宅地建物取引士の過去問
令和2年度10月実施分(2020年)
権利関係 問5
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問題
宅建試験 令和2年度10月実施分(2020年) 権利関係 問5 (訂正依頼・報告はこちら)
AとBとの間で令和2年7月1日に締結された委任契約において、委任者Aが受任者Bに対して報酬を支払うこととされていた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。
- Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。
- Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。
- Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。
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この過去問の解説 (3件)
01
以下、解説になります。
1. 正しいです。
本選択肢の通りです。
債務を免れたことによって得た利益がある場合は、それを委任者に償還しなければなりません。
2. 誤りです。
委託の受任者は、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負いますが、これは自己の財産に対するのと同一の注意よりもより重い義務です。
同一ではないので、本選択肢は誤りです。
3. 誤りです。
受任者の責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合でも、受任者は委任者に対して「既にした履行の割合に応じて」報酬を請求することができます。
4. 誤りです。
急迫の事情がある場合、受任者の相続人や法定代理人は委任事務が終了するまで必要な処分をしなければなりませんが、急迫の事情がない場合は当てはまりません。
よって本選択肢は誤りです。
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02
正解は1です。
委任ではなく契約総則の規定なので、戸惑った方もいると思いますが、「債権者(ここではA)の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付(ここでは報酬)の履行を拒むことができない」が、「債務者(ここではB)は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、」債権者に償還しなくてはならないという規定(民法536条2項、いわゆる危険負担)があります。
ちなみにAの責めに帰すべき事由がないのに委任が終了した場合は、委任の規定の民法648条3項一号が適用され、Bは「既にした履行の割合に応じて請求する」ことができます。
2:Bは「善良な管理者の注意をもって」、委任事務を処理しなければなりません(民法644条)ので、誤りです。
字面で何となくわかると思いますが、自己の財産に対するのと同一の注意と善良なる管理者の注意(善管注意)の違いは財産を管理する際の注意の程度です。
自己の財産に対するのと同一の注意とは文字通り、自分の物と同じように(雑に)扱うくらいの意味合いで、善管注意は他人から預かっている物として(大事に)扱うくらいの意味合いです。
委任契約の代表例といえば、弁護士に依頼する場面などがそうですが、弁護士が依頼者から預かったお金を自分のお金と同じように好き勝手に使ったら問題だ、と気づけば、この選択肢が不自然なことをいっていることが分かるかと思います。
3:「委任が履行の中途で終了したとき」は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できるので(民法648条3項二号)、誤りです。
これは選択肢1と逆の話をしているので、セットで理解しておきましょう。
4:受任者が死亡したら委任契約は終了するので(653条一号)、相続人が受任者の地位を承継することはありえず、よって誤りです。
3と同じように例をあげるならば、手術の執刀医が手術前日に急に倒れて亡くなってしまったので、まだ幼稚園児である執刀医の息子を病院に連れてきて、代わりに執刀してもらうというようなケースが考えられますが、明らかにこれは不自然です(民法656条より、医療行為等にも委任の規定が準用される)。
ただ、一つ気を付けて欲しいのは、当事者の死亡等により「委任が終了した場合において、窮迫の事情があるときは、」受任者の相続人等は、委任者が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしないといけないとされている点です(654条)。
もっとも、これは委任者が事務を処理することができるに至るまで~という文言からわかる通り、委任事務そのものの処理というよりは専ら引継ぎのための後処理がメインです。
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03
正解は1です。
今回のキーワードは「委任契約」です。
委任とは「仕事などを、他人にまかせること。委託すること。」です。
つまり委任契約とは他人に任せて行う契約のことです。
Aが委任者(頼む側)でBが受任者(頼まれた側)です。
1 正しい
委任者Aの都合で委任が途中で終了した場合、Bがもらえる報酬はどうなるのか?と言う問題です。委任者の都合で債務が履行できない場合、受任者は報酬全額の支払いを請求できます。その代わり、債務を免れたことによって得た利益があれば、それを委任者に返還します。
2 誤り
選択肢では受任者BはAの財産を自分の財産と同様に注意しなければならない、としています。しかし、受任者が負う委任事務を処理する義務、「善管注意義務」は自己の財産と同一の注意義務より重いとされています。そのため、この選択肢は誤りです。
3 誤り
受任者の責任で委任事務が途中で履行できなくなった時、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求することが可能です。そのため、Bは既に完了した分については報酬を請求できるため、請求できないとしているこの選択肢は誤りです。
4 誤り
受任者Bが死亡した場合、その義務はどうなるのか?と言う問題です。
受任者が死亡した場合、委任契約はそこで終了します。
ただし、委任終了時に急迫の事情がある場合は受任者の相続人や法定代理人が、委任事務が終了するまで必要な処分を行う必要があります。
選択肢は「急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない」とあるため誤りです。
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