中小企業診断士の過去問
平成28年度(2016年)
企業経営理論 問5

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 平成28年度(2016年) 問5 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

現代の企業にとって、外部組織との連携の活用は、事業の競争力を構築するための主要な経営課題となっている。ヘンリー・チェスブロウは「企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること」をオープン・イノベーションと定義した。技術や市場の変化の激しい経営環境では、経営資源の制約のある中小企業にとっても、新商品開発でのオープン・イノベーションの必要性は小さくない。①オープン・イノベーションにはメリットとデメリットがあり、オープン・イノベーションによる競争力の構築にあたっては、経営者の戦略的な判断が問われる。自動車産業での密接な企業間関係に見られるように、日本企業も企業外部の経営資源の活用に取り組んできた。近年では、②大学や公的研究所などの研究組織との共同開発に積極的な取り組みをする企業も増えている。

文中の下線部②にあるように、大学と共同で開発した成果を活用して、新たに起業する場合の問題に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • 大学教員をパートナーに起業した場合には、営利取得の可能性があるために、当該教員が企業家活動から個人的利益を追求する利益相反を生み出すことがある。
  • 大学教員をパートナーに起業した場合には、大学の知的資源や労力を流用する際に、営利目的のために大学院生や学部学生を利用し、学部教育や大学院教育を弱体化させることがある。
  • 大学教員をパートナーに起業した場合には、大学の発明に対して排他的な権利を保有したいと要望し、知識の流通を限定して潜在的に価値のある商業技術の普及を遅らせることがある。
  • 大学教員をパートナーに起業した場合には、利益相反の問題は大学やその事務職員の株式保有にかかわりなく、当該教員が研究を行う企業の株式を保有しているかどうかによって生じる。

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この過去問の解説 (2件)

01

1、2、3は正しいです。
4は、利益相反の問題に、大学やその事務職員の株式保有がかかわりが無いとは言い切れません。

よって、4.が正解です。

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02

正解は、「大学教員をパートナーに起業した場合には、利益相反の問題は大学やその事務職員の株式保有にかかわりなく、当該教員が研究を行う企業の株式を保有しているかどうかによって生じる。」です。

【基礎知識】

利益相反の問題です。

産官学連携など、大学の立場と企業での研究を行う立場といった複数の立場を持つときに、利益相反が起こります。

利益相反とは、立場によって利益が異なりますが、一方の立場に固執してしまい、もう一方の利益を逸失する状態のことを言います。主に大学との連携において、以下のような状況で発生します。

・教職員が企業から得る利益(実施料収入、報酬、株式等)と大学の教職員としての責任(教育、研究)の片方を重視することで、もう一方をないがしろにすること。

・大学職員が外部から金銭的報酬や外部との特別な関係で研究の客観性、公平性をゆがめること。

こういった問題が起きないように、大学等では利益相反マネジメントが行われています。

選択肢1. 大学教員をパートナーに起業した場合には、営利取得の可能性があるために、当該教員が企業家活動から個人的利益を追求する利益相反を生み出すことがある。

正しい。いくつかとらえることができます。大学教授の個人的利益のために企業への協力を行わないことや個人的利益のために大学での教育を怠るなどです。

選択肢2. 大学教員をパートナーに起業した場合には、大学の知的資源や労力を流用する際に、営利目的のために大学院生や学部学生を利用し、学部教育や大学院教育を弱体化させることがある。

正しい。企業利益等を追求するあまり、本来の大学としての研究等をないがしろにするケースです。

選択肢3. 大学教員をパートナーに起業した場合には、大学の発明に対して排他的な権利を保有したいと要望し、知識の流通を限定して潜在的に価値のある商業技術の普及を遅らせることがある。

正しい。個人の利益を優先し、社会的な発展をないがしろにするケースです。

選択肢4. 大学教員をパートナーに起業した場合には、利益相反の問題は大学やその事務職員の株式保有にかかわりなく、当該教員が研究を行う企業の株式を保有しているかどうかによって生じる。

誤り。大学等が株式を保有することで、企業の研究結果の評価がゆがむといった利益相反が起こりえます。

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