中小企業診断士の過去問
令和3年度(2021年)
経営法務 問14

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和3年度(2021年) 問14 (訂正依頼・報告はこちら)

特許協力条約( PCT )に基づく国際出願制度に関する以下の文章において、空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

先願主義の下、出願人は一日も早い出願日を確保することを望むため、PCTによる国際出願は有用な制度である。国際的に統一された出願書類を加盟国である自国の特許庁に提出することにより、その国際出願はすべての加盟国において国内出願したのと同様の効果が得られる。例えば、日本の特許庁に対しては日本語又は英語で作成した国際出願願書を1通提出すればよい。
国際出願がされた国内官庁を受理官庁という。受理官庁は一定の要件が受理の時に満たされていることを確認することを条件として、国際出願の受理の日を国際出願日として認める。
各国際出願は国際調査の対象となり、出願人の請求により国際予備審査も行われる。出願人はこれらの結果を利用して、自身の発明の特許性を判断できる。国際出願人は、各国で審査を受けるに際し、( A )。
各国の特許庁は、( B )。
  • A:所定の翻訳文を提出する等の「国内移行手続」を行う必要がある  B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する
  • A:所定の翻訳文を提出する等の「国内移行手続」を行う必要がある  B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断することはできず、国際調査の結果と同じ判断を下す必要がある
  • A:何ら手続きを行う必要はない。国際出願された書類がそのまま受理官庁から各国に送付され、審査が開始されるからである  B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する
  • A:何ら手続きを行う必要はない。国際出願された書類がそのまま受理官庁から各国に送付され、審査が開始されるからである  B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断することはできず、国際調査の結果と同じ判断を下す必要がある

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この過去問の解説 (3件)

01

特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願をPCT出願と言います。

問題に記載の通り、日本国特許庁等の指定官庁に対して出願手続きを行うことにより、条約加盟国全てに同時に出願をしたのと同じ効果が得られるというものです。1つの言語で作成した出願書類を指定特許庁(日本語なら日本など)に提出するだけで出願したことになります。

ただ、これだけでは特許権を取得することはできず、PCT出願を行った後に、特許権の取得を希望する国の国内手続きへ移行し、その国の審査を通過する必要があります。国内手続きの移行期限は、条約加盟国により異なります(優先日から30ヵ月が多い)。移行手続きにおいては、翻訳文の提出、手数料の支払い等を行う必要があります(よって3,4は誤り)。

 PCT出願を行うと、出願した発明と同一又は類似の発明が過去に存在していたか否かを調べる国際調査が行われ、出願した発明に対して進歩性の有無などについて審査官の見解を得ることができます。よって、この段階で特許取得が厳しいか等の判断ができ、移行費用が発生する前に、移行の要否、移行国を選別できるなどのメリットがあります。

ただ、最終的な特許可否の判断は、各指定国の特許法等に従って、各国別に個別に審査が行われ特許付与等の判断がなされます(よって2は誤り)。

以上より、正解は1となります。

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02

特許協力条約(PCT)とは、「国際」特許出願を提出することにより、多くの国々で同時に発明の特許保護を求めることを可能にするものです。

空欄Aについて、国際出願人は特許を得たい国において実体審査を受けるために、優先日から30ヶ月以内にそれらの国へ国内移行手続きを行う必要があります。

空欄Bについて、特許が受けることが出来るかは各国の特許庁に委ねられております。

以上より、選択肢1が適切です。

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03

特許協力条約( PCT )に基づく国際出願制度に関する問題です。

 

与件文中に「国際的に統一された出願書類を加盟国である自国の特許庁に提出することにより、その国際出願はすべての加盟国において国内出願したのと同様の効果が得られる」というPCTの特徴が明記されていますが、青色太字で強調した部分にあるように、PCTはあくまで国際出願を簡素化するだけです。出願後は、本問で問われている空欄A・Bのプロセスを踏まえることになります。

選択肢1. A:所定の翻訳文を提出する等の「国内移行手続」を行う必要がある  B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する

正解の選択肢となります。

選択肢2. A:所定の翻訳文を提出する等の「国内移行手続」を行う必要がある  B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断することはできず、国際調査の結果と同じ判断を下す必要がある

不適切な選択肢です。

選択肢3. A:何ら手続きを行う必要はない。国際出願された書類がそのまま受理官庁から各国に送付され、審査が開始されるからである  B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する

不適切な選択肢です。

選択肢4. A:何ら手続きを行う必要はない。国際出願された書類がそのまま受理官庁から各国に送付され、審査が開始されるからである  B:それぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断することはできず、国際調査の結果と同じ判断を下す必要がある

不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

冒頭の解説の「出願後は、本問で問われている空欄A・Bのプロセスを踏まえることになる」とは、国内移行手続を行う必要があり(空欄A)、各国の特許庁がそれぞれの特許法に基づいて特許権を付与するか否かを判断する(空欄B)ことになり、PCT出願=自動的に特許が認められるわけではないということです。

 

つまり、PCT出願を行なっても必ずしも特許が認められるとは限らないということになりますが、だからといってPCT制度そのものが否定されるわけではありません。日本国内の特許出願においても必ずしも特許が認められるとは限らず、事情は同じです。

 

本来は、各国ごとに個別に特許出願を行なわなければなりませんが、PCTにより国際出願が簡素化されて膨大な時間と労力が節約できる点においてPCTは大きな意義があります。

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