問題
このときに行う仮説検定の手順に関する記述として、最も適切なものはどれか。ただし、従来の設備では、加工精度の分散が23.5であった。
検定統計量に関する問題です。
各選択肢については、以下のとおりです。
1:誤りです。
10個のデータの分散でなく、母分散が23.5より小さいかが問題です。
2:誤りです。
カイ二乗分布を設定して、母分散の検定を行ないます。
3:誤りです。
検定統計量は10個のデータから計算される偏差平方和ではなく、偏差平方和を分散で割った値です。
4:正解です。
その通りです。
5:誤りです。
バラツキが抑制できたかを確認するための対立仮説は σ2<23.5と設定します。
正解は、「対立仮説、有意水準、データ数に基づいて、帰無仮説の棄却域を設定する。」です。
【基礎知識】
仮説検定の手法に関する基礎的な知識の確認問題です。
一見23.5という数値が出ていますので、何らかの検討ができそうですが、この数値のみでは仮説検討は行えません。そのため問われているのは仮説検定の手順になります。よって基礎的な知識の問題と位置付けました。
〇仮説検定の基礎
品質管理において、一番いいのは全数をチェックすることです。
しかしそれは不可能であるため、母集団から一定数を抜き取り、その結果から母集団の品質を推定していきます。これを推定統計と言います。推定統計の中でも母集団がおおむね想定できる場合、仮説検定という手法で推定していきます。
仮説検定では、実証したい内容を“対立仮説”と言い、その反対の内容を“帰無仮説”と言います。帰無仮説がありえないことを示して、対立仮説(実証したい内容)を証明していく手法です。
今回の問題では、分散(バラつき)を抑えたいという意向があります。
よって、
対立仮説:新設備の導入でバラつきが抑えられた
となります。
帰無仮説は当然、「新設備の導入でバラつきが抑えられていない」となります。
ここで、どうなればバラつきを抑えられたと言えるのかがポイントになります。バラつきですので、分散であることはお分かりいただけると思います。
現状23.5ですが、今回サンプリング抽出していますので、23.5を下回ればいいというわけではありません。現状の数値だけではその判断が難しいですが、ある一定の数値を設定し、それを下回ったかを確認することになります。この一定の数値を有意水準と言います。
仮に10個の数値の分散が20だった場合、有意水準が21であればバラつきが小さくなっていますので、帰無仮説が成立しないことを証明できます。この時、帰無仮説を棄却するといいます。
一方で有意水準が19であれば、逆に対立仮説を証明することはできません。
誤り。従来の設備ではバラつきが23.5でしたので、10個の標本で23.5を下回ればいいというのは一見正しいように見えます。しかし、この主張が成立するためには、10個の標本が母集団を確実に表している必要がありますが、それはわかりません。
誤り。F分布は2つの分散の比を表す分布です。標本分散を使って母集団を推定する場合はカイ2乗検定を使います。
誤り。検定統計量は10個のデータから計算される偏差平方和ではなく、偏差平方和を分散で割った値になります。
正しい。帰無仮説が棄却される範囲を設定し、対立仮説が成立することを示します。
誤り。σは標準偏差のことです。標準偏差は分散の平方根になりますので、標準偏差の2乗が現行設備の分散である23.5よりもばらついていない→σ2<23.5であればいいということになります。