宅地建物取引士の過去問
令和2年度12月実施分(2020年)
権利関係 問1

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問題

宅建試験 令和2年度12月実施分(2020年) 権利関係 問1 (訂正依頼・報告はこちら)

不法行為(令和2年4月1日以降に行われたもの)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  • 建物の建築に携わる設計者や施工者は、建物としての基本的な安全性が欠ける建物を設計し又は建築した場合、設計契約や建築請負契約の当事者に対しても、また、契約関係にない当該建物の居住者に対しても損害賠償責任を負うことがある。
  • 被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を与え、第三者に対してその損害を賠償した場合には、被用者は、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができる。
  • 責任能力がない認知症愚者が線路内に立ち入り、列車に衝突して旅客鉄道事業者に損害を与えた場合、当該責任無能力者と同居する配偶者は、法定の監督義務者として損害賠償責任を負う。
  • 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は3です。

JR東海事件(最高裁平成28年3月1日第三小法廷判決)の判例によれば、夫婦の同居義務(民法752条)は監督義務の根拠とはいえず、同居する配偶者だからといって法定の監督義務者(民法714条1項)にあたるわけではないとしています。

もっとも、法定の監督義務者に当たらなくとも、監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情のある場合は、民法714条が類推適用されるとしています(本件ではそこまでの事情はないとして、責任を認めませんでした)。

他の選択肢については以下の通りです。

1:債務不履行による損害賠償責任(民法415条1項)は主に契約関係にある者間で認められるのに対し、不法行為による損害賠償責任は契約関係にない者間でも認められます(例:交通事故)。

2:被用者から使用者への求償も認められます。

使用者責任について定めた715条には、使用者から被用者への求償についてしか定められていないため誤解しそうになりますが、設問の事例の場合、使用者(被用者を雇っている会社など)と被害者との間には使用者責任が、被用者(従業員など)と被害者との間には一般不法行為責任(709条)が生じ、各損害賠償債務は連帯債務の関係になるため、連帯債務の求償の規定(民法442条1項)が適用されます。

4:民法724条の2と724条を読み比べてみましょう。

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02

正解は3です。

監督義務者の責任」とは責任無能力者(民事上で責任能力のない人)が第三者に損害を生じさせた場合、法定監督義務者にその損害の賠償義務が生じるというものです(民法714条)。

しかし法廷監督義務者にこの賠償責任が生じない場合があります。

それは

・監督義務者がその監督義務を怠らなかった場合

・監督義務を怠らなくても損害が生じたと思われる場合

です。

努力したけど防げなかった、努力をしていたとしても防ぎきれなかったと思われる場合は責任を負わなくてもよい」、という事ですね。

監督義務者は未成年の場合は親権者や未成年後見人など、精神障害者の場合は保護者となります。

この責任は、監督代行者も負う必要があります。

2007年、認知症の男性が線路に降りる事故が起きました。

この事故の賠償を鉄道会社が親族に求めましたが、最高裁はこれを棄却しています。

つまり親族に損害賠償は生じないとされたのです。

と言うわけで、正しくは

「責任能力がない認知症愚者が線路内に立ち入って損害を与えた場合、当該責任無能力者と同居する配偶者は、法定の監督義務者として損害賠償責任を『負わない』」

となります。

1 正しい

不法行為による損害賠償は、契約関係にない第三者にも認められます。

民法第709条によると、故意または過失によって、他人の権利や法律上保護される利益を違法に侵害した場合、その損害を賠償する責任を負うとされています。

この責任を「不法行為責任」と言います。

問題文の場合、責任を持つのは建物の建築に携わる設計者や施工者、第三者とは、契約関係にない当該建物の居住者となります。

2 正しい

使用者責任とは被用者(ある事業のために使用されている者)がある事業を行っているときに第三者に損害を与えた場合、使用者(ある事業のために他人を使用する者)がそれを賠償しなければならないとするものです。

これは使用者の不法行為責任となります。

不法行為責任とはその名の通り、故意または過失によって他人の権利や利益を違法に侵害した場合、その損害を賠償する責任を負うというものです。

なお、使用者に代わって事業を監督する者がいる場合は、監督者が使用者として責任を負う必要があります。(民法第715条)。

4正しい

時効とはある一定期間がたつと権利が取得できる、または権利が失われることです。

損害賠償請求はいるでも好きな時に出来るわけではありません。

損害賠償請求は以下のタイミングで請求権が消滅してしまいます。

・被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年

 生命・身体の侵害による損害賠償請求権は5年

・不法行為の時から20年

問題文で聞かれているのは「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権」です。

これは被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅してしまうため正解となります。

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03

3.×

責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。 ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。(714条)

判例による問題です。

【最判H28.3.1】

精神障害者と同居する配偶者であるからといって、その者が民法714条1項にいう「責任能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たらない。

としております。

1.〇

建物の建築に携わる設計者や、施工者、工事管理者は建物の建築に当たり、契約関係にない居住者、建物利用者、通行人、隣人等に対しても当該建物において建物としての基本的な安全性が欠けることが無いよう配慮すべき注意義務を負います。(最判H19.7.6)

そもそも契約関係にある建物の建築について基本的な安全性が欠ける建物を設計、建築した場合に契約関係にない居住者に対して責任を負うのは当然です。

2.〇

他人に使用されるもの(被用者)が事業の執行についてについて第3者に損害を与えた場合、使用者はその損害を賠償する責任を負う。(715条)

この場合被用者、使用者ともに被害者に対して責任を負うことになりますので被用者は一定額の求償を使用者に請求することができます。

※被害者からは被用者、使用者の両方に対して損害賠償請求できることも

併せて覚えておきましょう。

4.〇

不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が、損害及び加害者を知った時から3年(人の生命・身体を害する場合は5年)不法行為のときから20年で消滅します。(724条)ただしその不法行為が人の生命または身体を害する不法行為による場合は「知った時から5年」に延長されます。(724条の2)

ここでは以下のポイントをしっかり分けて覚えるようにすることです。

A「債務不履行」による損害賠償請求権

権利を行使できることを知った時から 5年

権利を行使できる時から 10年

B「不法行為」による損害賠償請求権

権利を行使できることを知った時から 3年

権利を行使できる時から 20年

A,Bの特則 生命・身体の侵害による損害賠償請求権

知った時から 5年

権利を行使できる時から 20年

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