中小企業診断士の過去問
令和5年度(2023年)
経営法務 問10

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和5年度(2023年) 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

民事再生手続における双務契約の取り扱いに関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。
  • 再生債務者に対して売買契約に基づき継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、再生手続開始決定の申立て前の給付に係る再生債権について、弁済がないことを理由として、再生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。
  • 再生手続開始前に再生債務者の債務不履行により解除権が発生していたとしても、相手方は、再生手続開始後は当該契約を解除することができない。
  • 注文者につき再生手続開始決定があった場合、請負人は、再生手続開始決定があったことを理由に当該請負契約を解除することができる。
  • 賃貸人につき再生手続開始決定があった場合、賃借人が対抗要件を具備していたとしても、賃貸人は、双方未履行の双務契約であることを理由に当該賃貸借契約を解除することができる。

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この過去問の解説 (2件)

01

民事再生手続における双務契約の取り扱いに関する問題です。

本問は、各選択肢の記述を素直に解釈すれば、消去法により正答することは可能です。

(各選択肢の記述が難解であるため、知識があると却って悩んでしまう可能性があります)

 

選択肢1. 再生債務者に対して売買契約に基づき継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、再生手続開始決定の申立て前の給付に係る再生債権について、弁済がないことを理由として、再生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。

正解の選択肢となります。

 

本選択肢は、他の選択肢と比較して記述内容に違和感がなく、その結果、消去法で正解と判断できます。

選択肢2. 再生手続開始前に再生債務者の債務不履行により解除権が発生していたとしても、相手方は、再生手続開始後は当該契約を解除することができない。

再生手続開始前に再生債務者の債務不履行により解除権が発生しているため、相手方は、再生手続開始後は当該契約を解除することができます

 

「再生債務者の債務不履行」とは、再生債務者に落ち度がある(債務を履行していない)ということであり、相手方には契約解除できる理由があります。

選択肢3. 注文者につき再生手続開始決定があった場合、請負人は、再生手続開始決定があったことを理由に当該請負契約を解除することができる。

注文者につき破産手続開始決定があった場合、請負人は、破産手続開始決定があったことを理由に当該請負契約を解除することができます。

 

補足ですが、仕事を完成させた後は、請負人は契約を解除できません。

(ただし、今回においては、そこまで理解している必要はありません)

選択肢4. 賃貸人につき再生手続開始決定があった場合、賃借人が対抗要件を具備していたとしても、賃貸人は、双方未履行の双務契約であることを理由に当該賃貸借契約を解除することができる。

賃貸人につき再生手続開始決定があった場合、賃借人が対抗要件を具備している場合は、賃貸人は、双方未履行の双務契約であることを理由に当該賃貸借契約を解除することができません

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02

まず、双務契約とは当事者の双方が相手方に対して、債務(義務)を負う契約です。

わかりやすいものでは売買契約があります。

 

民事再生手続きにおいて双務契約の取り扱いは以下のように取り扱います。

双方未履行の場合は、再生債務者等は契約を解除するか、解除権を行使せずに履行を求めるかを選択できます。

選択肢1. 再生債務者に対して売買契約に基づき継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、再生手続開始決定の申立て前の給付に係る再生債権について、弁済がないことを理由として、再生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。

民事再生手続きにおいて、選択肢のような場合は再生債務者の再生を阻害しないため、弁済がないことを理由として、再生手続開始後は、その義務の履行を拒むことができないとされています。

本選択肢が正解です。

選択肢2. 再生手続開始前に再生債務者の債務不履行により解除権が発生していたとしても、相手方は、再生手続開始後は当該契約を解除することができない。

再生手続開始前であれば、相手方は当該契約を解除できます

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢3. 注文者につき再生手続開始決定があった場合、請負人は、再生手続開始決定があったことを理由に当該請負契約を解除することができる。

注文者につき再生手続開始決定があったことを理由に、請負人に解除権が発生するわけではありません

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢4. 賃貸人につき再生手続開始決定があった場合、賃借人が対抗要件を具備していたとしても、賃貸人は、双方未履行の双務契約であることを理由に当該賃貸借契約を解除することができる。

賃借人が対抗要件を具備していれば、当該賃貸借契約を解除できます

そのため本選択肢は不正解です。

まとめ

細かい論点を問う問題でしたが、民事再生手続きは事業を維持しながら、その事業の再生を図るという主旨の制度であることを念頭において選択肢を吟味すれば正解を絞り込むことは可能だった思います。

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