中小企業診断士の過去問
令和3年度(2021年)
経営法務 問8

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和3年度(2021年) 問8 (訂正依頼・報告はこちら)

不正競争防止法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 不正競争防止法第2条第1項第1号に規定する、いわゆる周知表示混同惹起行為において、商品の容器は「商品等表示」に含まれる。
  • 不正競争防止法第2条第1項第2号に規定する、いわゆる著名表示冒用行為と認められるためには、他人の商品又は営業と混同を生じさせることが一つの要件となる。
  • 不正競争防止法第2条第1項第4号乃至第10号で保護される営業秘密となるためには、秘密管理性、進歩性、有用性が認められる必要がある。
  • 不正競争防止法第2条第1項第4号乃至第10号で保護される営業秘密は営業上の情報を指し、技術上の情報を含まない。

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この過去問の解説 (3件)

01

まず、不正競争防止法では何が禁じられているのか。法の中で、大きく以下の10項目を不正競争と定義しています。それぞれ簡単に解説します。

周知表示混同惹起行為

 いわゆるバッタもん(偽物)です。他人のものと商品等表示を似せて混同させるものです。

 商品等表示とは、以下のものが該当します(よって1は正しい)。

 ・人の業務に係る氏名、商号、商標、標章

 ・商品の容器・包装

 ・その他の商品又は営業を表示するもの

著名表示冒用行為

 これも偽物ですが、①との大きな違いは全国的にかなり有名であることが条件となります。①では地域的に知られていればいいぐらいの知名度でも認められます。それだけ知名度が高いため、消費者が混同したことまでは求められず、真似をしただけで違反となります。周知表示混同惹起行為は消費者の混同が要件となってきます(よって2は誤り)。

形態模倣商品の提供行為

 商品の形態を模倣する行為です。商品の形態とは「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識できる、商品の外部及び内部の形状並びに形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感」と定義されています。商品のサイクルが短いファッションなどでは意匠権の設定が難しいため、不正競争(登録等不要)として対応していくことができます。

④営業秘密の侵害

 これは営業上の秘密情報を悪用するケースです。最近では回転すしチェーンでの事件がありました。営業秘密には3つの要件があります。

 ・秘密として管理されていること(秘密管理性):セキュリティエリアにあるなどです。

 ・有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性

 ・公然と知られていないこと(非公知性

 よって3,4は誤りです。

⑤限定提供データの不正取得等

 限定提供データを不正手法で取得し、使用、開示する行為です。限定提供データとは、

 ・業として特定の者に提供する情報として電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。次項において同じ。)により、・相当量蓄積され、及び・管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)を言います。

⑥技術的制限手段無効化装置等の提供行為

 ソフトの違法コピーや技術的に制限されているコンテンツを何らかの装置で無効化する行為です。

⑦ドメイン名の不正取得等の行為

 「不正の利益を得る目的」または「他人に損害を加える目的」(図利加害目的)で他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有、又はそのドメイン名を使用する行為です。

⑧誤認惹起行為

 商品・役務又はその広告等に、その原産地、品質・質、内容等について誤認させるような表示をする行為、又はその表示をした商品を譲渡等する行為です。

⑨信用毀損行為

 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為です。

⑩代理人等の商標冒用行為

 パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用等する行為です。

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02

選択肢1は適切です。周知表示混同惹起行為とは、他人の商品等表示として需要者間に広く知られているものと同一又は類 似の表示を使用して、その商品又は営業の出所について混同を生じさせる行為を規制することにより、周知商品等表示に化体された信用を保護し、事業者間の公正な競争を確保することです。商品等表示に商品の容器が含まれます。

選択肢2は不適切です。著名表示冒用行為とは、自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為のことです。たとえ混同を生じなくても著名表示冒用行為と認定されることがあります。

選択肢3は不適切です。営業秘密として保護を受けるためには、秘密管理性、有用性、非公知性のすべてを満たすことが必要です。

選択肢4は不適切です。不正競争防止法の営業秘密には、技術上の情報も含まれます。

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03

不正競争防止法に関する問題です。

 

不正競争防止法は、毎年のように出題される頻出論点です。

本問は基本的な内容が問われており、取りこぼしはできません。

選択肢1. 不正競争防止法第2条第1項第1号に規定する、いわゆる周知表示混同惹起行為において、商品の容器は「商品等表示」に含まれる。

正解の選択肢となります。

選択肢2. 不正競争防止法第2条第1項第2号に規定する、いわゆる著名表示冒用行為と認められるためには、他人の商品又は営業と混同を生じさせることが一つの要件となる。

いわゆる著名表示冒用行為と認められるためには、他人の商品又は営業と混同を生じさせることが要件ではありません

 

著名表示冒用行為には、フリーライド(ただ乗り)、ダイリューション(希釈化)、ポリューション(汚染)が発生すると想定されます。したがって、他人の商品又は営業と混同を生じさせることは必要とされません。

選択肢3. 不正競争防止法第2条第1項第4号乃至第10号で保護される営業秘密となるためには、秘密管理性、進歩性、有用性が認められる必要がある。

営業秘密となるためには、秘密管理性、非公知性、有用性が認められる必要があります。

選択肢4. 不正競争防止法第2条第1項第4号乃至第10号で保護される営業秘密は営業上の情報を指し、技術上の情報を含まない。

営業秘密は営業上の情報を指し、技術上の情報を含みます

まとめ

【補足】

本問で問われている周知表示混同惹起行為、著名表示冒用行為、営業秘密の3要件は、いずれも頻度高く出題されています。必ず押さえておいてください。

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