中小企業診断士の過去問
令和2年度(2020年)
企業経営理論 問6

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 令和2年度(2020年) 問6 (訂正依頼・報告はこちら)

設計、生産、販売などの活動から構成されるバリューチェーン(価値連鎖)の中で、どのステージ(活動)を自社で行うかの決定が、その企業の垂直統合度を決める。
自社で行う活動の数が多いほど垂直統合度が高く、その数が少ないほど垂直統合度が低いとした場合、完成品メーカーA社の垂直統合度を高くする要因に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • A社が使用する素材については、仕入先が多数存在しており、どの仕入先からでも、必要な時に品質の良い素材を仕入れることができる。
  • A社が使用する部品を製造しているすべてのメーカーは、A社に納入する部品製作のために専用機械を購入し、その部品はA社以外に納入することはできない。
  • A社の完成品を使用する企業や工場は、A社の完成品を使用できなくなると、日常業務が成り立たなくなったり、生産ラインが維持できなくなったりする。
  • A社は、完成品を作るために必要な原材料や部品を提供している会社との間で、将来起こりうるすべての事態に対してA社が不利にならないような契約を交わすことができる。
  • A社は販売代理店を通じて製品を販売しているが、景気の回復局面ではその販売代理店はライバル会社の製品を優先して販売する。

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この過去問の解説 (2件)

01

価値連鎖(バリューチェーン)についての出題です。

垂直統合とは、価値連鎖において付加価値の源泉となる川上、川下の活動を取り込むことです。

問題文が読みにくいですが、垂直統合を高くする要因とは、これを統合すれば垂直統合度が高まる=付加価値の源泉を取り込むことができるということです。

1 間違い

A社が買い手である場合、素材購入先が複数あり、同レベルの品質を提供できる状態は買い手としての交渉力もあるため、垂直統合の必要性は低いです。

2 間違い

A社の使用する部品を製造納入しているすべての企業が、A社向けに専用の機械を持ち、A社にしか納入していないのであれば、A社にとっての垂直統合の必要性は低いです。

3 間違い

A社の完成品を購入している企業が、A社が製品を提供できなくなると業務が成り立たなくなるのであれば、A社にとっての垂直統合の必要性は低いです。

4 間違い

A社に提供している部品や素材の企業とA社が不利にならないような契約が結べているのであれば、A社にとっての垂直統合の必要性は低いです。

5 正しい

A社が販売している代理店が、不景気にはA社のライバル会社の製品を優先して購入するとしています。この場合、この販売代理店を垂直統合することでA社の製品の販売を優先させることができ、販売量の維持につなげることができます。

よって、正解は5です。

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02

問題設定が分かりにくいですが、与件文中の「完成品メーカーA社の垂直統合度を高くする要因」とは、通常は外部の別企業が行っている活動を、A社の中に取り込む(社内組織化する)ということです。

設計、生産、販売などの活動を外部企業が行っている場合、たとえば早く欲しい製品があったとしても、他社であるメーカー企業の生産スケジュールに左右されるため、自社のコントロールが及びません。もし、このメーカー企業を買収して自社の製造部門にしてしまえば、(残業代は発生するかも知れませんが)製品を急いで作らせるなど、その活動をコントロールすることが可能になります。

選択肢1. A社が使用する素材については、仕入先が多数存在しており、どの仕入先からでも、必要な時に品質の良い素材を仕入れることができる。

A社は、多数存在するどの仕入先からでも必要な時に品質の良い素材を仕入れることができるため、垂直統合を行う必要がありません

選択肢2. A社が使用する部品を製造しているすべてのメーカーは、A社に納入する部品製作のために専用機械を購入し、その部品はA社以外に納入することはできない。

すべてのメーカーがA社に納入する部品製作のために専用機械を購入しており、その部品はA社以外に納入することはできないため、ある意味、現時点で垂直統合が達成されている状態とも読み取れます。A社にとっては特に不利になることはありませんので、垂直統合を行う必要がありません。

選択肢3. A社の完成品を使用する企業や工場は、A社の完成品を使用できなくなると、日常業務が成り立たなくなったり、生産ラインが維持できなくなったりする。

A社の完成品を使用する企業や工場は、現時点でA社の完成品に依存している状態とも読み取れます。A社にとっては特に不利になることはありませんので、垂直統合を行う必要がありません。

選択肢4. A社は、完成品を作るために必要な原材料や部品を提供している会社との間で、将来起こりうるすべての事態に対してA社が不利にならないような契約を交わすことができる。

A社が不利にならないような契約を交わすことができるため、A社にとっては直統合を行う必要がありません。

選択肢5. A社は販売代理店を通じて製品を販売しているが、景気の回復局面ではその販売代理店はライバル会社の製品を優先して販売する。

正解の選択肢となります。

販売代理店はライバル会社の製品を優先して販売しているため、A社にとっては不利な状況です。この販売店を垂直統合(社内組織化)しようとするインセンティブが働くと考えられます。

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