中小企業診断士の過去問
令和3年度(2021年)
経営法務 問20(1)
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問題
中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和3年度(2021年) 問20(1) (訂正依頼・報告はこちら)
以下の会話は、X株式会社の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
なお、民法については「民法の一部を改正する法律」( 平成29年法律第44号 )により改正された民法が、商法については「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」( 平成29年法律第45号 )により改正された商法がそれぞれ適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。
甲 氏 「弊社は、卸売業者であるY社から、1,000本の腕時計を仕入れたのですが、昨日納品された腕時計の中に、秒針が動かないものがありました。弊社は、秒針が動かない腕時計について、新しい腕時計をY社に納品し直して欲しいと思っているのですが、そのようなことは可能でしょうか。」
あなた 「はい、可能です。ただし、( A )。」
甲 氏 「ありがとうございます。念のため確認しますが、大丈夫だと思います。」
( 数日後 )
甲 氏 「先日おっしゃっていた件、確認した上で問題ありませんでしたので、Y社に秒針が動かない腕時計について、新しい腕時計を納品し直して欲しいと申し入れたところ、Y社からは、修理させて欲しいという申し出がありました。そもそもこのようなことは可能なのでしょうか。」
あなた 「はい、可能です。ただし、( B )。」
甲 氏 「なるほど、よく分かりました。」
( 10か月後 )
甲 氏 「10か月ほど前に相談させていただいた卸売業者であるY社から納品された腕時計の件で、先週、10か月前に納品された腕時計の一部に別の不良が見つかりました。店頭で販売した腕時計について、購入者の方から、全く動かなくなるというクレームがありまして、Y社に対して、何らかの請求はできませんでしょうか。」
あなた 「( C )ですので、商法第526条が直接適用されて、買主である御社に目的物の検査及び通知義務が課されます。そのため、腕時計が動かなくなるという不良が直ちに発見できないものだったとした場合、( D )。いずれにせよ、今後は契約書を専門家に見てもらった方がいいと思いますので、よろしければ私の知り合いの弁護士を紹介しますよ。」
甲 氏 「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
なお、民法については「民法の一部を改正する法律」( 平成29年法律第44号 )により改正された民法が、商法については「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」( 平成29年法律第45号 )により改正された商法がそれぞれ適用されるものとし、附則に定める経過措置及び特約は考慮しないものとする。
甲 氏 「弊社は、卸売業者であるY社から、1,000本の腕時計を仕入れたのですが、昨日納品された腕時計の中に、秒針が動かないものがありました。弊社は、秒針が動かない腕時計について、新しい腕時計をY社に納品し直して欲しいと思っているのですが、そのようなことは可能でしょうか。」
あなた 「はい、可能です。ただし、( A )。」
甲 氏 「ありがとうございます。念のため確認しますが、大丈夫だと思います。」
( 数日後 )
甲 氏 「先日おっしゃっていた件、確認した上で問題ありませんでしたので、Y社に秒針が動かない腕時計について、新しい腕時計を納品し直して欲しいと申し入れたところ、Y社からは、修理させて欲しいという申し出がありました。そもそもこのようなことは可能なのでしょうか。」
あなた 「はい、可能です。ただし、( B )。」
甲 氏 「なるほど、よく分かりました。」
( 10か月後 )
甲 氏 「10か月ほど前に相談させていただいた卸売業者であるY社から納品された腕時計の件で、先週、10か月前に納品された腕時計の一部に別の不良が見つかりました。店頭で販売した腕時計について、購入者の方から、全く動かなくなるというクレームがありまして、Y社に対して、何らかの請求はできませんでしょうか。」
あなた 「( C )ですので、商法第526条が直接適用されて、買主である御社に目的物の検査及び通知義務が課されます。そのため、腕時計が動かなくなるという不良が直ちに発見できないものだったとした場合、( D )。いずれにせよ、今後は契約書を専門家に見てもらった方がいいと思いますので、よろしければ私の知り合いの弁護士を紹介しますよ。」
甲 氏 「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
会話の中の空欄AとBに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
- A:秒針が動かないことが買主である御社の責めに帰すべき事由によるものである場合は、できません B:修理という方法が買主である御社に不相当な負担を課するものである場合は、できません
- A:秒針が動かないことが買主である御社の責めに帰すべき事由によるものである場合は、できません B:秒針が動かないことが売主であるY社の責めに帰すべき事由によるものである場合は、できません
- A:秒針が動かないことが買主である御社の故意又は重過失によるものである場合は、できません。しかし、御社の軽過失によるものである場合は、できます B:修理という方法が買主である御社に不相当な負担を課するものである場合は、できません
- A:秒針が動かないことが買主である御社の故意又は重過失によるものである場合は、できません。しかし、御社の軽過失によるものである場合は、できます B:秒針が動かないことが売主であるY社の責めに帰すべき事由によるものである場合は、できません
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この過去問の解説 (3件)
01
当設問は仕入れにおいて発生する不良品等リスクへの対応についてのやり取りです。
民法において、契約不適合責任というものがあります。これは民法の改正でもともとあった瑕疵担保責任の概念が変更したものです。
瑕疵担保責任では売主に隠れた瑕疵がある場合に担保責任を負うとなっていたものを、契約不適合責任では、契約に沿った品質、数量等に不適合の場合は、売主の責任であることを明確に示したものと言えます。
では、この契約不適合責任を追及するために買主にどういった権利が与えられたのかがポイントになります。
・追完請求権:不完全なものを完全にしてくれという権利です。数量が不足している場合は不足分を請求でき、壊れている場合は新しいものを要求するか、修理を売主に迫ることができます。ただ、この場合、買主に不相応な負担を強いらないのであれば、別の方法で追完することも認められています。一方、不完全が買主の帰責事由によるものであれば、追完請求権は認められません(よってAが故意、重過失となっている3,4は誤り、BがY社の帰責ではできないとしている2,4は誤り)。
ここで少し、帰責と故意、重過失の違いについて整理します。特に帰責は責めに帰すべき理由のことで、故意、過失とほぼ同義ととらえて構いません。重過失はほぼわざとものを壊すぐらいの理由になります。よって、時計を運んでいるときに落として壊れた場合は過失ですが、壁に投げて壊れたでは重過失になります。ここでは過失でも当然責任が問われますので、ある意味売主保護の内容になります。
その他与えられている権利として、
・代金減額請求権:その名の通り減額を求めるものです。
・法廷解除権:解除する権利です。
・損害賠償請求権:不完全な場合に被った損害を賠償請求できます。これは今回の民法改正で明確になりました。従来は瑕疵によって契約の目的が達せられなかった場合に限定されていましたが解釈が広くなっています。
以上より、正解は1となります。
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02
民法562条には
①引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、飼い主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
②前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
とあります。
以上より、1.が正解です。
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03
契約不適合責任に関する問題です。
空欄AとBでは、Bの方が対応しやすいと思われます。
【空欄B】
「修理という方法が買主である御社に不相当な負担を課するものである場合は、できません」
「秒針が動かないことが売主であるY社の責めに帰すべき事由によるものである場合は、できません」の2つが問われていますが、後者の記述が明らかに不適切です。
Y社は秒針が動かない腕時計を引き渡してしまっているため、秒針が動く代わりの腕時計を引き渡すか、秒針が動かない腕時計を秒針が動く腕時計に修理して引き渡す必要があります。
【空欄A】
空欄B同様に2つの記述がありますが、いずれも「買主である御社」が主語になっています。つまり売主であるY社のことは一切問われていないため、Y社には責任がないという前提です。
「御社(X社)の軽過失によるものである場合は、できます」という記述についてですが、軽過失=過失と読み換えて支障ありません。過失とは、人が通常行うべき注意義務を多少なりとも欠くことを意味します。
ここでの注意義務とは、時計が正常に作動するかどうかを確認(検品)することであると想定されますが、時計が正常に作動するかどうかを確認するという注意義務を多少なりとも欠いていても、再納品を求めることが「できます」というのは不適切であると判断することができます。
正解の選択肢となります。
不適切な選択肢となります。
不適切な選択肢となります。
不適切な選択肢となります。
【補足】
空欄Bについて、X社に不相当な負担を課さないものである場合は、Y社はX社が求める方法とは異なる修理を選択することができます。
空欄A・BとC・Dで問題が分けられていますが、本問は空欄C・Dと比較すると対応しやすいです。
空欄C・Dは正答できなくても仕方がない内容であるため、代わりに本問では正答して2問中1問は得点したいところです。
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