中小企業診断士の過去問
平成29年度(2017年)
経営法務 問20

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 平成29年度(2017年) 問20 (訂正依頼・報告はこちら)

a株式会社(以下「A社」という。)とB株式会社(以下「B社」という。)との間の民事留置権又は商事留置権に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • A社がB社に売却した機械αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない状況で、B社がCに機械αを売却した場合、A社が機械αを引き渡さず占有しているとしても、機械αは債務者であるB社の所有物ではなくなったことから、A社は機械αについて留置権を主張することができない。
  • A社がB社に売却した部品αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合に、A社がB社に部品αを引き渡したとしても、A社は部品αについて留置権を主張することができる。
  • A社がB社に売却した不動産αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合でも、A社がB社に不動産αの登記を移転してしまうと、A社は不動産αについて留置権を第三者に対抗できない。
  • 店舗で販売するために小売業者であるB社が卸売業者であるA社から購入した商品αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合に、A社がB社から売買代金を受領し、引き渡すだけの状態にある商品βについて、A社は留置権を主張することができる。

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この過去問の解説 (2件)

01

項番1:不適切です。
この場合、A社は機械αを保有したままのため、B社の販売先のCに対しても留置権を主張することができます。

項番2:不適切です。
すでにA社は部品αをB社に引き渡しているため留置権を主張することができません。

項番3:不適切です。
A社がB社に不動産αの登記を移転したとしてもA社が当該不動産を占有している場合は債務が履行されるまで、第三者に対しても対抗することができます。

項番4:適切です。
記述の通りです。留置権は別の債権に関するものについても主張することができます。本問の場合、取引が為されるのは商品αですが、A社はそれとは異なる商品βについて留置権を主張できます。
簡単に言えば「B社が、商品αの代金を払うまで、こちらで保管している商品βも渡しません」という状態です。

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02

留置権や弁済期に関する問題です。

他にも、自働債権と受働債権という観点で出題されることもあります。この場合には、本問の選択肢でも問われている「弁済期の到来(または未到来)」が争点となります。

選択肢1. A社がB社に売却した機械αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない状況で、B社がCに機械αを売却した場合、A社が機械αを引き渡さず占有しているとしても、機械αは債務者であるB社の所有物ではなくなったことから、A社は機械αについて留置権を主張することができない。

●A社がB社に売却した機械αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない状況

→B社は機械αの代金をA社に支払わなければならない

●B社がCに機械αを売却した場合

→Cは機械αの代金をB社に支払わなければならない

●A社が機械αを引き渡さず占有している

→A社は機械αの代金を受け取っていないので占有できる

●機械αは債務者であるB社の所有物ではなくなったが、A社は機械αについて留置権を主張することができる

補足すると、A社はB社にもC社にも留置権を主張することができます。

選択肢2. A社がB社に売却した部品αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合に、A社がB社に部品αを引き渡したとしても、A社は部品αについて留置権を主張することができる。

●A社がB社に売却した部品αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合

→B社は部品αの代金を、弁済期が到来するまで支払わなくて良い

●A社がB社に部品αを引き渡したとしても、A社は部品αについて留置権を主張することができない(そもそもA社は手元にない部品αの留置権を主張することはできません)。

選択肢3. A社がB社に売却した不動産αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合でも、A社がB社に不動産αの登記を移転してしまうと、A社は不動産αについて留置権を第三者に対抗できない。

●A社がB社に売却した不動産αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合

→B社はA社に不動産αの代金を支払わなければならない

●A社がB社に不動産αの登記を移転してしまうと、A社は不動産αについて留置権を第三者に対抗できます

A社は不動産αを占有している(B社に引き渡していない)場合、例え登記上はB社の所有となっていても、第三者(例えばC)に対して不動産αはA社のものであると主張することができます(勿論、B社に対しても「B社の所有にしたいのであれば代金を支払え」と主張することができます。)。

選択肢4. 店舗で販売するために小売業者であるB社が卸売業者であるA社から購入した商品αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合に、A社がB社から売買代金を受領し、引き渡すだけの状態にある商品βについて、A社は留置権を主張することができる。

正解の選択肢となります。

●店舗で販売するために小売業者であるB社が卸売業者であるA社から購入した商品αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合

B社はA社に商品αの代金を支払わなければならない

●A社がB社から売買代金を受領し、引き渡すだけの状態にある商品βについて、A社は(商品αの代金が未払いであるとして、商品βの)留置権を主張することができる

A社とB社はともに商人ですので、商事留置権が適用されます。

商事留置権では、商品αの代金未払いについての留置権を、商品α以外についても援用することができます。

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