中小企業診断士の過去問
平成28年度(2016年)
企業経営理論 問12

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 平成28年度(2016年) 問12 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

ものづくりに強みをもつといわれているわが国の製造業であるが、近年大きな変化が見られるようになってきた。①エレクトロニクスメーカー各社の苦境が伝えられており、エレクトロニクスメーカー各社では、事業分野の再構築を図る動きが活発である。
自動車産業では、国内市場が縮小するなか、グローバルな競争に対応すべく生産拠点の海外移転や現地での研究開発の展開など大きな変化が見られる。また、②自動車のモジュール生産が本格化してきており、系列による垂直統合型の生産に変化が起こっている。さらに、環境対応技術や自動運転技術の開発が進むにつれて、自動車産業のサプライヤーにも技術の変化への対応が求められるようになっている。

文中の下線部①に記述されているエレクトロニクスメーカーの苦境の原因は多様である。そのような原因と考えられるエレクトロニクス産業の状況に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
  • エレクトロニクス産業では、あらゆる分野の製品を生産し販売するという総花的な自前主義の戦略を見直して、事業分野の選択と集中を図り、電子部品サプライヤーとの垂直的統合を強化したため、事業分野の幅が狭くなり、グローバルな競争力が低下してきている。
  • エレクトロニクス産業では、安価な電子部品をグローバルに調達して、それらを組み合わせた製品が多くなるにつれて、部品から製品までの一貫生産がコスト競争のうえから不利になっている。
  • エレクトロニクス産業では、競争優位の構築を目指しながらも、互いに同質的な戦略を展開しながら、技術進歩や製品開発を促進してきたが、電子技術を一方向に収斂させる傾向が強まり、多機能を搭載した類似製品の競争に陥りがちになっている。
  • エレクトロニクス産業では、先発企業が自社技術を武器に市場シェアを獲得していても、後発企業が安価な部材をグローバルに調達し、技術的にほぼ同等な製品で価格訴求力を武器に先発企業のシェアを奪うことが多くなっている。

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この過去問の解説 (2件)

01

2、3、4は正しいです。
1は、総花的な戦略を見直し、垂直的統合を強化することは、競争力の向上につながります。

よって、1.が不適切な選択肢となりますので、
1.が正解です。

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02

正解は「エレクトロニクス産業では、あらゆる分野の製品を生産し販売するという総花的な自前主義の戦略を見直して、事業分野の選択と集中を図り、電子部品サプライヤーとの垂直的統合を強化したため、事業分野の幅が狭くなり、グローバルな競争力が低下してきている。」です。

【基礎知識】

エレクトロニクス産業とは、冷蔵庫、エアコンなどの白物家電やスマホなどの通信機器、電子部品など幅広く電子を扱う危機を製造・販売する産業を言います。

2000年ごろまでは、日本経済を支えてきた日本のエレクトロニクス産業ですが、2000年を超えたころから凋落が始まります。

凋落には以下の要因があったと言われています。

  ・製造のモジュール化・デジタル化

  ・製品のコモディティ化

モジュール化は、製品全体を一社が部品からすべて作り上げる仕組みから、各部品に専門化した企業より部品を購入し、最終別の企業が組み上げるという製造の方法へ転換を促進しました。

アナログでは製造手法そのものに難しさもあったのですが、デジタル化により、製造自体に熟練の技などが不要になったこともモジュール化を推し進めました。

日本は関係企業とのすり合わせで商品を作ってきましたが、部品間のインターフェイスが統一され、モジュール化が進むことでこういった日本の強みが優位性を生み出さなくなっていきました。

テレビなど発展途上国でも多く使われ始め、製品のコモディティ化が進みました。上記のモジュール化・デジタル化も手伝って、今までにない機能を備える商品よりもすでにある機能を低価格で備える商品に消費が向きました。この変化に適応しきれず、日本のエレクトロニクス産業は低下していったと言われています。

選択肢1. エレクトロニクス産業では、あらゆる分野の製品を生産し販売するという総花的な自前主義の戦略を見直して、事業分野の選択と集中を図り、電子部品サプライヤーとの垂直的統合を強化したため、事業分野の幅が狭くなり、グローバルな競争力が低下してきている。

誤り。自前戦略を見直して、選択と集中を図るのはコスト集中戦略にあたり、競争力が低下すると言えません。

日本電産などモーターに絞り込んだ戦略で成長を続けています。

選択肢2. エレクトロニクス産業では、安価な電子部品をグローバルに調達して、それらを組み合わせた製品が多くなるにつれて、部品から製品までの一貫生産がコスト競争のうえから不利になっている。

正しい。すり合わせ型からモジュール化による変化で低価格化進みました。

選択肢3. エレクトロニクス産業では、競争優位の構築を目指しながらも、互いに同質的な戦略を展開しながら、技術進歩や製品開発を促進してきたが、電子技術を一方向に収斂させる傾向が強まり、多機能を搭載した類似製品の競争に陥りがちになっている。

正しい。製品のコモディティ化です。似たような機能を低価格で供給する競争に変化しました。

選択肢4. エレクトロニクス産業では、先発企業が自社技術を武器に市場シェアを獲得していても、後発企業が安価な部材をグローバルに調達し、技術的にほぼ同等な製品で価格訴求力を武器に先発企業のシェアを奪うことが多くなっている。

正しい。アナログからデジタル化への製品の変更により、アナログの生産で必要となった熟練などが不要になり、経験曲線効果が利かなくなりました。

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