中小企業診断士の過去問
令和3年度(2021年)
経営法務 問18(2)

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和3年度(2021年) 問18(2) (訂正依頼・報告はこちら)

以下の会話は、X株式会社の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。なお、「民法の一部を改正する法律」( 平成29年法律第44号 )により改正された民法が適用されるものとし、附則に定める経過措置は考慮しないものとする。

甲 氏  「弊社の製造するタオルにつき、卸売業者であるY社との間で売買契約を締結しようと考えているのですが、Y社の資力に不安があり、何かあったときに売掛金を回収できるようにしておきたいです。とりあえずY社の代表取締役の乙氏に連帯保証人となってもらうことを考えていますが、他に何か良い手段はありますか。」
あなた  「例えば、Y社の第三者に対する複数の債権に対し、まとめて担保を設定する集合債権譲渡担保というものがあります。これは、担保目的で集合債権譲渡契約を締結するものです。そして、( A )。」
甲 氏  「そういった制度があるのですね。Y社の第三者に対する売掛金債権を対象とした場合、預金債権のように譲渡が禁止されている売掛金債権であっても、何かあったときに、当該第三者に対する請求ができるのでしょうか。」
あなた  「譲渡が禁止されている売掛金債権については、当該第三者が債務を履行しない場合において、御社が当該第三者に対し、相当の期間を定めてY社への履行の催告をし、その期間内に履行がないとき等は除き、( B )。」
甲 氏  「なるほど。他には何か良い手段はありますか。Y社と何らかの合意をしない限り、担保は成立しないのでしょうか。」
あなた  「Y社と合意をしなかったとしても、御社がY社にタオルを引き渡し、所有権も移転した場合において、当該タオルに先取特権という権利が成立し、当該タオルを競売することができます。」
甲 氏  「当該タオルがY社から小売業者に売られてしまった場合には、どうしようもないのでしょうか。」
あなた  「( C )。なお、( D )。」
甲 氏  「ありがとうございます。どうすべきか難しいですね。」
あなた  「私の知り合いの弁護士を紹介しますので、一度相談してみてはいかがでしょうか。」
甲 氏  「ぜひよろしくお願いします。」

会話の中の空欄CとDに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
  • C:小売業者に売られた当該タオルの代金債権を差し押さえることができます  D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えがなくとも、支払いの後に、御社又は他の一般債権者による差押えがあれば可能です
  • C:小売業者に売られた当該タオルの代金債権を差し押さえることができます  D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えが必要になります
  • C:小売業者に売られた当該タオルを競売することができます  D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えがなくとも、支払いの後に、御社又は他の一般債権者による差押えがあれば可能です
  • C:小売業者に売られた当該タオルを競売することができます  D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えが必要になります

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この過去問の解説 (3件)

01

当設問はデフォルトリスクが発生した際の考え方、対応方法のやり取りです。

まず、先取特権についてです。原則、債務者が破産した場合、債権者平等の原則により、資産を平等に分けるというのが法的な考えになります。ただ、債権者の債権の状況によっては不公平があるため、特定の債権者に一定の債権を優先的に回収できる権利を与えている場合があります。これが先取特権です。

先取特権は民法上、どういった債権で発生するかが定められています。不動産の賃貸借、旅館の宿泊なども適用されます。そして動産の売買にも適用されますので、商品の売買については適用されるとお考えいただいていいかと思います。

問題のケースでは、タオルを販売し、代金が回収できなかった場合に先取特権によりそのタオルを回収できることを中小企業診断士が伝えています。そしてクライアントがそのタオルが先に売られてしまった場合どうするかについて聞いています。

もし先取特権の対象物が先に売買されてしまった場合に債権者が取り返せないとすると、債務者は何が何でも売り飛ばそうとします。そういったことを防ぐために物上代位という規定があります。

これは、先取特権の目的物がお金や別の価値に変わったとしても、その効力が及ぶというものです。ただし、この場合売却した動産にあった先取特権を行使することはできません(よってCでタオルに効力が及んでいる3,4は誤り)。

Dでは差し押さえのタイミングが聞かれています。物上代位は民法304条で定められていますが、次のただし書きがあります。「ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。」つまり、動産が引き渡され、代金が支払われる前もしくは、動産の引渡し前に差し押さえないと、物上代位権を行使できなくなるというものです。よって、支払い前に差し押さえする必要があるとされている2が正解になります。

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02

先取特権は、法律の定める一定の債権を有する者(先取特権者)が、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる権利です。民法上、先取特権にも物上代位は認められます。

1.代金の支払いの前に差し押さえが必要です。

2.正しい。

3.競売をすることはできません。代金の支払いの前に差し押さえが必要です。

4.競売をすることはできません。

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03

先取特権(空欄C)と物上代位(空欄D)の知識を問う問題です。

 

全ての選択肢を見ると、空欄Cでは「差し押さえ」もしくは「競売」の違いが問われていますが、空欄Dを見れば答えが書かれています。ここで確実に、選択肢を2つに絞り込みたいところです。

 

空欄Dは、その直前に甲氏が「当該タオルがY社から小売業者に売られてしまった場合」と話しています。タオルが売られた後に代金が支払われますが、その支払いの「前」もしくは「後」のいずれが適切なタイミングなのかが問われています。

選択肢1. C:小売業者に売られた当該タオルの代金債権を差し押さえることができます  D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えがなくとも、支払いの後に、御社又は他の一般債権者による差押えがあれば可能です

不適切な選択肢です。

選択肢2. C:小売業者に売られた当該タオルの代金債権を差し押さえることができます  D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えが必要になります

正解の選択肢となります。

選択肢3. C:小売業者に売られた当該タオルを競売することができます  D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えがなくとも、支払いの後に、御社又は他の一般債権者による差押えがあれば可能です

不適切な選択肢です。

選択肢4. C:小売業者に売られた当該タオルを競売することができます  D:Y社への当該タオルの代金の支払いの前に、御社又は他の一般債権者による差押えが必要になります

不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

空欄A・BとC・Dで問題が分けられていますが、本問は空欄A・Bと比較すると対応しやすいです。

空欄A・Bは正答できなくても仕方がない内容ですが、代わりに本問では正答して2問中1問は得点したいところです。

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