中小企業診断士の過去問
令和3年度(2021年)
経済学・経済政策 問4
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問題
中小企業診断士試験 第1次試験 経済学・経済政策 令和3年度(2021年) 問4 (訂正依頼・報告はこちら)
コロナ禍で落ち込んだ経済を支えるための対策のひとつに、個人や世帯に対する一時金の給付がある。この一時金の経済効果に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 恒常所得仮説によれば、今期の消費は今期の所得によって決定される。従って、緊急事態宣言の発出によって飲食店の営業を停止しても、一時金の給付によって巣ごもり消費が喚起され、経済全体の消費は増加すると考えられる。
b 絶対所得仮説によれば、生涯の所得が生涯の消費を決定する。従って、一時金の給付が将来の増税を予想させるとしても、新しい生活様式への対応を通じて、経済全体の消費は増加すると考えられる。
c 低所得者ほど限界消費性向が高い傾向にあるとすれば、一時金の給付対象に所得制限を設けることは、より効果的に消費を支えると考えられる。
d 不要不急の財に関する需要の所得弾力性が高い傾向にあるとすれば、一時金の給付が消費を増やす効果は、不要不急の消費ほど大きくなると考えられる。
a 恒常所得仮説によれば、今期の消費は今期の所得によって決定される。従って、緊急事態宣言の発出によって飲食店の営業を停止しても、一時金の給付によって巣ごもり消費が喚起され、経済全体の消費は増加すると考えられる。
b 絶対所得仮説によれば、生涯の所得が生涯の消費を決定する。従って、一時金の給付が将来の増税を予想させるとしても、新しい生活様式への対応を通じて、経済全体の消費は増加すると考えられる。
c 低所得者ほど限界消費性向が高い傾向にあるとすれば、一時金の給付対象に所得制限を設けることは、より効果的に消費を支えると考えられる。
d 不要不急の財に関する需要の所得弾力性が高い傾向にあるとすれば、一時金の給付が消費を増やす効果は、不要不急の消費ほど大きくなると考えられる。
- aとb
- aとbとc
- bとc
- bとcとd
- cとd
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この過去問の解説 (3件)
01
コロナ禍で実施された一時金の経済効果についての出題です。
a 間違い
恒常所得仮説は、家計の消費は「恒常所得(給与などの恒常的に入ってくる収入)」によって決まるとするものです。
一時所得である給付金は家計の消費に影響を及ぼしません。
b 間違い
絶対所得仮説は、消費の決定要因は現在の所得によって決まるというものです。
c 正しい
限界消費性向とは、所得が増えた時の消費に向けられる割合のことです。
低所得者が限界消費性向が高いというのは、低所得者は所得が増えると貯蓄に回すのではなく消費に使われるという意味です。
よって、所得制限が設けられると、より低所得者への給付が厚くなるということですので、消費の下支えとなります。
d 正しい
需要の所得弾力性が高いとは、所得が増えると需要が増える割合が高いという意味です。
一時金の給付によって所得が増えると不要不急の財に対する需要が増える、という意味です。
よって、正解はcとdです。
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02
【基礎知識】
所得と消費の関係については色々な説があり、所得の増加が消費にどういった影響を与えるのかについてそれぞれ考え方を押さえておきましょう。前半のaとbの選択肢はその知識が必要です。
絶対消費仮説:ケインズ型の消費関数はCt=C0+cYtで表されます。Ctはt期の消費で、C0は基礎消費と呼ばれ、所得に関係なく支出されるものです。Ytはt期の可処分所得になり、そのうちの一定割合(c:消費性向)を消費に回すというものです。
この式が示しているのは、「基本的に所得が増加すると消費は増加するが、その増加は所得の伸びほど消費は伸びない」ということであり、この考え方を絶対消費仮説と言います。消費は絶対的にその時の所得に関連して増減するというものです。
相対所得仮説:消費は相対的な所得水準によって決まるとするもの。具体的には過去の消費習慣や他人の消費習慣を参考に相対的に消費水準が決まるとしています。デューゼンベリー等が提唱しました。ですので、一時的な所得の減少は短期的な消費の減少につながらない(歯止め効果:ラチェット効果)と言われています。また他人の消費に影響を受けることをデモンストレーション効果と言います。いつも高級スーパーで買い物している人が、所得が減っても周りの目があるのですぐに格安スーパーに移れないようなケースです。
恒常所得仮説:所得を今後も安定的に獲得できると考えられる恒常所得により消費が決まるというものです。よって、一時的に所得が増えたとしても消費に与える影響は限定的であるという考えになります。
ライフサイクル仮説:生涯を通じて得られると見込まれる生涯所得を生涯を通じて使い切るという考え方です。よって、一時的な所得が増えてもただちに消費に影響しないというものです。
後半のc、dの選択肢は考える問題になります。
限界消費性向とは、上記の絶対消費仮説でも出てきた消費性向のことになります。“限界”とは、ある点において、所得が1単位増えたときに消費がどれだけ増加するかを表したもので、基本的にはグラフのある点の接線の傾きになります。消費関数では主に直線が使われますので、傾きと等しくなります。
○○の△△弾力性という言葉はいくつか出てきます。△△が変化したときに○○がどれだけ変化するかを表す指標になります。
このどれだけ変化したかを考える際に、200円から100円になったものと1000円から900円になったものの差がつきにくくなりますので、それぞれ変化率を用います。
つまり、上記の例で考えますと、100/200、900/1000と考えます。
需要の価格弾力性になりますので、価格が変化したときに需要がどれだけ変化するのかを見ていくことになります。
(選択肢評価)
a 恒常所得仮説においては、消費は恒常的に獲得できる所得に比例するとされ、一時的な所得の増減は影響しないとしていますので、当記載は誤りです。
b 当記載は絶対消費仮説ではなく、ライフサイクル仮説の記載ですので誤り。また、ライフサイクル仮説に基づくと、消費を増やさないとなります。
c 消費性向が高いと、所得のうち、消費に回る金額が大きくなるため、より効果が大きいと考えられます。仮に高所得者の消費性向を0.5、低所得者の消費性向を0.8とすると、同じ10万円を支給しても、高所得者は5万円しか使いませんが、低所得者は8万円使ってより景気を刺激することになり、効果的だと言えます。よって当選択肢は正しいです。
d 需要の所得弾力性が高いと所得が増加した場合により需要が増えますので、正しい記載です。
上記説明より、不適切です。
上記説明より、不適切です。
上記説明より、不適切です。
上記説明より、不適切です。
正解です。
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03
一時金の経済効果に関する問題です。
a:不適切です。恒常所得仮説とは、一時金などではなく給与など恒常的な所得によって消費が決定されることを指します。
b:不適切です。絶対所得仮説とは、その時点での所得が消費を決定します。よって一時金の給付により消費は一時的に増加します。
c:適切です。限界消費性向が高いとは、所得の増加による消費の増加の割合です。所得制限を設けることで、限界消費性向が高い低所得者への恩恵を高くすることで、消費を増やすことができます。
d:適切です。需要の所得弾力性が高いとは、所得の増加によって需要が大きく増えることを指します。よって不要不急の財に関する需要の所得弾力性が高い場合は、一時金の給付が消費を増やす効果は、不要不急の消費ほど大きくなります。
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