宅地建物取引士の過去問
令和元年度(2019年)
権利関係 問8
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問題
宅建試験 令和元年度(2019年) 権利関係 問8 (訂正依頼・報告はこちら)
Aを注文者、Bを請負人とする請負契約(以下「本件契約」という。)が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 本件契約の目的物たる建物に重大な瑕疵(かし)があるためこれを建て替えざるを得ない場合には、AはBに対して当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
- 本件契約が、事務所の用に供するコンクリート造の建物の建築を目的とする場合、Bの瑕疵担保責任の存続期間を20年と定めることができる。
- 本件契約の目的が建物の増築である場合、Aの失火により当該建物が焼失し増築できなくなったときは、Bは本件契約に基づく未履行部分の仕事完成債務を免れる。
- Bが仕事を完成しない間は、AはいつでもBに対して損害を賠償して本件契約を解除することができる。
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この過去問の解説 (3件)
01
各選択肢については以下のとおりです。
1→正しい選択肢です。
本件契約の目的物である建物に重大な瑕疵があり、建て替えざるを得ない場合には、注文者Aは請負人Bに対し、当該建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することが可能です。
2→誤った選択肢です。
建築物・工作物のの請負人は工作物・地盤の瑕疵について、引渡し後から瑕疵担保責任を負います。ただし構造によって存続期間が異なります。
建物などの工作物:5年間
石造・土造・れんが造・コンクリート造・金属造その他これらに類する構造:10年間
この期間内で存続期間を伸ばすことができますが、超えることはできません。そのため本文中の「存続期間を20年と定めることができる」が誤りです。10年が最長です。
3→正しい選択肢です。
注文者の失火により請負人は、建物を増築することができません。つまり、Aの責めに帰すべき事由によってBの仕事完成が不可能になっています。そのためBは残工事を行う義務から免れます。
※請負人が注文者に対する報酬請求権は消えていないため、請負人は報酬全額を請求することができます。
4→正しい選択肢です。
請負人が仕事を完成しない間であれば、注文者はいつでも損害賠償を行ったうえで契約解除をすることができます。
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02
以下、選択肢の解説です。
1.
選択肢の文章の通りです。この内容のとおりの判例があります。
2.
ここは2020年4月1日から適用される民法改正があったところです。
改正前は、コンクリート造の建物(堅固建物)については、請負人は目的物の引き渡し後、10年間の瑕疵担保責任を負うとなっています。
よって、「請負人Bの担保責任の存続期間を20年と定めることができる」という記述は誤りです。
そして、改正後の民法では、この規定は削除され、通常の消滅時効を用いることになりました。
通常の消滅時効の期間とは、
「権利を行使することができる時」から10年、または、「権利を行使することができることを知った時」から5年、です。
3.
Aの失火(つまり責任はAにある)により、Bは増築工事を完成させることが出来ない状態です。Bに問題は全くありません。
この場合は、当然、Bは本件契約に基づく未履行部分の仕事完成債務を免れます。
正しい文章です。
4.
選択肢の文章の通りです。これは民法641条に定められています。
民法641条
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
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03
以下、解説になります。
1. 正しいです。
本選択肢の通りです。
建物の建替えに要する費用も損害賠償の対象になる、という判例があります。
2. 誤りです。
コンクリート造の建物の建築を目的とする場合、請負人は「引き渡し後に10年間」の瑕疵担保責任を負います。
よって「20年と定めることができる」とする本選択肢は誤りです。
補足ですが、2020年に民法改正があり、それに合わせた解説も書いておきます。
改正前の民法では、コンクリート造の建物についての瑕疵担保責任は、先に述べたとおりでした。
改正後はこの規定がなくなり、通常の消滅時効が用いられることになりました。
通常の消滅時効なので、「権利を行使できる時から10年」、あるいは「権利を行使できることができると知った時から5年」になります。
ここでも本選択肢の「Bの瑕疵担保責任の存続期間を20年と定めることができる」は、誤りです。
3. 正しいです。
失火の原因は、注文主Aの不注意が原因です。
請負人Bに責任はないので、Bは契約を解除して未履行部分の仕事完成債務を免れることができます。
4. 正しいです。
本選択肢の通りです。
「請負人が仕事を完成しない間」であれば」、注文主は「いつでも」「損害を賠償」して、「契約解除」することができます。
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