと、1階区分所有者が使用料増額について訴訟を提起するのをためらってしまうでしょう(最判平10.10.30)。

まとめ

判例問題については必ずしも納得がいかない場合もありますが、本問については当事者になったつもりでイメージすれば十分に対応可能な問題と言えます。

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