宅地建物取引士の過去問
平成28年度(2016年)
権利関係 問4
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問題
宅建試験 平成28年度(2016年) 権利関係 問4 (訂正依頼・報告はこちら)
Aは、A所有の甲土地にBから借り入れた3,000万円の担保として抵当権を設定した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Aが甲土地に抵当権を設定した当時、甲土地上にA所有の建物があり、当該建物をAがCに売却した後、Bの抵当権が実行されてDが甲土地を競落した場合、DはCに対して、甲土地の明渡しを求めることはできない。
- 甲土地上の建物が火災によって焼失してしまったが、当該建物に火災保険が付されていた場合、Bは、甲土地の抵当権に基づき、この火災保険契約に基づく損害保険金を請求することができる。
- AがEから500万円を借り入れ、これを担保するために甲土地にEを抵当権者とする第2順位の抵当権を設定した場合、BとEが抵当権の順位を変更することに合意すれば、Aの同意がなくても、甲土地の抵当権の順位を変更することができる。
- Bの抵当権設定後、Aが第三者であるFに甲土地を売却した場合、FはBに対して、民法第383条所定の書面を送付して抵当権の消滅を請求することができる。
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この過去問の解説 (4件)
01
・解答のポイント
本問は抵当権に関する知識を、横断的に問う問題です。
特に選択肢1の「法定地上権の成立要件」は、判例を知っているかどうかが正誤の分かれ目になる出題も多いです。
法定地上権の成立要件は、条文と主要な判例を暗記してしまいましょう!
・解説
1.法定地上権の成立要件は以下の四つです。
ア.抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること
イ.抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一に属すること
ウ.土地・建物の一方又は双方に抵当権が設定されたこと
エ.抵当権の実行によって、土地と建物の所有者が異なることになったこと
以上のアからエの要件を、本肢に当てはめると、
A所有の甲土地上にA所有の建物があり、Aが抵当権の設定を受けています。
その後、建物の所有者はC、土地の所有者はDとなり、上記のアからエの要件を全て満たすため、Cのための法定地上権は成立します。
よって、Cは建物の利用権をDに主張できるため、本肢は正しい肢となります。
2.本肢は物上代位に関する問題です。
物上代位とは、抵当権者が、目的物の売却・滅失・賃貸などによって債務者が受ける金銭や保険金などに対しても、抵当権の効力を及ぼすことができる制度です(民法372条、304条)。
本肢は、「建物」が火災によって滅失したことによる保険金に、物上代位権を及ぼすことができるかという問題ですが、Bが抵当権を行使することができるのは「土地」です。
日本の法律では、土地と建物は別個の不動産とされているため、甲土地上の「建物」にかけられた保険金に物上代位権を行使できません。
よって、本肢が誤りとなります。
3.抵当権の順位は、登記の前後によります(民法373条)。
抵当権の順位変更の要件として、
①当事者間における順位変更の合意(民法374条1項)
②利害関係人の承諾
③順位変更の登記
の全てを満たす必要があります。
①については、順位変更によって配当額が変わったりする抵当権者(B・E)が合意の当事者となります。なぜなら、優先弁済を受ける範囲が異なってくるからです。本肢ではB・Eが合意しています。
②については、利害関係人とは、順位変更される抵当権を目的として何らかの権利などを有する者のうちで、不利益を受ける者をいいます。
本肢では、転抵当権者などの利害関係人はいませんので、利害関係人の承諾は考慮しません。
③については、抵当権の順位の変更は、その登記をしなければ効力を生じません(民法374条2項)。
本肢では順位変更の登記について触れていませんので、疑義のある選択肢ですが、2.の肢が明らかに誤りなので、この肢は正解としておきます。
4.抵当権消滅請求に関する条文は、民法379条から386条に規定があります。
Fは、第三取得者として、民法383条各号に規定された事項を記載した書面を、登記をした各債権者に送付しなければなりません。
よって、この肢は正しい肢となります。
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02
1:甲土地に抵当権が設定された当時、甲土地と、その土地上の建物の所有者が同じ場合には、当該建物をAがCに売却した後、Bの抵当権が実行され、Dが競売した場合でも、「法定地上権」が成立するため、DはCに甲土地の受け渡しを求めることができません。
「法定地上権」というのは、民法338条に規定されており、「土地及びその上に存ずる建物が同一の所有者に属している場合、その土地または建物に抵当権が設定され、実行により所有者が異なる場合にも建物に成立する地上権」のことを指します。
2:甲土地に設定されている抵当権は、甲土地上の建物には及びません。
火災保険の損害保険金が請求できるのは、建物に抵当権が設定されている場合になります。
よって、この肢が正解となります。
3:抵当権の順位は、抵当権者の合意によって変更することが可能です。
債務者、抵当権設定者の同意は不要です。
4:抵当不動産の第三者取得者は、登記した各債務者に、「民法383条所定の書面」を送付することで抵当権消滅請求をすることができます。
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03
1:民法第388条より、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、
その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、
その建物について、地上権が設定されたものとみなす。
この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定めるという法定地上権があり、
設問のような土地に抵当権を設定したのち、建物を別の第三者への譲渡をして土地が競売されたとしても、
法定地上権は存在するため、Cには法定地上権があります。
その結果DはCへ土地の明渡しを求めることはできないことになります。
2:民法の304条第一項に、物上代位について述べてあり、
そこでは先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。
ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならないとあります。
今回のケースでBは、甲の土地には抵当権があるのみであり、建物には権利はありません。
甲土地上の建物が焼失した場合、損害保険金が発生した場合でも保険金を請求することはできません。
3:民法の第374条第一項には、
抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。
ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならないとあり、抵当権の順位の変更について述べられています。
債務者や抵当権を設定する者というのは、利害関係者には当たらないため、
今回のケースではAの合意がない場合でも、抵当権の順位を変更することができます。
4:民法第379条では抵当権消滅請求についてあり、
そこでは抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができるとあります。
今回の設問ではBの抵当権設定後にAが第三者であるFに甲土地を売却した場合でFはBに対して、請求することができます。
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04
①抵当権設定時に、土地と土地上の建物の所有者が同じであり、その後建物が別の人の手に渡った場合、法定地上権が成立しますので、問題文どおり「土地の明け渡しを求めることはできません」
②×で正解肢です。
抵当権設定をしているのは「甲土地」です。火災保険を付帯した建物が火事により消滅した、とありますが、あくまでも抵当権設定は「甲土地のみ」ですので、損害保険金を請求することはできません。
もし建物に抵当権設定されていれば、物上代位となり保険金請求が可能です。
③問題文どおりで、BとEが抵当権の順位変更に合意すれば、Aの同意がなくても変更可能です。
④この場合、Fは抵当権の第三取得者となりますので、抵当権減殺請求が可能です。
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