中小企業診断士の過去問
令和3年度(2021年)
経営法務 問4

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和3年度(2021年) 問4 (訂正依頼・報告はこちら)

破産手続及び民事再生手続に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 破産手続においては、否認権は認められているが、民事再生手続においては、否認権は一切認められていない。
  • 破産手続においては、別除権が認められているため、担保権者は破産手続によらずに担保権を行使することができるが、民事再生手続においては、別除権は認められていないため、担保権者は民事再生手続外で、担保権を行使することはできない。
  • 破産手続においては、法人・自然人を問わず、破産者の破産手続開始時におけるすべての財産が破産財団となり、そのすべての財産を金銭に換価して配当に充てることとなるが、民事再生手続においては、必ずしも、民事再生手続開始時におけるすべての財産を換価するものではない。
  • 破産手続は、申立てによる他、裁判所の職権によって開始する場合もある。

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この過去問の解説 (3件)

01

選択肢1は不適切です。否認権とは、破産手続開始前になされた破産者の行為またはこれと同視できる第三者の行為の効力を否定して破産財団の回復を図る形成権たる破産管財人の権能のことをいいます。破産手続きだけでなく民事再生手続きにおいても認められております。

選択肢2は不適切です。別除権とは、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について権利を行使して優先弁済を受けられる権利のことを言います。破産手続きだけでなく、民事再生手続きにおいても認められております。

選択肢3は不適切です。破産手続き開始時の財産は、債権者に配当される「破産財団」と、生活に必要な財産である「自由財産」に分別されます。そのため、すべての財産が配当に充当されるものではございません。また、民事再生手続では、再生計画が可決されれば再生計画に従って弁済が行われますので、すべての財産を換価するものではありません。

選択肢4は適切です。破産手続きは原則として、債権者または債務者の申し立てを受けて裁判所が破産手続き開始の決定を行います。一方で例外として、裁判所は職権により破産手続きを開始をすることが出来ます。

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02

破産と民事再生の大きな違いは手続き後に会社がどうなるかにあります。

その名の通り、破産は会社が消滅し、民事再生は会社が残ること(=再生すること)になります。破産においては、現行の財産を破産管財人が分配していくことになります。最終資産がなくなれば倒産ということになります。

一方、民事再生においては、債権者からの債権を猶予・免除してもらいながら、再生を目指すものです。最終的に破産して微々たる資産を債権者で分け合うよりも、再生してさらに収益を上げた上で、債務を弁済していく方が有利になるケースもあります。この問いでは、破産や民事再生に追い込まれている企業の財産に対する権利についての内容です。

1の否認権とは、限りある財産が勝手に分配されたりするのを防ぐために認められている権利であり、破産手続開始前になされた財産の減少についても、回復を図るために、破産管財人が否認して、財産を復させることができます。破産手続きだけでなく民事再生手続きにおいても認められています。こういった権利を与えないと平等に配分がなされない可能性があるためです。

よって1は誤りです。

2の別除権とは、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について権利を行使して優先弁済を受けられる権利のことを言います。1で否認権はありますが、優先的に財産を受けることができる当権利は特別に設定されているもので、破産や民事再生だからといって否定される権利ではありません。破産手続きだけでなく、民事再生手続きにおいても認められております。

よって2は誤りです。

3の破産手続き開始時の財産は、法人の場合、一切の財産が換価処分されます。しかし、個人(自然人)の場合は、債権者に配当される「破産財団」と、生活に必要な財産である「自由財産」に分別され、すべての財産が処分されるわけではありません。民事再生手続においても、個人(自然人)の場合は、すべての財産を換価するものではありません。

よって3は誤りです。

4の破産手続きですが、基本は債権者または債務者の申し立てを受けて裁判所が破産手続き開始の決定を行います。破産においても民事再生においてもうまくいくことが見込めない場合や、時には誤った方向に進んでしまうこともあるため、裁判所に申し立てによらずに破産手続きを開始させることができる権限を付与しています。

よって4は正解です。

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03

破産手続及び民事再生手続に関する問題です。

選択肢1. 破産手続においては、否認権は認められているが、民事再生手続においては、否認権は一切認められていない。

民事再生手続において、否認権は認められています

 

民事再生手続に否認権は認められているのかどうかを覚えていなかったとしても、「一切認められていない」という100%断定表現は、一般的に誤りの選択肢である可能性が高いです。

あくまでも可能性が高いというだけなので、他の選択肢と比較検討した上で正誤判断をして頂くことを推奨します。

選択肢2. 破産手続においては、別除権が認められているため、担保権者は破産手続によらずに担保権を行使することができるが、民事再生手続においては、別除権は認められていないため、担保権者は民事再生手続外で、担保権を行使することはできない。

民事再生手続において、別除権は認められています

選択肢3. 破産手続においては、法人・自然人を問わず、破産者の破産手続開始時におけるすべての財産が破産財団となり、そのすべての財産を金銭に換価して配当に充てることとなるが、民事再生手続においては、必ずしも、民事再生手続開始時におけるすべての財産を換価するものではない。

破産手続においては、すべての財産が破産財団となるわけではありません

 

破産財団に属さない、破産後も所有が認められる「自由財産」というものがあり、99万円以下の現金、破産後に取得した財産、洗濯機や冷蔵庫などの生活必需品は差し押さえられることはありません。

 

原則としては、「すべての財産が破産財団となり、そのすべての財産を金銭に換価して配当に充てることとな」りますが、自由財産までを差し押さえてしまうと破産者が生活に困窮してしまいます。破産したからといって、普通に生活する権利までをも奪われるわけではりません。

選択肢4. 破産手続は、申立てによる他、裁判所の職権によって開始する場合もある。

正解の選択肢となります。

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