中小企業診断士の過去問
令和2年度(2020年)
経営情報システム 問23

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営情報システム 令和2年度(2020年) 問23 (訂正依頼・報告はこちら)

以下に示す4つのデータ分析の事例における調査データや統計量の解釈は統計の視点から見て正しいものであるか。それぞれの事例に関する正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

事例1:ある商品について売上高と気温の相関係数を計算すると0.855であった。相関係数の値が正で値も大きいので、売上高を決める原因は気温である。

事例2:ある企業の従業員の年収の平均値を計算すると582万円であった。この企業の従業員である私の年収は560万円である。私の年収は平均値を下回っているので、従業員の年収を高い順に並べた時、下位半分に位置する。

事例3:A店舗の100日間の売上高の平均値は40万円、標準偏差は10万円であった。B店舗の同じ期間の売上高の平均値は100万円、標準偏差は20万円であった。B店舗の標準偏差はA店舗の標準偏差よりも大きいので、B店舗の方が売上高のばらつきが大きい。

事例4:あるレストランは男性からも女性からも評判の良い店である。既存のメニューを改善する目的で新メニューを開発した。新メニューを評価するために男女各50人に、既存メニューと新メニューに対する評価(「良い」か「悪い」か)を調査した。下表がその結果である。この調査結果によると、新メニューの方が良いと回答した割合が5ポイント高いので、既存メニューを新メニューに置き換えれば売上高は伸びる。
問題文の画像
  • 事例1:正 事例2:正 事例3:正 事例4:正
  • 事例1:正 事例2:誤 事例3:誤 事例4:正
  • 事例1:誤 事例2:正 事例3:正 事例4:誤
  • 事例1:誤 事例2:誤 事例3:誤 事例4:誤

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この過去問の解説 (3件)

01

統計に関する記述として、最も適切なものを選びます。

事例1 不適切です。

相関係数に関する設問です。

相関係数とは、2つのデータの関係の強さ(相関)を-1から+1の間で表す指数です。例えば、データAとデータBの相関係数の値が正(+)とは、Aが大きい時Bも大きく、Aが小さいときBも小さいという傾向があるということを表します。逆に相関係数の値が負(-)とは、Aが大きい時Bは小さく、Aが小さいときBは大きいという傾向があるということを表します。数値は1(-1)に近いほど相関関係が強いことを表しています。

相関関係と因果関係は別物です。Aが大きい時にBも大きいことが多い(相関関係がある)ことは、Aが大きい「から」Bが大きい(因果関係がある)ことではないからです。

設問文では、売上高と気温が相関関係にあるということが、売上高を決める原因は気温であるという因果関係の記述になっているため、不適切であると判断できます。

事例2 不適切です。

平均値と中央値に関する設問です。

平均値とは、データの総和をデータの個数で割ったものを言います。

中央値とは、データを大きい順に並べたときの真ん中の値を言います。

例えば、1、2、4、8,100という5つの数値があったとします。この時の平均値は1+2+4+8+100=115(総和)÷5(データの個数)=23です。一方で、中央値は、5つのデータの真ん中にある4になります。このように、平均値と中央値は別物です。平均値は、データに偏りがあった場合中央値から大きく離れることがあります。

設問文は、ある企業の年収の「平均値」が582万円、私の年収が560万円、この時私の年収は従業員の年収の下位半分に位置するとしています。企業の年収の「中央値」が582万円であったならば私の年収は従業員の年収の下位半分に位置しますが、平均値からは順番は求められません。そのため不適切であると判断できます。

事例3 不適切です。

標準偏差と変動係数に関する設問です。

標準偏差とは、データの平均値からのばらつき度合いを表す指標です。例えば選択肢2で使用した1、2、4、8,100という数値は、平均値23からどの数値も大きく離れています。このようなデータは標準偏差が大きいデータです。一方で、1、2、4、8,10という数値は、平均値が5であり、先ほどの数値よりも平均値から離れていません。このようなデータは標準偏差が小さいデータです。

二つのデータのばらつき具合を比べる際には変動係数を使用します。変動係数とは、標準偏差を平均値で割った値のことで、異なるデータのばらつき具合を相対的に比較することができます。変動係数は数値が大きい方ほどよりばらつきが大きいことを意味します。

設問では、

A店舗の変動係数は標準偏差10万円÷平均値40万円=0.25

B店舗の変動係数は標準偏差20万円÷平均値100万円0.2

と、A店舗の変動係数の方が大きいため、A店舗の方が売上高のばらつきが大きいです。そのため、B店舗の方が売上高のばらつきが大きいとしている設問文は不適切であると判断できます。

事例4 不適切です。

データの活用方法に関する設問です。

設問文の「新メニューの方が良いと回答した割合が5ポイント高い」ことが、確率的に偶然とは考えにくく、意味があると考えられるかが論点となります。「確率的に偶然とは考えにくく、意味がある」ことを、統計学的に有意と言います。統計学的に「新メニューの方が良いと回答した割合が5ポイント高い」ことが偶然ではなく、そのために「既存メニューを新メニューに置き換えれば売上高は伸びる」と言い切るためには、調査結果が偶然ではないことを検証する必要があります。このような検定を統計的仮説検定と言います。設問文においては、統計的仮説検定をしておらず、統計学的に有意であるか検証できていないため、調査結果から結論を出すことができません。そのため設問文は不適切であると判断できます。

よって、すべての事例を誤としている選択肢4が最も適切であると判断できます。

参考になった数11

02

統計関連の出題です。

事例が並んでそれぞれの正誤を答えるのですが、選択肢の1(すべて正)か4(すべて誤)を選ぶのは、一つでもあやふやな点があると選びにくいかもしれません。

本問は基本的な問題ですので、全てに自信を持って回答する必要があります。

1 誤

相関係数 0.855は強い相関を表しますが、与えられた情報だけで、売上を决める要因が気温と言い切ることはできません。

2 誤

平均値を下回っていても絶対値として下位半分となるとは言い切れません。例えば、本事例の場合、給与が高い社員が平均値を押し上げていて他の社員と格差がある場合、全社員の中央値は平均値よりも低くなります。

3 誤

データのばらつきを評価するには変動係数を見ます。

変動係数=標準偏差÷平均値

です。この両者を比較すると変動係数はA店舗が高くなります。

4 誤

この事例では、統計的に有意であるかどうかの検証がされずに判断されています。

またレストランのメニューについて男女各50人のアンケートとありますが、この男女の回答の内容が旧メニューを良いと回答した人がレストランをよく利用する顧客であり、新メニューを支持した人があまりレストランを利用しないグループであれば、異なった結果となります。

よって、正解は4

参考になった数3

03

統計についての知識を問う問題です。

各事例をそれぞれ解説します。

 

事例1

相関係数を改めて簡単にまとめると、2つの変数の間の関係の有無や強弱を数値で示す指標のことです。

-1から+1の間の値を取り、正の数値であれば正の相関があり、負の数値である場合は負の相関があることになります。

0の時は2つの変数の関係は無関係です。

相関関係はあくまでも2つの変数の関係を示すもので、因果関係があることを示しているものではありません

相関係数の値が大きい気温が売上高を決定する原因とは断定できないため誤りです。

 

事例2

他に比較する従業員の年収が記述されていないため、何番目に位置するのかは不明です。

そのため誤りです。

 

事例3

標準偏差とはデータのばらつきを表す指標です。

値が大きいほどばらつきは大きくなります。

値を計算するときは、分散の正の平方根で求めることができます

計算方法から考えて、標準偏差は10万円や標準偏差は20万円という値になることはありません

そのため誤りです。

 

事例4

それぞれのメニューの単価が不明では売上高を計算することはできません

既存メニューを新メニューに置き換えても、売上高が伸びるかは判断ができないため誤りです。

 

正しい選択肢の組み合わせは、 事例1:誤 事例2:誤 事例3:誤 事例4:誤 です。

選択肢1. 事例1:正 事例2:正 事例3:正 事例4:正

本選択肢は不正解です。

選択肢2. 事例1:正 事例2:誤 事例3:誤 事例4:正

本選択肢は不正解です。

選択肢3. 事例1:誤 事例2:正 事例3:正 事例4:誤

本選択肢は不正解です。

選択肢4. 事例1:誤 事例2:誤 事例3:誤 事例4:誤

本選択肢は不正解です。

まとめ

正解はすべての事例が誤っているであるため選ぶのに迷ったかもしれません。

本問はあくまでも知識問題で、基本的な知識を問うものだったため落ち着いて取り組めば、自信を持ってすべての事例が誤っていると判断することはできたと思われます。

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