中小企業診断士の過去問
令和3年度(2021年)
経営法務 問19

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和3年度(2021年) 問19 (訂正依頼・報告はこちら)

民法の定める解除に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、「民法の一部を改正する法律」( 平成29年法律第44号 )により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。
  • 契約の性質により、特定の日時に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したときでも、催告をしなければ、契約の解除は認められない。
  • 債権者が履行を催告した時における不履行の程度が軽微といえないのであれば、その後催告期間中に債務者が債務の一部を履行したため、催告期間が経過した時になお残る不履行が軽微である場合でも、契約の解除は認められる。
  • 債務の不履行が債権者のみの責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告したとしても、契約の解除は認められない。
  • 債務の不履行につき、債務者と債権者のいずれにも帰責事由がないときは、債務の全部の履行が不能である場合でも、債権者による契約の解除は認められない。

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この過去問の解説 (3件)

01

基本的に契約は双方の債権・債務を合意の上で確定させる行為であり、簡単に変更することはできません。しかし、どうしても契約を解除する必要性が生じる場合があり、その際の一定のルールが定められています。その一つが問いの「解除」になります。民法では契約を解除できる2つの権利を定めています。

法定解除権:債務不履行があった場合や瑕疵担保責任などの契約責任が発生する場合に発生。契約責任に基づく解除権発生の要件を満たしている場合に限り,解除できる。

約定解除権:当事者間でどのような事由が発生したら解除できるかを定めておき,その事由が発生したら解除できる。

今回の民法の改正内容を見てみます。

・債務者に責任がなくても解除が可能に

これまでは債務者に責任がなければ債務不履行でも解除できませんでしたが、ここが見直されています。

(よって「債務の不履行につき、債務者と債権者のいずれにも帰責事由がないときは、債務の全部の履行が不能である場合でも、債権者による契約の解除は認められない。」は誤り)

一方で債権者に責のある債務不履行では解除できないことも織り込まれました。

(よって「債務の不履行が債権者のみの責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告したとしても、契約の解除は認められない。」は正しい)

・履行の催告の必要な解除、不要な解除が整理された

これまでは不履行の場合に解除をするためには、履行の催告のステップを踏む必要がありました。しかし、結婚式の衣装など、その日を過ぎてしまうと意味のないものに催告も意味がありませんし、債務者が履行を拒否する意思を示し、残りが履行されても意味がない場合や明らかに契約目的を達する履行が望めない場合などは無催告での解除が可能となりました。

(よって「契約の性質により、特定の日時に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したときでも、催告をしなければ、契約の解除は認められない。」は誤り)

一方で債務不履行が軽微な場合は解除できないという内容も改めて織り込まれています。

(よって「債権者が履行を催告した時における不履行の程度が軽微といえないのであれば、その後催告期間中に債務者が債務の一部を履行したため、催告期間が経過した時になお残る不履行が軽微である場合でも、契約の解除は認められる。」は誤り)

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02

正解は「債務の不履行が債権者のみの責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告したとしても、契約の解除は認められない。」です。

選択肢1. 契約の性質により、特定の日時に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したときでも、催告をしなければ、契約の解除は認められない。

誤り。ある時期までに履行がなければ契約の目的が達せられない場合において、履行遅滞があったときは催告によらない解除(無催告解除)ができます。

選択肢2. 債権者が履行を催告した時における不履行の程度が軽微といえないのであれば、その後催告期間中に債務者が債務の一部を履行したため、催告期間が経過した時になお残る不履行が軽微である場合でも、契約の解除は認められる。

誤り。債務不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除することができません。

選択肢3. 債務の不履行が債権者のみの責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告したとしても、契約の解除は認められない。

正しい。

選択肢4. 債務の不履行につき、債務者と債権者のいずれにも帰責事由がないときは、債務の全部の履行が不能である場合でも、債権者による契約の解除は認められない。

誤り。改正民法では、契約の解除について、債務者の帰責事由を不要としています(債務者の故意・過失がなくても、債権者は契約を解除できます)。

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03

民法の定める解除に関する問題です。

 

各選択肢の記述がややこしい上に情報量が多いため、焦ってミスをしてしまう可能性が高いと思われます。

選択肢1. 契約の性質により、特定の日時に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したときでも、催告をしなければ、契約の解除は認められない。

債務者が履行をしないでその時期を経過している場合は、催告することなく契約を解除することができます

選択肢2. 債権者が履行を催告した時における不履行の程度が軽微といえないのであれば、その後催告期間中に債務者が債務の一部を履行したため、催告期間が経過した時になお残る不履行が軽微である場合でも、契約の解除は認められる。

債務者による不履行が軽微である場合は、債権者による契約の解除は認められません

選択肢3. 債務の不履行が債権者のみの責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告したとしても、契約の解除は認められない。

正解の選択肢となります。

選択肢4. 債務の不履行につき、債務者と債権者のいずれにも帰責事由がないときは、債務の全部の履行が不能である場合でも、債権者による契約の解除は認められない。

債務の全部の履行が不能である場合は、債権者による契約の解除は認められます

まとめ

【補足】

この手の問題については、債権者もしくは債務者が契約を解除できない場合、不利益を被るかどうかという観点で対応することが有効です。

 

すなわち、皆さんが債権者もしくは債務者の立場になって考えてみて、契約を解除できなければ不利益を被る設定になっていれば、不適切な選択肢として判断することができます。

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