中小企業診断士の過去問
令和3年度(2021年)
企業経営理論 問16

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 令和3年度(2021年) 問16 (訂正依頼・報告はこちら)

リーダーシップ理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • E.P.ホランダー( E.P.Hollander )の特異性-信頼理論によると、リーダーがフォロワーから信頼を得るためには、集団の目的に貢献する有能性と、集団の自由を重んじる開放性を満たす必要がある。
  • F.E.フィードラー( F.E.Fiedler )の研究によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況の決定要因とは、①リーダーとメンバーの人間関係、②課業の構造化の度合い、③リーダーの職位に基づくパワーの3要因である。
  • R.リッカート( R.Likert )らによる初期のミシガン研究によると、高業績部門では職務中心的な監督行動が多くみられる一方で、低業績部門では従業員中心的な監督行動が多くみられる。
  • オハイオ研究によると、有効なリーダーシップの行動特性を表す次元とは、メンバーが良好な人間関係を構築できる「構造づくり」と、課題達成に向けてメンバーに理解しやすい指示を出す「配慮」の2つである。
  • 状況的リーダーシップ論( SL理論 )によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況要因とは、目標達成に向けたフォロワーの貢献意欲の強さである。

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この過去問の解説 (4件)

01

「リーダーシップ理論」に関する問題です。

正解は2です。

1.× リーダーがフォロワーからの信頼を得るためには、リーダーはフォロワーの属性や既存のカルチャーを認識・理解する同調性と、リーダー自身の能力を示す有能性が必要です。

2.○ 問題文の通りです。

3.× 高業績部門では、従業員中心的な監督行動が多くみられる一方、低業績部門では職務中心的な監督行動が多くみられます。

4.× 有効なリーダーシップの行動特性を表す次元は「構造作り」と「配慮」の2つに集約されます。

「構造作り」は課題達成に向けてメンバーに理解しやすい指示を出す行動、「配慮」は、メンバーが良好な人間関係を構築できる行動です。

5.× SL理論(シチュエーショナル・リーダーシップ理論(Situational Leadership)は、部下の習熟度や状況に合わせてリーダーシップのスタイルを変える必要があるという考えであり

 目標達成に向けたフォロワーの貢献意欲の強さが、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況要因とは限りません

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02

正解は、「F.E.フィードラー( F.E.Fiedler )の研究によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況の決定要因とは、①リーダーとメンバーの人間関係、②課業の構造化の度合い、③リーダーの職位に基づくパワーの3要因である。」です。

【基礎知識】

リーダーシップ理論は時代の変化とともに、理論の軸足も変わりながら変遷してきました。

① 特性理論(~1940年代)

優れたリーダーにはどんな特性があるか?

→ 要素を特定するに至らず、結論は出ず。

② 行動理論(1940~1960年代)

特性がわからないため、行動パターンでリーダーシップの本質を探る。

(1)レビンのリーダーシップ類型論(アイオワ研究)

民主型、独裁型、放任型があり、民主型リーダーシップが優れている。

(2)オハイオ研究

リーダーシップの違いは、

〇構造造り(目標達成のためにリーダーと部下の役割を定義し構築すること)

〇配慮(部下の感情への気配り、アイデアの尊重など)

の2点に高い関心を占めるリーダーが成果を出す可能性が高いと結論。

(3)ミシガン研究

リッカートのシステムⅣ理論。経営をシステム捉え、以下の4つに分類。そしてリーダーシップのタイプも課題志向、人間関係志向の2つに整理。システム4の組織の方が業績が高く、リーダーシップは関係志向の方が業績が高く、課題志向は低いことを明らかにした。

システム1 権威主義・専制型

→(リーダーシップ)徹底した課題志向

システム2 温情・専制型

→(リーダーシップ)課題志向>弱い人間関係志向

システム3 参画協調型

→(リーダーシップ)課題志向=人間関係志向

システム4 民主主義型

→(リーダーシップ)課題志向 < 人間関係志向

(4)PM理論

Performance:目標達成機能、Maintenance:集団維持機能ともに高いリーダーシップが望ましい。

(5)マネジリアルグリッド

人への関心、生産への関心の2軸で、双方に関心の高いチームマネジメント型が理想。

③ 状況適合論(コンティンジェンシー理論)(1960年代~)

状況に応じて有効なリーダーシップスタイルが異なるという考え。

(1) フィードラー理論

リーダーのスタイル:

・仕事中心

・人間中心

状況要因:

・リーダーと集団の人間関係の良好さ 良い、悪いの時は仕事中心、中間は人間中心

・仕事内容の明確化の程度 明確、不明確は仕事中心、中間は人間中心

・リーダーの権限の強さ 強い、弱い場合は仕事中心、中間は人間中心

(2) SL理論

リーダーのスタイル:

・指示的行動

・援助的行動

状況要因:部下の成熟状況→成熟度1~4(1は未熟、4は熟練)

成熟度1―教示型リーダーシップ

 指示的行動が多い。

成熟度2説得型リーダーシップ

 指示的、援助的両方必要。部下が成長してくるため、説得して納得させることが重要。

成熟度3参加型リーダーシップ

 援助的行動が多い。主要な意思決定に意見を求める。

成熟度4委任型リーダーシップ

 部下が任せてほしい状況。

(3) パス・ゴール理論

リーダーは道筋(パス)を示して、従業員の業績目標(ゴール)を助けるスタイルが有能であるという理論。部下の特徴と仕事環境の特徴の状況要因に応じて、補完するスタイルをとるべきとしている。

選択肢1. E.P.ホランダー( E.P.Hollander )の特異性-信頼理論によると、リーダーがフォロワーから信頼を得るためには、集団の目的に貢献する有能性と、集団の自由を重んじる開放性を満たす必要がある。

誤り。特異性-信頼理論はリーダーがいかに部下からの信頼を蓄積していけるかにかかっているとする理論です。そのためにチームの状況をつかむことの理解を示す“同調性”とチームに貢献できる“有能性”が必要としています。

選択肢2. F.E.フィードラー( F.E.Fiedler )の研究によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況の決定要因とは、①リーダーとメンバーの人間関係、②課業の構造化の度合い、③リーダーの職位に基づくパワーの3要因である。

正しい。記載の通りです。

選択肢3. R.リッカート( R.Likert )らによる初期のミシガン研究によると、高業績部門では職務中心的な監督行動が多くみられる一方で、低業績部門では従業員中心的な監督行動が多くみられる。

誤り。逆です。課題志向の方が業績は低く、人間関係志向の方が業績が高く出ました。

選択肢4. オハイオ研究によると、有効なリーダーシップの行動特性を表す次元とは、メンバーが良好な人間関係を構築できる「構造づくり」と、課題達成に向けてメンバーに理解しやすい指示を出す「配慮」の2つである。

誤り。構造づくりは目標達成のためにリーダーと部下の業務を定義づけることです。配慮は人間関係の話ですので、逆になっています。

選択肢5. 状況的リーダーシップ論( SL理論 )によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況要因とは、目標達成に向けたフォロワーの貢献意欲の強さである。

誤り。影響を及ぼすのは、部下の業務に対する成熟度になります。

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03

リーダーシップ論に関する知識を問う問題です。

1.E.P.ホランダー( E.P.Hollander )の特異性-信頼理論によるとリーダーシップの有効性は、リーダーがいかにしてメンバー(フォロワー)から「信頼」を獲得できるかによって決まるとされています。

2.F.E.フィードラー( F.E.Fiedler )の研究によると、どういう条件下なら、どのリーダー行動が有効なのかをLPC尺度という指標を用いて、明らかしようとする理論です。コンティンジェンシー(条件適合)理論とも呼ばれます。

3.リッカートは組織をシステムとして捉え、リーダーシップに関わる管理システムを、権威主義・専制型(システム1)温情・専制型(システム2)参画協調型(システム3)民主主義型(システム4)とを4つに分類し規定した上でこの中で民主主義型のシステム4を採用している経営組織の業績が最も高い、と主張しています。

4.オハイオ研究では、有効なリーダーシップの行動特性を表す次元を「構造作り」と「配慮」の2つであると提唱しています。

したが、正解は、2です。

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04

リーダーシップ理論に関する問題です。

選択肢1. E.P.ホランダー( E.P.Hollander )の特異性-信頼理論によると、リーダーがフォロワーから信頼を得るためには、集団の目的に貢献する有能性と、集団の自由を重んじる開放性を満たす必要がある。

E.P.ホランダー( E.P.Hollander )の特異性-信頼理論によると、リーダーがフォロワーから信頼を得るためには、集団の目的に貢献する有能性と、集団に理解を示す同調性を満たす必要があります。

選択肢2. F.E.フィードラー( F.E.Fiedler )の研究によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況の決定要因とは、①リーダーとメンバーの人間関係、②課業の構造化の度合い、③リーダーの職位に基づくパワーの3要因である。

正解の選択肢となります。

選択肢3. R.リッカート( R.Likert )らによる初期のミシガン研究によると、高業績部門では職務中心的な監督行動が多くみられる一方で、低業績部門では従業員中心的な監督行動が多くみられる。

R.リッカート( R.Likert )らによる初期のミシガン研究によると、従業員志向と生産性志向と名付けられた2つのリーダーシップ行動が見られ、従業員志向のリーダーシップ行動が好ましいとしています

 

選択肢にあるような、「高業績部門」「低業績部門」によってリーダーシップの取り方が変わるのではありません。

選択肢4. オハイオ研究によると、有効なリーダーシップの行動特性を表す次元とは、メンバーが良好な人間関係を構築できる「構造づくり」と、課題達成に向けてメンバーに理解しやすい指示を出す「配慮」の2つである。

オハイオ研究によると、有効なリーダーシップの行動特性を表す次元とは、メンバーが良好な人間関係を構築できる「配慮」と、課題達成に向けてメンバーに理解しやすい指示を出す「構造づくり」の2つです。

選択肢5. 状況的リーダーシップ論( SL理論 )によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況要因とは、目標達成に向けたフォロワーの貢献意欲の強さである。

状況的リーダーシップ論( SL理論 )によると、リーダーシップの有効性に影響を及ぼす状況要因とは、目標達成に向けたフォロワーの成熟度です。

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