中小企業診断士の過去問 令和3年度(2021年) 企業経営理論 問15
この過去問の解説 (2件)
「経営戦略に関連する組織運営」に関する問題です。
チャンドラーは、企業の戦略プロセスを次の4つに分類しました。
・量的拡大 → 単一組織で単一職能に携わるマネジメント組織
・地理的拡散 → 地域ごとに現業組織(各部門と部本部)
・垂直統合 → 垂直職能を統合化し、職能性組織の生成
・製品多角化 → 事業部制、統合本社
正解は5です。
1.×地理的拡大が進んだ企業では機能( 職能 )別組織ではなく、地域ごとに現業組織が採用されることになります。
2.×機能( 職能 )別組織において、各機能部門長は、各機能(職能)の最終責任は負いますが、事業戦略の策定・執行に関する最終責任は、より上位の範囲となります。
3.×カンパニー制組織は、独立した法人格を有するものではありません。企業の組織形態のひとつであり、 各事業を一企業のように独立採算の形式で経営資源の委譲を行います。
4.×プロダクト・マネジャー制組織は、事業部内の特定の商品について、すべてのマーケティング、損益責任を担う制度であり、研究開発型ベンチャー企業における事業部制組織とは異なるものです。
5.○問題文の通りです。
正解は、「持株会社は、その設立に関して一定の制限が定められているものの、規模の下限は設定されていないことから、中小企業においても目的に応じて活用することができる。」です。
【基礎知識】
問題文に出てくる主要キーワードを中心に基本事項を整理します。
・チャンドラーとアンゾフの主張です。全く逆を言っています。
チャンドラー:外部環境の変化 → 戦略の変化 → 組織の変化 「組織は戦略に従う」
アンゾフ :外部環境の変化 → 組織の変化 → 戦略の変化 「戦略は組織に従う」
・組織構造の一般形態
① 機能(職能)別組織
営業、購買、製造、人事といった企業の機能ごとに分かれた組織。最終権限は上位レベルに集中した集権管理型組織。中小企業等に多い。
② 事業部制組織
利益権限・責任を組織に大幅に委譲した分権管理型の組織。製品別、地域別、顧客別などの組織がある。事業部単位で計画・統制し、利益を追求するためプロフィットセンターと呼ぶ。
③ プロジェクト組織
部門の垣根を越えて協力し合う組織。期間限定で設立されたりする。
④ マトリックス組織
職能、製品などの2軸で組織を作る。ワンマンツーボス体制となり、指揮命令系統が複雑になるといったデメリットもある。
⑤ カンパニー組織
事業を独立した会社として扱い、利益責任を負わすだけではなく、投資などの管理責任も委譲される。人事面や経営面の意思決定をカンパニーで行わせる。
⑥ プロダクト・マネジャー制組織
一つの事業部内で特定の商品についてのすべてのマーケティングから損益責任までを担う。
・持ち株会社
他の株式会社の株を持って傘下に入れる形態でホールディングカンパニーとも言い、2つの形態があります。
①純粋持ち株会社:他の会社の事業をコントロールするために株式を保有する持ち株会社で管理が主体。
②事業持ち株会社:自らもビジネスを行う点が異なる。加えて他の会社の事業をコントロールすることも行っている会社。
持ち株会社は独占禁止法で禁止されてきましたが、平成9年に解禁し、現在も大規模な会社を中心にホールディングスの体制がとられています。あまりに強大になると支配体制が強くなるため、総資産等で上限が定められています。
大規模会社で持ち株会社を行うと、以下のようなメリットがあります。
・意思決定が円滑に行える:ホールディングスで統一的な意思決定ができ、各社は専門的な分野に集中できる。
・M&A、事業統合を進めやすい:ホールディングスの親会社が必要な他社を買収してグループに取り込むことで再編等がやりやすい。
・事業リスクの分散:ある1社の経営不振などの影響が他に波及しにくい。
また、中小企業では、以下のメリットもあります。
・1社に集約できるため、事業承継がやりやすい。
・自社株の評価の引き下げが可能(相続対策):利益の高い事業を子会社化したり、買い取りのためにホールディングスの親会社で借金をすると、評価が下がる。
誤り。地域的な拡大が進むと、地区別の事業部制組織等が有効です。機能別組織はトップに権限を集中させる比較的狭い範囲での事業に有効です。
誤り。各機能部門長はその部門の責任を負いますが、最終責任は各機能を統合して管理するトップマネジメントにあります。
誤り。どちらも別法人ではありませんが、事業部制組織はプロフィットセンターとして、利益責任を負うのに対し、カンパニー制は投資などについても権限が委譲される点が異なります。
誤り。製品についての責任を負う体制になります。商品開発なども責任を負いますが、管理する製品に限定したものとなります。
正しい。主に中小企業では相続対策等で利用されるケースがあります。
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