中小企業診断士の過去問
令和元年度(2019年)
企業経営理論 問22
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問題
中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 令和元年度(2019年) 問22 (訂正依頼・報告はこちら)
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
メーカーA社では、経営陣が「次世代の主力製品」と鳴り物入りで導入した製品Xについて、累積損失が膨らんだため、市場から撤退する決定がなされた。実は 5 年ほど前から、製品Xには深刻な問題があると気づいていた現場管理者が数人いた。生産上のトラブルが続き、そのコストを価格に転嫁すれば競争力を失うことに気づいていたのである。しかしこの情報が、経営陣に伝わるには時間がかかりすぎた。その原因を探求すると、以下のような状況であったことが分かった。
生産現場の管理者たちは、改善運動で成功してきた実績と有能感を持っていた。当初は、改善運動で問題が処理できると考えていたが、マーケティング面の問題がより深刻であることが分かった。そこで彼らは、製品Xのプロジェクトマネジャー(以下、「ミドル」という)に問題の深刻さを伝える報告書を作成した。A社では、こうした報告書には改善提案を付けることが当然視されていたため、時間をかけて詳細なデータを付けた。
しかしこの精緻な報告書は、製品Xの導入決定の際に、トップ主導で行った生産やマーケティングの調査を根底から覆すような内容を含んでいた。そこでミドルは、まず現場管理者たちに、その報告書に記載されたデータが正しいのか詳しく調べるよう指示した。報告書が正しそうだと分かると今度は、経営陣に悲観的な情報を小出しに流し始めた。経営陣からはいつも「説明資料が長すぎる」と叱られていたので、資料のデータを大幅に割愛し、問題の深刻さをオブラートに包み、現場では事態を十分掌握しているように表現していた。そのため経営陣は製品Xについて、引き続き「次世代の主力製品」と熱い期待を語り続け、必要な財務的資源も保証していったのである。
現場の管理者たちは問題点を指摘したにもかかわらず、経営陣は製品Xへの期待を語り、ミドルからは再検討の要請がなされたため混乱した。そのうち彼らは、製品Xに悲観的な資料を作ることを控え、責任はミドルにあると考えるようになった。やがて、納得したわけではなかったが、あまり気に留めることもなくなった。
あなたがコンサルタントとしてA社の組織を変革する際に、その方針や手段として、最も適切なものはどれか。
メーカーA社では、経営陣が「次世代の主力製品」と鳴り物入りで導入した製品Xについて、累積損失が膨らんだため、市場から撤退する決定がなされた。実は 5 年ほど前から、製品Xには深刻な問題があると気づいていた現場管理者が数人いた。生産上のトラブルが続き、そのコストを価格に転嫁すれば競争力を失うことに気づいていたのである。しかしこの情報が、経営陣に伝わるには時間がかかりすぎた。その原因を探求すると、以下のような状況であったことが分かった。
生産現場の管理者たちは、改善運動で成功してきた実績と有能感を持っていた。当初は、改善運動で問題が処理できると考えていたが、マーケティング面の問題がより深刻であることが分かった。そこで彼らは、製品Xのプロジェクトマネジャー(以下、「ミドル」という)に問題の深刻さを伝える報告書を作成した。A社では、こうした報告書には改善提案を付けることが当然視されていたため、時間をかけて詳細なデータを付けた。
しかしこの精緻な報告書は、製品Xの導入決定の際に、トップ主導で行った生産やマーケティングの調査を根底から覆すような内容を含んでいた。そこでミドルは、まず現場管理者たちに、その報告書に記載されたデータが正しいのか詳しく調べるよう指示した。報告書が正しそうだと分かると今度は、経営陣に悲観的な情報を小出しに流し始めた。経営陣からはいつも「説明資料が長すぎる」と叱られていたので、資料のデータを大幅に割愛し、問題の深刻さをオブラートに包み、現場では事態を十分掌握しているように表現していた。そのため経営陣は製品Xについて、引き続き「次世代の主力製品」と熱い期待を語り続け、必要な財務的資源も保証していったのである。
現場の管理者たちは問題点を指摘したにもかかわらず、経営陣は製品Xへの期待を語り、ミドルからは再検討の要請がなされたため混乱した。そのうち彼らは、製品Xに悲観的な資料を作ることを控え、責任はミドルにあると考えるようになった。やがて、納得したわけではなかったが、あまり気に留めることもなくなった。
あなたがコンサルタントとしてA社の組織を変革する際に、その方針や手段として、最も適切なものはどれか。
- Off - JTのワークショップやセミナーを活用し、真実を明らかにしたからといって不利な立場に立たされることはない、という態度を経営者が率先して組織メンバーに身に付けさせる。
- 与えられた目標について利得の可能性を最大化し、損失の可能性を最小化するよう、組織のメンバーを動機づける。
- 管理職には自らの役割を明確にさせ、それを強化するために、他者に指示を出したり、他者を傷つけることのないよう、伝える情報の範囲を自身でコントロールするよう訓練する。
- 組織のメンバーは個人の責任と業績に応じて適切に報酬を得ることができる、という理念を定着させる。
- 組織の和を重視し、組織メンバーや既存の制度を脅かすような言動は慎むよう訓練する。
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この過去問の解説 (2件)
01
問題文中のミドルの行動からも分かるように、経営陣に対して問題をオブラートに包んで伝えています。このような行動を改善するためには、Off - JTのワークショップやセミナーを活用し、真実を明らかにしたからといって不利な立場に立たされることはない、という態度を経営者が率先して組織メンバーに身に付けさせることが有効です。
項番2:不適切です。
本問においては、この施策はあまり関係ありません。
項番3:不適切です。
本問の会社にこの施策を実施した場合、発生している問題を隠蔽する傾向がさらに強まる可能性があります。
項番4:不適切です。
本問の会社にこの施策を実施した場合、各メンバーは個人の責任の範囲の業務のみに集中するため、全社的な問題には意識が向かなくなる可能性があります。
項番5:不適切です。
本問の会社にこの施策を実施した場合、経営陣へ問題点を指摘する可能性がさらに低くなります。
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02
選択肢の中でも述べていますが、しっくりくる答えを選ぼうとすると無駄に時間を浪費してしまう恐れがあります。特に、本科目においては曖昧な日本語表現がその傾向を強めていると感じます。
「最も適切なもの」を選択するように指定されているため、最も妥当性が高い選択肢を選ぶようにして下さい。その場合には、消去法で「コレは絶対にない」という選択肢を排除して、早く選択肢を絞り込めるかどうかが重要になります。
正解の選択肢となります。
Off-JTという外部機能を活用することが有効であるとは一概には言い切れませんが、問題の指示である「最も適切なもの」という観点から、他の選択肢よりは妥当性が高いです。
マーケティング面の問題が深刻であるため、マーケティング部のメンバーにとってはマーケティングの正当性を主張することで「利得の可能性を最大化」しようとすることが考えられます。
本問では、ミドル(管理職)が経営陣に正しい情報を伝えていないことが問題であると考えられます。そのため、ミドルの責任忌避傾向が強まるおそれがあります。
個人の関心が自らの業績に関係がある部分にしか向かなくなるおそれがあり、A社の組織を変革する方針や手段としては有効ではありません。
A社では、今まさにこのような状況であると考えられます。そのため、これでは何も変わりません。
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