中小企業診断士の過去問
令和5年度(2023年)
企業経営理論 問31

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 企業経営理論 令和5年度(2023年) 問31 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

食品メーカーA社では、これまで①卸売業者や小売業者を介した間接流通チャネルと電子商取引を用いてきた。近年は多くの食品メーカーが②D2Cに乗り出しており、この動きにどのように対応するかも1つの課題であると考えている。

文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ある業界において多くのメーカーが零細である場合、卸売業者の役割は小さいため、その業界の流通チャネル上に存在する卸売業者の数も少なくなる傾向がある。
  • ある業界において中小小売業者が多いほど、これら中小小売業者とメーカーをつなぐ卸売業者が多段階化し、その数も多くなる傾向がある。
  • 卸売は卸売業者だけが行うものではなく、小売業者によって行われることもある。しかしメーカーが販社を作って行う小売業者向けの販売は、卸売ではない。
  • 小売とは最終消費者に対して商品を再販売する商業活動であるのに対して、卸売とは最終消費者だけでなく他の卸売業者や小売業者、産業用使用者に対して商品を再販売する商業活動である。
  • 大規模に成長した小売業者との取引を確保・拡大するために、近年の卸売業者に求められている方策の1つがロジスティックス機能の強化である。この機能は一般にサードパーティ・ロジスティックスと呼ばれ、卸売業者の生き残りをかけた重要な戦略となっている。

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この過去問の解説 (3件)

01

卸売(業者)に関する問題です。

選択肢1. ある業界において多くのメーカーが零細である場合、卸売業者の役割は小さいため、その業界の流通チャネル上に存在する卸売業者の数も少なくなる傾向がある。

ある業界において多くのメーカーが零細である場合、卸売業者の役割は大きいため、その業界の流通チャネル上に存在する卸売業者の数も大きくなる傾向があります。

多くのメーカーが零細である場合、販売先を見つける営業力に乏しいと考えられるため、卸売業者がメーカーに代わって販売機能を強化する必要があるためです。

選択肢2. ある業界において中小小売業者が多いほど、これら中小小売業者とメーカーをつなぐ卸売業者が多段階化し、その数も多くなる傾向がある。

正解の選択肢となります。

選択肢3. 卸売は卸売業者だけが行うものではなく、小売業者によって行われることもある。しかしメーカーが販社を作って行う小売業者向けの販売は、卸売ではない。

メーカーが作った販社であっても、小売業者に向けて販売するため卸売になります

選択肢4. 小売とは最終消費者に対して商品を再販売する商業活動であるのに対して、卸売とは最終消費者だけでなく他の卸売業者や小売業者、産業用使用者に対して商品を再販売する商業活動である。

小売とは最終消費者に対して商品を再販売する商業活動であるのに対して、卸売とは最終消費者以外の他の卸売業者や小売業者、産業用使用者に対して商品を再販売する商業活動です。

選択肢5. 大規模に成長した小売業者との取引を確保・拡大するために、近年の卸売業者に求められている方策の1つがロジスティックス機能の強化である。この機能は一般にサードパーティ・ロジスティックスと呼ばれ、卸売業者の生き残りをかけた重要な戦略となっている。

ロジスティックス機能を、一般にサードパーティ・ロジスティックス(3PL)と呼ぶわけではありません

3PLとは、物流業者や倉庫業者が荷主企業に対して効率的な物流戦略を立案・提案し、荷主企業に代わって物流センターを主体的に運営することをいいます。

物流業者や倉庫業者が物流センターを自社保有する場合はアセット型、自社保有せず荷主企業の物流センターを委託運営する場合はノンアセット型と呼ばれます。

ロジスティックス機能は、3PLを含めた包括的な物流機能のことです。

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02

卸売に関する問題です。

選択肢1. ある業界において多くのメーカーが零細である場合、卸売業者の役割は小さいため、その業界の流通チャネル上に存在する卸売業者の数も少なくなる傾向がある。

不適切です。

多くのメーカーが零細の場合、販売先が限らていることや、人的資源が限られていることから、卸売業者を活用することが考えられます。

 

選択肢2. ある業界において中小小売業者が多いほど、これら中小小売業者とメーカーをつなぐ卸売業者が多段階化し、その数も多くなる傾向がある。

適切です。

選択肢3. 卸売は卸売業者だけが行うものではなく、小売業者によって行われることもある。しかしメーカーが販社を作って行う小売業者向けの販売は、卸売ではない。

不適切です。

メーカーが販社を作って行う小売業者向けの販売も卸売です。

選択肢4. 小売とは最終消費者に対して商品を再販売する商業活動であるのに対して、卸売とは最終消費者だけでなく他の卸売業者や小売業者、産業用使用者に対して商品を再販売する商業活動である。

不適切です。

最終消費者に販売することは小売りです。

選択肢5. 大規模に成長した小売業者との取引を確保・拡大するために、近年の卸売業者に求められている方策の1つがロジスティックス機能の強化である。この機能は一般にサードパーティ・ロジスティックスと呼ばれ、卸売業者の生き残りをかけた重要な戦略となっている。

不適切です。

ロジスティックス機能のことをサードパーティ・ロジスティックスと呼ぶわけではありません。

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03

正解は、「ある業界において中小小売業者が多いほど、これら中小小売業者とメーカーをつなぐ卸売業者が多段階化し、その数も多くなる傾向がある。」です。

 

【基礎知識】

流通チャネル戦略の基本的な問題です。

 

マーケティングの4Pの1つ、Placeが流通チャネル戦略となります。

メーカーから消費者までどのように商品を届けるかを考えることが流通チャネル戦略です。

余力があればメーカーから直接消費者に製品を届けることが、ブランド構築、価格など色んな面からメリットがありますが、そのためには販売拠点を設けたり、販売促進をしたりと多額のコストがかかってしまいます。一部の大手メーカーでは消費者の直接取引を行うケースもありますが、原則は卸、小売りを通じての販売がメインとなってきます。

選択肢1. ある業界において多くのメーカーが零細である場合、卸売業者の役割は小さいため、その業界の流通チャネル上に存在する卸売業者の数も少なくなる傾向がある。

誤り。メーカーが零細であると、消費者まで自社で届ける余力がないため、卸売業の必要性は高くなります。

選択肢2. ある業界において中小小売業者が多いほど、これら中小小売業者とメーカーをつなぐ卸売業者が多段階化し、その数も多くなる傾向がある。

正しい。小売りが小規模になると、より多くの小売りをカバーすることが必要になるため、その前段階の卸も多段階化や数が増える傾向にあります。

選択肢3. 卸売は卸売業者だけが行うものではなく、小売業者によって行われることもある。しかしメーカーが販社を作って行う小売業者向けの販売は、卸売ではない。

誤り。メーカーが垂直統合し、卸の機能を担う場合は卸となります。

選択肢4. 小売とは最終消費者に対して商品を再販売する商業活動であるのに対して、卸売とは最終消費者だけでなく他の卸売業者や小売業者、産業用使用者に対して商品を再販売する商業活動である。

誤り。消費者を対象とすることを小売といい、消費者以外を対象とすることを卸売と言います。

選択肢5. 大規模に成長した小売業者との取引を確保・拡大するために、近年の卸売業者に求められている方策の1つがロジスティックス機能の強化である。この機能は一般にサードパーティ・ロジスティックスと呼ばれ、卸売業者の生き残りをかけた重要な戦略となっている。

誤り。サードパーティロジスティクスとは専門性の高い第三者企業(サードパーティと言います)に対し、包括的に物流機能を委託することを言います。ネットの進展等で卸売業の持つ意味合いが薄れつつありますが、サードパーティロジスティクスは第三者の取り組みであり、卸売業の戦略とは言えません。

参考になった数3