中小企業診断士の過去問
令和元年度(2019年)
企業経営理論 問21

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 令和元年度(2019年) 問21 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

メーカーA社では、経営陣が「次世代の主力製品」と鳴り物入りで導入した製品Xについて、累積損失が膨らんだため、市場から撤退する決定がなされた。実は 5 年ほど前から、製品Xには深刻な問題があると気づいていた現場管理者が数人いた。生産上のトラブルが続き、そのコストを価格に転嫁すれば競争力を失うことに気づいていたのである。しかしこの情報が、経営陣に伝わるには時間がかかりすぎた。その原因を探求すると、以下のような状況であったことが分かった。
生産現場の管理者たちは、改善運動で成功してきた実績と有能感を持っていた。当初は、改善運動で問題が処理できると考えていたが、マーケティング面の問題がより深刻であることが分かった。そこで彼らは、製品Xのプロジェクトマネジャー(以下、「ミドル」という)に問題の深刻さを伝える報告書を作成した。A社では、こうした報告書には改善提案を付けることが当然視されていたため、時間をかけて詳細なデータを付けた。
しかしこの精緻な報告書は、製品Xの導入決定の際に、トップ主導で行った生産やマーケティングの調査を根底から覆すような内容を含んでいた。そこでミドルは、まず現場管理者たちに、その報告書に記載されたデータが正しいのか詳しく調べるよう指示した。報告書が正しそうだと分かると今度は、経営陣に悲観的な情報を小出しに流し始めた。経営陣からはいつも「説明資料が長すぎる」と叱られていたので、資料のデータを大幅に割愛し、問題の深刻さをオブラートに包み、現場では事態を十分掌握しているように表現していた。そのため経営陣は製品Xについて、引き続き「次世代の主力製品」と熱い期待を語り続け、必要な財務的資源も保証していったのである。
現場の管理者たちは問題点を指摘したにもかかわらず、経営陣は製品Xへの期待を語り、ミドルからは再検討の要請がなされたため混乱した。そのうち彼らは、製品Xに悲観的な資料を作ることを控え、責任はミドルにあると考えるようになった。やがて、納得したわけではなかったが、あまり気に留めることもなくなった。

あなたがコンサルタントとしてA社の問題を分析するとしたら、A社の組織メンバーが持つ行動モデルに当てはまるものはどれか。最も適切なものを選べ。
  • 自分たちの考え方を頻繁に検証する。
  • 情報の妥当性を重視する。
  • 積極的にリスクを取ろうとする。
  • 全社的な観点から自己の責任を果たそうとする。
  • 問題の論理的な部分を重視し、感情的な部分は排除しようとする。

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この過去問の解説 (2件)

01

項番1:不適切です。
現場の管理者は有能な社員であると考えられるため、自分たちの考え方を頻繁に検証している可能性はありますが、問題文中にはそれをいえる根拠が不足していると考えられます。

項番2:不適切です。
問題文中でミドルは、情報の妥当性よりも、経営陣からの反応を重視していることが分かります。

項番3:不適切です。
項番2で述べたように、ミドルは、情報の妥当性よりも、経営陣からの反応を重視しています。このことから積極的にリスクを取ろうとはしていないことが分かります。

項番4:不適切です。
最終的に、ミドルも現場管理者も経営陣への問題の伝達を諦めています。このことから、全社的な観点から自己の責任を果たそうとはしていないことが分かります。

項番5:適切です。
現場管理者は、詳細なデータを付けて改善提案を付けるなど論理的な部分を重視しています。

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02

二次試験の事例問題のような長い与件文ですが、情報量の多さに惑わされることなく対応したいところです。

なお、二次試験の事例では、財務会計の事例Ⅳを除き、与件文は2~3ページ程度あります。

選択肢1. 自分たちの考え方を頻繁に検証する。

時間をかけて詳細なデータを付けた報告書を提出していますが、「頻繁に検証した」裏付けとなる記述は見られません。

選択肢2. 情報の妥当性を重視する。

報告書が正しそうだと分かると経営陣に悲観的な情報を小出しに流し始めたり、経営陣からは説明資料が長すぎると叱られて資料のデータを大幅に割愛していることから、情報の妥当性よりは経営陣の顔色を重視しているように考えられます。

選択肢3. 積極的にリスクを取ろうとする。

製品Xに悲観的な資料を作ることを控え、あまり気に留めることもなくなったことから、積極的にリスクを取ろうとはしていません。

選択肢4. 全社的な観点から自己の責任を果たそうとする。

現場の管理者たちは責任はミドルにあると考え、ミドルは経営陣の顔色を気にしており、経営陣には正しい情報が伝わっていません。以上から、誰も全社的な観点から自己の責任を果たそうとしているようには見受けられません。

選択肢5. 問題の論理的な部分を重視し、感情的な部分は排除しようとする。

正解の選択肢となります。

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