中小企業診断士の過去問
令和5年度(2023年)
経営法務 問25
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問題
中小企業診断士試験 第1次試験 経営法務 令和5年度(2023年) 問25 (訂正依頼・報告はこちら)
相殺に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。
- 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前から有していた差押債務者に対する債権を自働債権とする相殺をもって差押債権者に対抗することができない。
- 相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
- 不法行為から生じた債権を自働債権として相殺することはできない。
- 弁済期が到来していない債権の債務者は、その債権を受働債権として相殺することができない。
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この過去問の解説 (2件)
01
相殺に関する問題です。
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え前から有していた差押債務者に対する債権を自働債権とする相殺をもって差押債権者に対抗することができます。
正解の選択肢となります。
不法行為から生じた債権を自働債権として相殺することはできます。
本選択肢は、よく引っ掛け問題として出題されます。
「不法行為」とあるため相殺することができないというイメージを持ってしまいがちですが、不法行為から生じた債権を受働債権として相殺することはできないものの、自働債権として相殺することはできます。
弁済期が到来していない債権の債務者は、自働債権の弁済期が到来していれば、その債権を受働債権として相殺することができます。
【補足】
本問は、不適切な選択肢の内容がややこしいですが、正解の選択肢をそのまま覚えていれば、不適切な選択肢の内容に惑わされることなく正解することができます。
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02
正解は、「相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。」です。
【基礎知識】
相殺の問題です。2018年の民法改正の内容が問われています。
相殺とは、債権、債務を双方が持ち合っている場合にいわゆる“帳消し”にすることです。
要件は以下の通りです。これらの要件を満たすことを相殺適状と言います。
① 2人の者がお互いに同種の目的の債務を負担していること
② 自働債権の債務の弁済期が到来していること
③ 債務の性質が相殺を許すものであること
④ 当事者間に相殺禁止特約がないこと
⑤ 不法行為による債権を受働債権とするものでないこと
ここで相殺において意思表示を行う側の債権を自働債権、される側の債権を受働債権と言います。
〇相殺関連の2018年民法改正
1.相殺禁止の意思表示
当事者が相殺に反対の意思表示を行うと相殺できません(相殺の実施に同意は不要です)が、旧法では知らずに債権を引き受けた善意の第三者などには対抗できませんでした。ただ、なんでも善意であれば対抗できないということでは不合理なケースもありました。よって誰でも知っているようなことを知らないという場合は保護しない、善意の無重過失を要求する内容に変更されました。
2.不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止
基本的に不法行為等で生じた債権については相殺できませんでした。例えば借金を返さないからといって債権者が自動車で債務者を引くような不法行為から保護するためです。これまでは不法行為すべてについて相殺を認めていませんでしたが、善意の事故などもあることから、改正で以下の要件に変更されました。
① 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
② 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務
つまり、悪意かつ生命、身体の侵害という条件が付いています。
3.差押え後に取得した差押え前に生じた原因による債権との相殺許容
差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができます。
誤り。改正内容の3になります。差押え前に生じた原因による債権との相殺は可能です。
正しい。相殺の遡及効といいます。効力は相殺適状になった時期に遡ります。
誤り。不法行為から生じた債権を受働債権として相殺することが禁止されています。
誤り。受働債権の債務は期間の利益を放棄することで相殺することができます。自働債権はできません。
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