宅地建物取引士の過去問
令和2年度10月実施分(2020年)
権利関係 問4

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問題

宅建試験 令和2年度10月実施分(2020年) 権利関係 問4 (訂正依頼・報告はこちら)

建物の賃貸借契約が期間満了により終了した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、賃貸借契約は、令和2年7月1日付けで締結され、原状回復義務について特段の合意はないものとする。
  • 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、通常の使用及び収益によって生じた損耗も含めてその損傷を原状に復する義務を負う。
  • 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、賃借人の帰責事由の有無にかかわらず、その損傷を原状に復する義務を負う。
  • 賃借人から敷金の返還請求を受けた賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、これを拒むことができる。
  • 賃借人は、未払賃料債務がある場合、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てるよう請求することができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は3です。
以下、解説になります。

1. 誤りです。
通常の使用及び収益によって生じた損耗については、その損傷を原状に復する義務を負いません。

2. 誤りです。
賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、賃借人の「帰責事由があれば」その損傷を原状に復する義務を負いますが、「帰責事由がなければ」原状回復義務は負いません。

3. 正しいです。
敷金の返還については、賃貸借契約が終了しかつ賃貸物の返還を受けたときにする、と改正民法622条の2第1項に定められています。
よって本選択肢は正しいです。

4. 誤りです。
改正民法622条の2第2項によれば、賃貸人は敷金を未払賃料債務の弁済に充てることができますが、これは賃借人の方から請求することはできません。

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02

正解は3です。

「建物の賃貸借契約が期間満了により終了した場合」についての問題です。

1  誤り

人がアパートに入って暮らすと、当然傷や汚れは生じますね。

普通に生活してついた損傷については、原状に復する義務を負いません。

よってこの選択肢は誤りです。

2 誤り

1でも解説したように、普通に暮らしてついた損傷については、原状に復する義務を負いません。

賃借人が損傷を現状に戻す義務があるかどうかは、「帰責事由があるか」にかかっています。

今回の選択肢では「賃借人の帰責事由の有無にかかわらず、その損傷を原状に復する義務を負う」となっていますが、帰責事由がない場合は戻す義務がないため誤りです。

3  正しい

「賃借人から敷金の返還請求を受けた賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、これを拒むことができる」をかみ砕くと、

「敷金を返してと言われた大家さんは、アパートを返してもらってからねと言える」という事です。

敷金の返還は、次の条件を両方満たした時に行われます。

・賃貸契約が終了した

・賃貸物の返還を受けた

よって賃貸物の返還を受けていない賃借人は敷金の返還を拒むことができ、この選択肢は正解です。

4 誤り

「賃借人は、未払賃料債務がある場合、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てるよう請求することができる」をかみ砕くと、

「家賃の未払いがあるとき、大家さんに敷金を家賃に回してねと言える」と言う事です。

賃貸人は敷金を未払賃借料の弁済に充てることができます。

が、賃借人からこれを請求することができないのでこの選択肢は誤りです。

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03

正解は3です。

「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」は、賃貸人は敷金の残額を返還しなければならないとしているため(民法622条の2第1項)、賃貸物の返還を受けるまでは敷金の返還を拒めるとした選択肢3は正しいです。

敷金とは、賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する債務を担保する金銭のことですので、まず賃貸借契約が終了し、賃借人が賃貸人に目的物(部屋など)を返還した後、賃貸人が返ってきた目的物に損傷がないか、家賃の不払いがないかなどを確認して賃借人の賃貸人に対する債務の有無やその金額を確定し、清算が済んだ段階ではじめて返還すべき敷金の額が決まります。

このようなプロセスを知っていれば、条文を知らずとも解けるかと思います。

1:「通常の使用及び収益によって生じた・・・損耗」(民法621条かっこ書き)について、賃借人は原状回復義務を負わないので、この選択肢は誤りです。

賃貸借契約は、賃貸人が賃借人に目的物を使用・収益させることを内容とする契約ですから、賃借人が目的物を普通に使っていたのに壊れてしまったのであれば、賃貸人が責任を持って修繕するのが原則です(民法606条1項本文)。

そう考えれば、このような場合にまで賃借人に原状回復義務を負わせるのはおかしいといえます。

2:「損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、」原状回復義務は生じません(621条1項ただし書き)ので、誤りです。

賃借人が原状回復義務を負うのは、賃借人が通常ならあり得ないような使い方をして、目的物を損傷させた場合ですので、賃借人が通常の使用・収益をしていたのに損傷した場合だけでなく、賃借人の責めに帰することができない事由で損傷した場合にも、賃借人が原状回復義務を負う必要はありません。

4:「賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない」のでの、この選択肢は誤りです(622条の2第2項)。

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