中小企業診断士 過去問
令和5年度 再試験(2023年)
問20 (経済学・経済政策 問17)

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問題

中小企業診断士試験 令和5年度 再試験(2023年) 問20(経済学・経済政策 問17) (訂正依頼・報告はこちら)

生産関数 f は、
Q = f(L, K)
と表される。ここで、Q:生産量、L:労働投入量、K:資本投入量である。
資本投入量を一定として、労働投入量と生産量との関係を描くと、総生産物曲線TPが導かれる。
また、総生産物曲線から、労働投入の追加的な増加に伴う生産量の変化を求めると、労働の限界生産物曲線MPが導出される。
下図は、総生産物曲線と労働の限界生産物曲線を描いたものである。これらの図に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。

a  資本投入量が増加すると、労働投入の各水準において総生産物も増加し、限界生産物曲線は右方にシフトする。
b  労働市場が開放されて外国からの労働移動が生じれば、限界生産物曲線は右方にシフトする。
c  労働投入量が増加すると資本・労働比率が低下し、労働1単位当たりの総生産物は増加する。
d  完全競争下では、労働の限界生産物と実質賃金率が一致するように労働投入量を決めることで企業の利潤は最大化し、労働の限界生産物曲線は労働需要曲線と一致する。
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  • aとb
  • aとc
  • aとd
  • bとc
  • cとd

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題では、生産関数に基づく**総生産物曲線(TP)限界生産物曲線(MP)**に関する理解が必要です。特に、労働投入量と生産量の関係、および資本投入量や外国からの労働移動の影響について考察します。また、限界生産物と実質賃金率の関係や労働需要の決定に関しても理解が求められます。

a. 資本投入量が増加すると、労働投入の各水準において総生産物も増加し、限界生産物曲線は右方にシフトする。

これは正しいです。資本投入量が増加すると、同じ労働投入量であっても、より多くの資本を活用できるため、総生産物が増加します。資本の増加は労働の生産性を高め、**限界生産物曲線(MP)**が右方にシフトします。つまり、同じ労働量でより多くの生産が可能になるため、限界生産物も増加します。

b. 労働市場が開放されて外国からの労働移動が生じれば、限界生産物曲線は右方にシフトする。

これは誤りです。労働移動によって労働力が増加する場合、限界生産物曲線は右方にシフトするわけではありません。むしろ、労働力が増加すると、追加の労働に対する限界生産物が減少することが一般的です。特に資本が一定の場合、**労働の限界生産物(MP)**は労働投入量が増えると逓減するため、曲線は右にシフトせず、下方にシフトする可能性が高いです。

c. 労働投入量が増加すると資本・労働比率が低下し、労働1単位当たりの総生産物は増加する。

これは誤りです。労働投入量が増加すると、資本が一定であれば資本・労働比率は低下しますが、労働1単位当たりの総生産物(平均生産物)は増加するとは限りません。むしろ、資本・労働比率が低下することで、労働の限界生産力が逓減し、労働1単位当たりの生産量は減少する可能性が高いです。これが限界生産物の逓減の法則です。

d. 完全競争下では、労働の限界生産物と実質賃金率が一致するように労働投入量を決めることで企業の利潤は最大化し、労働の限界生産物曲線は労働需要曲線と一致する。

これは正しいです。完全競争市場では、企業は労働の限界生産物(MP)と実質賃金率が等しくなる点で労働投入量を決定し、これによって利潤を最大化します。限界生産物曲線は、企業がどれだけ労働を需要するかを示す曲線でもあるため、労働需要曲線と一致します。

選択肢1. aとb

この選択肢は不適切です。

選択肢2. aとc

この選択肢は不適切です。

選択肢3. aとd

この選択肢は適切です。

選択肢4. bとc

この選択肢は不適切です。

選択肢5. cとd

この選択肢は不適切です。

まとめ

限界生産物曲線(MP)は、追加の労働1単位がどれだけの追加的な生産をもたらすかを示す曲線で、通常は逓減します。

総生産物曲線(TP)は、労働と資本の投入量に応じた総生産量の変化を示し、資本が増加すればTP曲線が右上方にシフトします。

限界生産物の逓減法則:他の生産要素が一定のまま労働投入を増やすと、労働の限界生産物は次第に減少します。

完全競争市場では、企業は労働の限界生産物と実質賃金率が一致する点で労働投入量を決定し、利潤最大化を図ります。

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02

生産関数に関する問題です。以下、誤りの解答群のみ解説します。

 

b.労働市場が開放されて外国からの労働移動が生じれば、限界生産物曲線は右方にシフトする。

労働市場が開放されて外国からの労働移動が生じても、限界生産物曲線は右方にシフトしません(変化しません)

 

「労働市場が開放されて外国からの労働移動が生じる」とは、総生産物曲線TPが描かれたグラフの横軸の労働投入量が増加する(労働量の点が変化する)ということです。グラフで示すと、以下のようになります。

これは、解答群aと対比させると理解できます。

解答群aでは「資本投入量が増加する」とあり、これは労働装備率の増加を意味します。機械を導入して、より資本集約的になったという意味です。資本集約的になると、総生産物も増加して限界生産物曲線は右方(上方)にシフトします。(つまり、解答群aは正解です)

 

対して、解答群bは労働投入量が増加しているため、より労働集約的になっています。

一般的に、より労働集約的になった場合、限界生産物曲線は下方にシフトすると考えられます。

年末に応援要員が加わった小売店などをイメージして頂けると理解しやすいかと思います。(人が増え過ぎて、むしろ非効率になります)

 

※限界生産物曲線MPが右肩下がりになっている、もう1つのグラフを見ると、労働投入量が増加すると限界生産物が減少していることが明らかにグラフから読み取れます。

 

c.労働投入量が増加すると資本・労働比率が低下し、労働1単位当たりの総生産物は増加する。

労働投入量が増加すると資本・労働比率が低下し、労働1単位当たりの総生産物は低下します。

 

労働1単位当たりの総生産物は生産量÷労働量により求められますが、労働投入量が増加するにつれて労働1単位当たりの総生産物が減少していることが下図から分かります。総生産物曲線TPとの切片に点線を入れてみると、労働投入量が増加するにつれて切片の傾きが緩やかになっています。

 

これは、生産量÷労働量の関係が、最初は生産量>労働量だったものが徐々に生産量=労働量に近付きつつあるということを意味しています。(さらに労働投入量を増やし続けると生産量<労働量の関係になり、生産量を1個増加させることで得られる限界利益よりも限界費用が上回るようになるため、企業は生産量=労働量になった段階、すなわち限界利益がゼロになる段階で生産をストップします)

 

このグラフは「収穫逓減」の典型的な形状であり、受験生の方にとっては馴染みがあると思います。

選択肢1. aとb

冒頭の解説より、「aとd」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢2. aとc

冒頭の解説より、「aとd」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢3. aとd

冒頭の解説より、「aとd」の組み合わせであるため正解の選択肢となります。

選択肢4. bとc

冒頭の解説より、「ad」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢5. cとd

冒頭の解説より、「aとd」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

 

解答群dは正しい内容ですが、古典派の第一公準を暗記できている人は正答できるかと思います。

 

本問では、冒頭の解説より総生産物曲線TPが描かれたグラフは馴染みがあり相対的に正誤判断しやすいと考えられるため、解答群cから消去法により選択肢を2つに絞り込むことが正攻法です。

 

また、解答群aの記述は過去問題でも何度か問われている論点であり、本試験で対応できれば望ましいです。

解答群aの記述はなかなか理解しづらいかも知れませんが、DX化により資本集約的な労働環境を整備することにより生産性を向上させることが昨今叫ばれており、そのような背景を絡めながら知識を定着させていってください。

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