中小企業診断士 過去問
令和5年度 再試験(2023年)
問10 (経済学・経済政策 問9(1))

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問題

中小企業診断士試験 令和5年度 再試験(2023年) 問10(経済学・経済政策 問9(1)) (訂正依頼・報告はこちら)

小国、完全資本移動、静学的な為替レート予想、資産効果の捨象を仮定したマンデル=フレミング・モデルに基づき、マクロ経済政策(財政・金融政策)の効果を考える。
下記の設問に答えよ。

変動為替レート制下における政府支出拡大の効果に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

a  為替レートは増価する。
b  純輸出は減少する。
c  投資支出は減少する。
d  消費支出は減少する。

  • a:正  b:正  c:正  d:誤
  • a:正  b:正  c:誤  d:正
  • a:正  b:正  c:誤  d:誤
  • a:誤  b:誤  c:正  d:正
  • a:誤  b:誤  c:正  d:誤

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この過去問の解説 (2件)

01

マクロ経済学のマンデル=フレミングモデル(Mundell-Fleming model)に基づいて、政府支出の増加や貨幣供給の増加が、為替レート、輸出、投資、消費にどのような影響を与えるかを考察するものです。このモデルは、オープンエコノミーにおける短期的な経済政策の効果を分析し、特に柔軟な為替相場(フロート制)の下で、財政政策や金融政策の効果がどのように現れるかを理解するために重要です。

a. 為替レートが上昇する(通貨が高くなる、=通貨の価値が上がる)

政府支出の増加により、総需要が拡大し、金利が上昇します。高金利は海外投資家を引きつけ、結果として自国通貨が買われ、為替レートが上昇(通貨の価値が高くなる)します。これは正しい記述です。

b. 純輸出が減少する

為替レートが上昇すると、自国の輸出品が外国にとって高価になり、輸入品が安くなるため、輸出が減少し、輸入が増加します。その結果、純輸出が減少します。これも正しい記述です。

c. 投資支出が減少する

投資支出が減少するという記述は誤りです。

d. 消費支出が減少する

変動相場制で完全資本移動という前提では、政府支出を増やしても、消費は最終的に変化しません。通貨が高くなって純輸出が減り、国全体の所得が元の水準に戻るためです。したがって、消費支出が減少するという記述は誤りです。

選択肢1. a:正  b:正  c:正  d:誤

不適切な選択肢です。

選択肢2. a:正  b:正  c:誤  d:正

不適切な選択肢です。

選択肢3. a:正  b:正  c:誤  d:誤

適切な選択肢です。

選択肢4. a:誤  b:誤  c:正  d:正

不適切な選択肢です。

選択肢5. a:誤  b:誤  c:正  d:誤

不適切な選択肢です。

まとめ

マンデル=フレミングモデルは、開かれた経済における短期的な財政政策と金融政策の効果を分析するために用いられます。

政府支出の増加は、金利の上昇を引き起こし、為替レートを上昇させ、純輸出と投資を減少させます。

ただし、変動相場制で資本移動が自由な場合は金利はほぼ変わらず、投資は減少しません

そのときは通貨高により純輸出のみが減少します。

変動相場制・完全資本移動の下で貨幣供給を増やすと、金利は最終的に不変、通貨は減価し、純輸出と産出が増えます。投資は基本不変で、消費は所得増に伴い増加します。

柔軟な為替相場制の下では、財政政策は効果が限定される一方、金融政策の効果は大きくなります。

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02

マンデル=フレミング・モデルに関する問題です。「完全資本移動」「変動為替レート」という前提条件を押さえておいてください。

(他の前提条件については、本問では無視してもらって結構です)

 

本問ではグラフが与えられていないため、問題文の余白に下図のような「完全資本移動」のマンデル=フレミング・モデルのグラフを描き、このグラフの中に各解答群で述べられている内容を書き込んでください。(頭の中で考えていると、時間がかかる上に正誤判断に迷います)

 

また、下図のように「完全資本移動」の場合はBP曲線が「水平」になります。

与件文では「変動為替レート制下における政府支出拡大の効果」が問われています。

 

政府支出が拡大するということは、下図のようにIS曲線が右シフトします。(数字の①)

また、下図には各解答群の記述をプロットしたものを表しています。

a.為替レートは増価する。

→為替レートは縦軸の利子率と読み換えてください。政府支出が拡大してIS曲線が右シフトすることにより、為替レートは増価(円高)しています。(数字の②)


b.純輸出は減少する。

→解答群aより為替レートは円高になっているため、輸出がしづらくなり純輸出は減少します。


c.投資支出は減少する。

→解答群bより純輸出は減少するため、投資支出は政府支出拡大前の水準に戻り、結果的には変化しません。(数字の④)

※「投資支出は減少する」というのは、IS曲線が元の位置から左シフトするということです。(つまり、政府支出が拡大してIS曲線が右シフトした時点で誤りであることが分かります)


d.消費支出は減少する。

→消費支出は横軸のGDPと読み換えてください。政府支出が拡大してIS曲線が右シフトすることにより、一時的には消費支出が増加します。(数字の③)

→「消費支出は減少する」というのは、解答群cと同じくIS曲線が元の位置から左シフトするということです。(つまり、政府支出が拡大してIS曲線が右シフトした時点で誤りであることが分かります)

 

本問では、(LM曲線が変化する)金融政策については触れられていませんが、純輸出が減少するとGDPも減少するため、消費支出は長期的には政府支出拡大前の水準に戻り、結果的には変化しないと思われます。(数字の⑤)

選択肢1. a:正  b:正  c:正  d:誤

冒頭の解説より、「a:正 b:正 c: d:誤」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢2. a:正  b:正  c:誤  d:正

冒頭の解説より、「a:正 b:正 c:誤 d:」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢3. a:正  b:正  c:誤  d:誤

冒頭の解説より、「a:正 b:正 c:誤 d:誤」の組み合わせであるため正解の選択肢となります。

選択肢4. a:誤  b:誤  c:正  d:正

冒頭の解説より、「a: b: c: d:」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢5. a:誤  b:誤  c:正  d:誤

冒頭の解説より、「a: b: c: d:誤」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

 

マンデル=フレミング・モデルについては過去の出題でも「完全資本移動」のパターンが殆どであり、本問も非常にオーソドックスな内容です。

 

なお、資本移動ゼロのパターンがあり、その場合はBP曲線が垂直になることは、頭の中に入れておいてください。

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