中小企業診断士の過去問
平成29年度(2017年)
企業経営理論 問23
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問題
中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 平成29年度(2017年) 問23 (訂正依頼・報告はこちら)
契約社員やパートタイマー、派遣労働者、請負労働者など、正社員以外で組織に雇用される労働者は、広く非正社員と呼ばれてきたが、近年は定型的・補助的な職務にとどまらず、正社員と同じ責任を持って職務に従事する質的基幹化が起こっている。質的基幹化に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 機密事項の漏洩が発生しやすくなっている。
- 職場の一体感が低下しやすくなっている。
- 正社員との賃金格差に非正社員が不満を感じやすくなっている。
- 長期的な視点から見た正社員の育成が困難になっている。
- 非正社員は正社員に期待されている役割を担うことができるようになっている。
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この過去問の解説 (2件)
01
質的基幹化に関する問題です。質的基幹化とは非正規の社員が基幹の仕事を行うようになることを言います。
各選択肢については、以下の通りです。
1→非正規の従業員は正規と比較して転職の機会が多いため、機密事項の漏洩が発生しやすくなっています。
2→基幹の仕事を行う非正規の勤務期間が短いと職場の一体感が低下しやすくなると言えます。
3→非正規の社員が基幹業務を行うと正規社員との業務の差が縮まり賃金格差の不満を感じやすくなります。
4→非正規の社員を増やすことによって、相対的に長期間勤続するであろう正社員が減少することになり結果として長期的な育成が困難になります。
5→不適切です。非正規社員に正社員に期待されている役割を担うと、非正規社員にとって正規社員と同じくらいの待遇が必要になります。単に正社員と同じ役割を期待するのは適切とは言えません。
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02
【基礎知識】
解答は、「非正社員は正社員に期待されている役割を担うことができるようになっている。」です。
日本の雇用を守る労働法において、正社員の解雇がかなり難しいという現状があります。
その中で企業は一定の契約期間等をもって雇用が可能であり、比較的専門性を持った人員を雇用することもできる非正規雇用(契約社員、パートタイマー等)を活用することを進めてきました。
その結果、以下のような非正規社員の基幹化が発生していました。
① 量的基幹化:労働力のほとんどを非正規社員が占めている状況。例えばファミリーレストランなど。
② 質的基幹化:判断、管理など高度な業務を非正規社員が担えケースが増えてきていること。
いずれにしても企業運営の重要な位置を占めつつあることがわかると思います。
上記の結果、非正規社員も重要な情報にアクセスしたり、会社の中でも重要な立ち位置となっています。
一方で、非正規の基幹化が進んでいるのにも関わらず、ご主人の扶養範囲内に留まろうとする主婦パートなどが賃金の下方圧力となって、正規社員、非正規社員間の待遇差などが問題になっています。
こういった待遇差の解消を目指し、2019年ごろから、働き方改革の一環で、同一労働同一賃金が進められています。これは非正規・正規間の待遇格差を取り除くもので、同じ業務をしている場合には同じ賃金を適用することが求められるというものです。
ただ、均衡待遇を求められており、一方で理由があれば債が発生しても認めるといった少し中途半端な内容となっています。そのため、現在各地で非正規・正規間の待遇差の解消を求める裁判が起きており、その裁判結果で具体的に均等待遇が求められる部分が決まっている状況です。
正しい記載です。
これまでより機密事項にアクセスできる非正規が増えており、実際非正規社員による情報漏洩事件も増加しています。
正しい記載です。
新卒入社から育成されているような正規社員と異なり、バックボーンも異なり、会社への愛社精神も少なくなりがちで、一体感が失われつつあります
正しい記載です。
同一業務でも主婦パートなどで賃金の下方圧力がかかりやすい非正規との処遇差は問題となっています。
正しい記載です。
非正規が担う業務が増え、さまざまなことを経験して正規社員を育成していくことが困難になりつつあります。
誤った記載です。
正社員と同じ業務を遂行するためには同一労働同一賃金の観点から同一処遇が求められます。ですので、処遇を差別化するためには業務についても差別化が必要です。
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