中小企業診断士 過去問
令和5年度 再試験(2023年)
問11 (経済学・経済政策 問9(2))

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問題

中小企業診断士試験 令和5年度 再試験(2023年) 問11(経済学・経済政策 問9(2)) (訂正依頼・報告はこちら)

小国、完全資本移動、静学的な為替レート予想、資産効果の捨象を仮定したマンデル=フレミング・モデルに基づき、マクロ経済政策(財政・金融政策)の効果を考える。
下記の設問に答えよ。

変動為替レート制下における貨幣供給拡大の効果に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

a  為替レートは減価する。
b  純輸出は減少する。
c  投資支出は増加する。
d  消費支出は増加する。

  • a:正  b:正  c:誤  d:正
  • a:正  b:誤  c:正  d:正
  • a:正  b:誤  c:誤  d:正
  • a:誤  b:正  c:正  d:誤
  • a:誤  b:誤  c:正  d:誤

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この過去問の解説 (3件)

01

マクロ経済学のマンデル=フレミングモデル(Mundell-Fleming model)に基づいて、政府支出の増加や貨幣供給の増加が、為替レート、輸出、投資、消費にどのような影響を与えるかを考察するものです。このモデルは、オープンエコノミーにおける短期的な経済政策の効果を分析し、特に柔軟な為替相場(フロート制)の下で、財政政策や金融政策の効果がどのように現れるかを理解するために重要です。

a. 為替レートが下落する(通貨が安くなる)

貨幣供給が増加すると、金利が低下します。低金利により、海外の投資家は自国通貨を売り、自国通貨の価値が下がります。結果として、為替レートは下落(通貨が安くなる)します。これは正しい記述です。

b. 純輸出が減少する

為替レートが下落すると、輸出が安くなり、輸入が高くなるため、純輸出は増加します。このため、「純輸出が減少する」という記述は誤りです。

c. 投資支出が増加する

このモデルでは完全資本移動が前提のため、最終的に国内利子率は世界利子率と同じ水準に戻ります。

利子率が元に戻れば、利子率の減少関数である投資支出も変化しません。そのため、増加するという記述は誤りです。

d. 消費支出が増加する

金利が低下することで、消費者もローンの利息が下がり、消費支出を増やす動機が強くなります。これも正しい記述です。

選択肢1. a:正  b:正  c:誤  d:正

不適切な選択肢です。

選択肢2. a:正  b:誤  c:正  d:正

不適切な選択肢です。

選択肢3. a:正  b:誤  c:誤  d:正

適切な選択肢です。

選択肢4. a:誤  b:正  c:正  d:誤

不適切な選択肢です。

選択肢5. a:誤  b:誤  c:正  d:誤

不適切な選択肢です。

まとめ

マンデル=フレミングモデルは、開かれた経済における短期的な財政政策と金融政策の効果を分析するために用いられます。

政府支出の増加は、金利の上昇を引き起こし、為替レートを上昇させ、純輸出と投資を減少させます。

貨幣供給の増加は、金利を低下させ、為替レートを下落させ、純輸出、投資、消費を増加させます。

柔軟な為替相場制の下では、財政政策は効果が限定される一方、金融政策の効果は大きくなります。

<補足>小国・完全資本移動・変動為替レートというマンデル=フレミング・モデルの前提に立つと、最終的に投資支出は増えも減りもしません(変化なし)となります。つまり、貨幣供給の増加による投資の増減はありません。

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02

今度は政府支出の増加や貨幣供給の増加が、為替レート、輸出、投資、消費にどのような影響を与えるかという問題です。

ここでのポイントも図表の変化を理解しているかどうかになるでしょう。

 

a 貨幣供給が増加すると金利は低下します。低金利になれば、投資家は売りに走り、価値が低下するでしょう。つまり通貨が安くなる状況が生まれますので正しいといえます。

 

b 為替レートが下落することで、輸出しやすくなる状態が生まれます。そのため減少するというのは誤りです。

 

c 投資支出が増加するのは、利子率が減少した場合です。投資支出は利子率の減少関数とおくのが通常なので、貨幣供給拡大の初期段階で一時的に利子率が下がって投資が増える可能性はありますが、最終均衡で利子率が元に戻れば投資支出も元の水準に落ち着き、増加しません。そのため増加するというのは誤りです。

 

d 金利が低下すれば利息も下がります。利息が下がれば消費支出を増やしやすくなるため正解です。

 

ここから答えを導き出します。

選択肢1. a:正  b:正  c:誤  d:正

誤りです。

選択肢2. a:正  b:誤  c:正  d:正

誤りです。

選択肢3. a:正  b:誤  c:誤  d:正

正解です。

選択肢4. a:誤  b:正  c:正  d:誤

誤りです。

選択肢5. a:誤  b:誤  c:正  d:誤

誤りです。

まとめ

図のパターンを理解しておくことが、答えを導き出す最短距離になるのは間違いないでしょう。

ですが政府支出の増加が金利の上昇を引き起こすということを理解しているだけでも、答えに近づけます。

もう一つ貨幣供給の増加が金利の低下を招くこと、貨幣レートが下落することによって、輸出や投資、消費が増加するというのもポイントです。

このあたりの論理的解釈の力が、答えを導き出す時間にも影響します。

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03

マンデル=フレミング・モデルに関する問題です。「完全資本移動」「変動為替レート」という前提条件を押さえておいてください。

(他の前提条件については、本問では無視してもらって結構です)

 

本問ではグラフが与えられていないため、問題文の余白に下図のような「完全資本移動」のマンデル=フレミング・モデルのグラフを描き、このグラフの中に各解答群で述べられている内容を書き込んでください。(頭の中で考えていると、時間がかかる上に正誤判断に迷います)

 

また、下図のように「完全資本移動」の場合はBP曲線が「水平」になります。

与件文では「変動為替レート制下における貨幣供給拡大の効果」が問われています。

 

貨幣供給が拡大するということは、下図のようにLM曲線が右シフトします。(数字の①)

また、下図には各解答群の記述をプロットしたものを表しています。

a. 為替レートは減価する。

→為替レートは縦軸の利子率と読み換えてください。貨幣供給が拡大してLM曲線が右シフトすることにより、為替レートは減価(円安)しています。(数字の②)

 

※なぜ貨幣供給が拡大すると為替レートが減価するのかというと、貨幣量が増加する通貨(例えば円)と貨幣量が変わらない通貨(例えば米ドル)とを比較した場合に、相対的に通貨量が多い円の価値が下がるためです。

→市場にたくさん流通しているモノの価値が「だぶつく」のと理屈は同じです。

→円高傾向にするためには、米国のFRB(連邦準備制度理事会)が円を上回るくらいに米ドルの供給量を増やして相対的に米ドルの量を多くするか、日本銀行が(民間の金融機関に国債を売るなどして)市中から円を回収して市中に出回る円の供給量を減らすことが考えられます。


b. 純輸出は減少する。

→解答群aより為替レートは円安になっているため、輸出がしやすくなり純輸出は増加します。(数字の③と⑤)


c. 投資支出は増加する。

解答群aより為替レートは円安になっているため、投資支出は減少します。(投資をするのであれば、価値が安くなっている円を売り、売ったお金で価値が高いドルを買うのが常道です)


d. 消費支出は増加する。

→消費支出は横軸のGDPと読み換えてください。貨幣供給が拡大してLM曲線が右シフトする(④)ことに加えて、円安効果も加わって消費支出は大幅に増加します。(数字の⑤)

 

なお、貨幣供給が拡大して消費支出が増加しているため、為替レートが円安のままであれば長期的にも消費支出は増加し続けると思われます。(解答群aの解説にあるように、どこかのタイミングで円高傾向になると輸出が減少してGDPは減少、消費支出も減少します)

選択肢1. a:正  b:正  c:誤  d:正

冒頭の解説より、「a:正 b: c:誤 d:正」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢2. a:正  b:誤  c:正  d:正

冒頭の解説より、「a:正 b:誤 c: d:正」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢3. a:正  b:誤  c:誤  d:正

冒頭の解説より、「a:正 b:誤 c:誤 d:正」の組み合わせであるため正解の選択肢となります。

選択肢4. a:誤  b:正  c:正  d:誤

冒頭の解説より、「a: b: c: d:」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢5. a:誤  b:誤  c:正  d:誤

冒頭の解説より、「a: b:誤 c: d:」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

 

マンデル=フレミング・モデルについては過去の出題でも「完全資本移動」のパターンが殆どです。

前問との2問構成でしたが本問も非常にオーソドックスな内容であり、2問とも十分に正答を狙えます。

 

なお、資本移動ゼロのパターンがあり、その場合はBP曲線が垂直になることは、頭の中に入れておいてください。

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