中小企業診断士の過去問
令和5年度 再試験(2023年)
経済学・経済政策 問8

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問題

中小企業診断士試験 第1次試験 経済学・経済政策 令和5年度 再試験(2023年) 問8 (訂正依頼・報告はこちら)

貨幣理論および金融政策に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ケインズの貨幣需要理論では、利子率の上昇と所得の増加に応じて貨幣需要が増加することになる。
  • 現金・預金比率が上昇すると、貨幣乗数(信用乗数)は低下する。
  • 古典派の貨幣数量説では、名目貨幣供給が増加すると、物価もそれと同率で上昇し、名目GDPが一定に維持されるという「貨幣の中立性」が成立する。
  • 裁量よりルールを重視するマネタリストは、名目貨幣供給の増加率と物価上昇率をほぼ同じにすることで経済は安定するというk %ルールを提唱する。
  • 中央銀行が売りオペを行うと、市中銀行が中央銀行に保有する当座預金の残高が増加して、ベースマネーの増加につながる。

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この過去問の解説 (1件)

01

貨幣理論や金融政策に関する正誤を判断するものです。ケインズ理論、古典派理論、マネタリストの考え方、中央銀行のオペレーションの基本的な仕組みを理解することがポイントです。

選択肢1. ケインズの貨幣需要理論では、利子率の上昇と所得の増加に応じて貨幣需要が増加することになる。

これは誤りです。

ケインズの貨幣需要理論では、貨幣需要の一部である投機的需要は、利子率が低下したときに増加します。利子率が上昇すると貨幣の保有が減少し、債券などへの投資が増えるため、貨幣需要は減少します。所得の増加が取引需要を増やすのは正しいですが、利子率の上昇が貨幣需要を増加させるという記述は誤りです。

選択肢2. 現金・預金比率が上昇すると、貨幣乗数(信用乗数)は低下する。

これは正しいです。

貨幣乗数は、銀行が預金を元に信用創造を通じてどれだけ貨幣供給を増やせるかを示す指標です。現金・預金比率が上昇する、つまり人々がより多くの現金を保有し、預金の割合が減ると、銀行が貸出に使える資金が減り、貨幣乗数は低下します。これにより、銀行が創造する貨幣供給全体も減少する傾向にあります。

選択肢3. 古典派の貨幣数量説では、名目貨幣供給が増加すると、物価もそれと同率で上昇し、名目GDPが一定に維持されるという「貨幣の中立性」が成立する。

これは誤りです。

古典派の貨幣数量説では、貨幣供給の増加により物価が上昇するという考え方は正しいですが、名目GDPが一定に維持されるという記述が誤りです。名目GDPは、物価上昇分を反映して増加するため、名目GDPが一定という記述は適切ではありません。正確には、貨幣の中立性は「貨幣供給の変化が実質経済に影響を与えない」という考え方です。

選択肢4. 裁量よりルールを重視するマネタリストは、名目貨幣供給の増加率と物価上昇率をほぼ同じにすることで経済は安定するというk %ルールを提唱する。

これは誤りです。

マネタリストは、貨幣供給を安定的に管理することを重視し、政府や中央銀行が景気に応じて政策を裁量的に変更するよりも、一定のルールに従って貨幣供給を行うことを提唱します。しかし、「名目貨幣供給の増加率と物価上昇率が必ず同じになる」というルールを提唱しているわけではありません。

選択肢5. 中央銀行が売りオペを行うと、市中銀行が中央銀行に保有する当座預金の残高が増加して、ベースマネーの増加につながる。

これは誤りです。

売りオペ(売りオペレーション)は、中央銀行が市中銀行に国債などを売却して市場から資金を吸収する操作です。これにより、ベースマネー(マネタリーベース)は減少します。ベースマネーの増加にはつながらず、逆に減少させる効果があります。ベースマネーが増加するのは、中央銀行が買いオペを行った場合です。

まとめ

貨幣供給と貨幣需要に関する理論、特にケインズ理論や古典派理論、マネタリストの考え方、中央銀行のオペレーションの仕組みについて理解することが重要です。

ケインズの貨幣需要理論:利子率が低下すると貨幣需要が増加し、特に投機的需要は利子率の低下に敏感に反応します。

貨幣乗数:現金・預金比率が上昇すると、銀行が信用創造を通じて供給できる貨幣の量が減少し、貨幣乗数は低下します。

古典派の貨幣数量説:貨幣供給の増加は物価上昇を引き起こすが、名目GDPが一定に維持されるわけではなく、物価の変動に応じて名目GDPも変動します。

売りオペと買いオペ:売りオペはベースマネーの減少、買いオペはベースマネーの増加につながります。

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