正解は、「X2は、遺留分減殺請求により甲株式につき権利を取得した場合、Yの同意を得たうえで、権利行使者をX2と指定してA社に通知すれば、単独で株主権を行使することができる。」です。
【基礎知識】
相続の知識が問われています。
相続の基本です。配偶者は必ず相続対象となります。他の相続の対象は第3順位まであり、優先順位の高い人がいない場合のみ、次の順位に相続権が移ります。よって、相続は配偶者+第〇順位という形になります。
・相続人の種類・順位は?
配偶者 → 常に相続人
内縁の妻・夫 → 相続人にならない
子供(嫡出子) → 第1順位
子供(非嫡出子) → 認知されていれば第1順位
直系尊属 → 第2順位
兄弟姉妹 → 第3順位
※上位の順位がいれば、その下位順位には相続はありません。
相続の割合も決まっており、
<配偶者+第1順位の場合>
配偶者:1/2
第1順位の全員分:1/2
<配偶者+第2順位の場合>
配偶者:2/3
第2順位全員分:1/3
<配偶者+第3順位の場合>
配偶者:3/4
第3順位全員分:1/4
となります。
・遺言があった場合
遺言があると、原則その通りに相続されますが、相続人には最低限の相続財産が保証されており、これを遺留分と言います。
遺言により遺留分に満たない場合、遺留分を請求することができます(遺留分減殺請求権)。遺留分減殺請求は旧民法の権利で、現在は、遺留分侵害額請求に変更されています。
遺留分減殺請求では、相続したものに対する請求権であったため、土地など分けにくいものもあり、共有関係になるケースがありました。
遺留分侵害額請求では、相応の金銭を請求する権利となり、共有状態を回避することができます。
選択肢1. X2は、Yに対して遺留分減殺請求権を行使すれば直ちに、甲株式のうち、自らの遺留分を保全するのに必要な限度の株式数を単独で取得することができる。
誤り。遺留分減殺請求権では株式数で割ることができず、相続した2/3の株式を共有することになります。遺留分侵害額請求では、金銭で支払うことが可能になりました。
選択肢2. X2は、遺留分減殺請求により甲株式につき権利を取得した場合、Yの同意を得たうえで、権利行使者をX2と指定してA社に通知すれば、単独で株主権を行使することができる。
正しい。まだきっちりと株式の承継ができていませんので、共有状態となります。共有状態の場合は、その過半数の合意があれば、決することができます。Yが合意し、A社に通知すれば、会社法上、単独の株主権の行使が可能です。譲渡には取締役会の承認が必要な譲渡制限会社ですが、相続については承認不要となります。
選択肢3. Yが甲株式についての権利を取得するためには、その取得についてA社に承認の請求を行い、A社取締役会による承認の決定を得ることが必要である。
誤り。相続については取締役会の承認は不要となります。
選択肢4. Yに対して、X1は相続財産の3分の1、X2は相続財産の2分の1の割合で、各自遺留分減殺請求権を行使することができる。
誤り。x1は兄弟姉妹で第3順位です。第1順位の子がいるため、相続対象外です。