中小企業診断士の過去問
平成28年度(2016年)
企業経営理論 問11

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 平成28年度(2016年) 問11 (訂正依頼・報告はこちら)

技術志向の企業では、企業価値に占める無形資産の割合が有形資産のそれを大きく上回る企業が多く見られ、知的資産の戦略的経営が注目されている。特に特許は守るだけでなく、企業価値を高めるべくそれを他社と相互に活用したりすることも重要になっている。特許の戦略的運用に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 特許をオープンライセンスすることは、ライセンスを許諾することによって自社技術基盤の上に他社製品をのせて、他社の代替技術開発のモチベーションを下げる効果を期待できるが、ロイヤリティ収入は期待できなくなる。
  • プロパテント戦略は特許侵害に対応すべく、訴訟に訴えて差止請求権や損害賠償請求権などの法的手段で特許を守る戦略であり、知財戦略の基本をなすものである。
  • 包括クロスライセンス契約では、特定分野についてリスト化された特許の範囲で特許の相互利用が許されるが、その後成立した特定分野の特許についてはリストに加えることは法的に許されていない。
  • 包括クロスライセンス契約を結ぶのは、主として企業間で特許を相互に幅広く利用するためであり、契約提携企業間での金銭の授受を伴うこともある。

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この過去問の解説 (2件)

01

1は、特許を公開することそのものにおいて、ロイヤリティ収入が無くなることはありません。
2は、プロパテント戦略は、特許侵害への対応を意図した戦略とは言えません。
3は、契約後の特許をリストに加えることに、法的な制約はありません。
4は、正しいです。

よって、4.が正解です。

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02

正解は、「包括クロスライセンス契約を結ぶのは、主として企業間で特許を相互に幅広く利用するためであり、契約提携企業間での金銭の授受を伴うこともある」です。

【基礎知識】

近年、知的財産をどのように活用するかは企業の重要な戦略になります。以下のステップで検討を行います。

まず自社の保有する知財等を市場環境、内部環境などから評価し、オープンとするのか、クローズとするのかを決めます。

自社の知財がコア技術でないことなどを前提にオープン戦略を選択すると、他社の付随する開発を促進して市場自体を広げる可能性があります。その際に自社の技術を標準化したりすることで、市場をリードすることができます。

また、特許等の使用許諾を行い、それによる収入を得る戦略もあります。

自社の強みとなったり、コアな技術についてはクローズ戦略をとります。

クローズ戦略では特許出願を行うと技術を公開する必要があるため、それすらも行わないケースや、特許をとることで制度的に技術を守る方法があります。

技術開発の促進や新規産業の創出の観点から、国を挙げてプロパテント戦略として、特許を法的、制度的に保護していく動きもあります。

クローズ戦略において、一部の企業とクロスライセンス契約を結び、相互の技術を使いあえるようにするケースもあります。部分的なライセンスに限定せず、包括的に利用を相互に認めたものを包括的クロスライセンス契約といいます。

選択肢1. 特許をオープンライセンスすることは、ライセンスを許諾することによって自社技術基盤の上に他社製品をのせて、他社の代替技術開発のモチベーションを下げる効果を期待できるが、ロイヤリティ収入は期待できなくなる。

誤り。

他社は自社技術を前提とした次の技術開発に進めるため、モチベーション向上が期待できます。

また自社は技術開発が進み、自社の基盤技術が使われることで、ロイヤリティ収入等を期待できます。

選択肢2. プロパテント戦略は特許侵害に対応すべく、訴訟に訴えて差止請求権や損害賠償請求権などの法的手段で特許を守る戦略であり、知財戦略の基本をなすものである。

誤り。プロパテント戦略は法的なバックアップにとどまらず、特許等を守ろうとする動きです。

選択肢3. 包括クロスライセンス契約では、特定分野についてリスト化された特許の範囲で特許の相互利用が許されるが、その後成立した特定分野の特許についてはリストに加えることは法的に許されていない。

誤り。企業間の取り決めによるもので、法的な制約はありません。

選択肢4. 包括クロスライセンス契約を結ぶのは、主として企業間で特許を相互に幅広く利用するためであり、契約提携企業間での金銭の授受を伴うこともある。

正しい。こちらも企業間の取り決めによるものです。金銭授受が伴うものもあります。

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