中小企業診断士 過去問
令和5年度 再試験(2023年)
問65 (企業経営理論 問16)

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

中小企業診断士試験 令和5年度 再試験(2023年) 問65(企業経営理論 問16) (訂正依頼・報告はこちら)

組織におけるストレスは、従業員の心理や行動に影響を及ぼす一因として知られている。
ストレスを発生させる原因である「ストレッサー」、ストレッサーの結果として生じる反応である「ストレイン」、ストレッサーとストレインとの関係に影響を与える要因である「モデレーター」、ストレスへの対処を指す「コーピング」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 極端な競争心や高い攻撃性といった個人特性は、モデレーターとしてストレッサーとストレインとの関係を強めるように作用する傾向がある。
  • 欠勤や遅刻、怠業は従業員の努力不足や怠惰に起因するものであるため、これらをストレインと見なすことはできない。
  • コーピングには、ストレスの原因であるストレッサーを除去もしくは軽減する情動焦点型コーピングと、ストレス問題を抱える従業員の考え方を変化させる問題焦点型コーピングがある。
  • 従業員の仕事上のストレスへの対処は、専門知識をもった心理カウンセラーに任せ、職場の上司や同僚が関与することは避けるべきである。
  • どのような役割を果たすことが周囲から自分に期待されているのかが明確でない場合に生じる「役割曖昧性」は、役割の解釈の自由度を高めるため、ストレスを軽減する。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

ストレスについて専門的な知識までも問う問題です。

各選択肢をそれぞれ解説します。

選択肢1. 極端な競争心や高い攻撃性といった個人特性は、モデレーターとしてストレッサーとストレインとの関係を強めるように作用する傾向がある。

選択肢の一部を読み替えると以下のように読み解けます。

 

個人特性は、ストレッサーとストレインの関係に影響を与える要因として、ストレッサーとストレインとの関係を強めるように作用する傾向がある。

 

適切な説明であるため本選択肢が正解です。

選択肢2. 欠勤や遅刻、怠業は従業員の努力不足や怠惰に起因するものであるため、これらをストレインと見なすことはできない。

ストレスによって起きているとも考えられます。

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢3. コーピングには、ストレスの原因であるストレッサーを除去もしくは軽減する情動焦点型コーピングと、ストレス問題を抱える従業員の考え方を変化させる問題焦点型コーピングがある。

情動焦点型コーピングはストレッサーの除去を目的とするのではなく、ストレスによる不快な感情や不安を軽減することです

問題焦点型コーピングはストレッサーの除去や解決を目的としています。

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢4. 従業員の仕事上のストレスへの対処は、専門知識をもった心理カウンセラーに任せ、職場の上司や同僚が関与することは避けるべきである。

職場の上司や同僚の関与も必要です。

そのため本選択肢は不正解です。

選択肢5. どのような役割を果たすことが周囲から自分に期待されているのかが明確でない場合に生じる「役割曖昧性」は、役割の解釈の自由度を高めるため、ストレスを軽減する。

自身の役割が曖昧な環境がストレッサーになると考えられます。

そのため本選択肢は不正解です。

まとめ

問題文での定義や常識的に選択肢の内容を吟味すれば正解を絞り込むことも可能ですが、試験においては時間をかけて取り組む必要は低い問題といえます。

参考になった数11

02

組織におけるストレスに関する問題です。

 

「メンタルヘルス・マネジメント検定」という民間の検定資格がありますが、そちらで出題されるような内容です。

与件文で挙げられている用語を、以下に整理します。

 

・ストレッサー

ストレスを発生させる原因です。職場環境、人間関係、役割の曖昧さ、待遇(給与、休日など)が幅広くあります。

たとえば、職場内に人間関係が良好ではない人がいる場合、その人の言動がストレッサーとなります。

 

・ストレイン

ストレッサーの結果として生じる反応です。「ストレス反応」ともいいます。

たとえば、職場内に人間関係が良好ではない人がした言動で、自分が感じる反応(憂鬱、不快、イライラなど)がストレインとなります。

 

・モデレーター

調節機能のことです。性格、コントロールの範囲、社会的支援が挙げられます。

たとえば、職場内に人間関係が良好ではない人がいることが嫌で苦痛だと感じる性格であれば、ストレインは大きくなります。

コントロールの範囲とは、人間関係が良好ではない人の言動を直接コントロールできるかできないか、社会的支援とは上司や同僚が挙げられます。貴方がイライラしている場合に同僚がさり気なくフォローしてくれたりする場合、ストレインは小さくなります。

このように、モデレーターは周りの要因によって変化します。

 

コーピング

ストレスへの対処方法をいいます。情動焦点型コーピングと問題焦点型コーピングの2つがあります。

情動焦点型コーピング:気の持ちようを変える、焦点を逸らす(気にしない)、休息を取るなど

問題焦点型コーピング:問題そのものを解決しようとすること

※焦点を当てる先が「情動」なのか「問題そのもの」なのかによって見極めます。

選択肢1. 極端な競争心や高い攻撃性といった個人特性は、モデレーターとしてストレッサーとストレインとの関係を強めるように作用する傾向がある。

本選択肢で述べられている個人特性を持つ人(闘争本能が強い人)は、モデレーターとしてストレッサーとストレインとの関係を強めるように作用する傾向があるため正解の選択肢となります。

 

※極端な競争心や高い攻撃性といった個人特性は、上手くいけば高い成果を上げることができるため、決して悪い意味合いだけではありません。ただし、周囲への悪影響を及ぼす言動が見られる場合には上司が速やかに注意するなど、適切にコントロールする必要があります。

選択肢2. 欠勤や遅刻、怠業は従業員の努力不足や怠惰に起因するものであるため、これらをストレインと見なすことはできない。

欠勤や遅刻、怠業もストレインと見なすことができます

 

残業が常態化している職場環境下では十分な休息が取れずに欠勤や遅刻をしてしまったり、職場環境への反発・抵抗として怠業をすることが考えられます。

 

一概に従業員の努力不足や怠惰に起因するものであると決めつけることはできないため、不適切な選択肢です。

選択肢3. コーピングには、ストレスの原因であるストレッサーを除去もしくは軽減する情動焦点型コーピングと、ストレス問題を抱える従業員の考え方を変化させる問題焦点型コーピングがある。

冒頭の解説より、情動焦点型コーピングと問題焦点型コーピングの記述が入れ替わっているため不適切な選択肢です。

選択肢4. 従業員の仕事上のストレスへの対処は、専門知識をもった心理カウンセラーに任せ、職場の上司や同僚が関与することは避けるべきである。

冒頭の解説より、モデレーターの1つに社会的支援が挙げられます。

 

特に職場内の問題については、心理カウンセラーよりも職場の上司や同僚が関与する方が上手くいく場合があり、仕事上のストレスへの対処は上司や同僚が関与するべきであるため不適切な選択肢です。

 

※心理カウンセラーが不要なのではなく、職場の上司や同僚が対処することが難しいケース(専門的な知識が求められる場合)には心理カウンセラーが関与することが望ましいです。

選択肢5. どのような役割を果たすことが周囲から自分に期待されているのかが明確でない場合に生じる「役割曖昧性」は、役割の解釈の自由度を高めるため、ストレスを軽減する。

「役割曖昧性」は、役割の解釈の曖昧さを高めるため、ストレスを増大させます。

 

職場内で自身がどのような役割を期待されているのかが曖昧な場合、「自分の存在価値がない」「仕事へのやりがいが感じられない」という心理状態になります。

 

そのような心理状態に置かれているとストレスは大きくなるため、不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

 

与件文で述べられているように、組織におけるストレスは従業員の心理や行動に影響を及ぼす一因となります。

ストレスを放置していると従業員の心を蝕み、休職や離職の原因ともなります。

 

特に中小企業では最低限の人員で業務を回していることが多く、誰か1人が離脱するだけで周囲の負担が大きくなります。

「本人の気持ちの問題」などと軽視することは禁物です。

 

上司は自分の部下とは毎日職場で顔を合わせていると思いますので、「普段と違う」という兆候を把握した場合には、さり気なく部下に様子を尋ねる(「何か元気がないね。きちんと休めているの?」)ようにしましょう。

 

上司が対処できないと思われる場合は、速やかに人事労務のスタッフに相談しましょう。

参考になった数1

03

ストレスの原因に関する問題です。

選択肢1. 極端な競争心や高い攻撃性といった個人特性は、モデレーターとしてストレッサーとストレインとの関係を強めるように作用する傾向がある。

個人の特性はストレス発生原因のストレッサーとストレッサーの結果であるストレインの関係を強めます。

そのため、正しい選択肢です。

選択肢2. 欠勤や遅刻、怠業は従業員の努力不足や怠惰に起因するものであるため、これらをストレインと見なすことはできない。

欠勤や遅刻はストレッサーによるものもあります。

そのため、誤った選択肢です。

選択肢3. コーピングには、ストレスの原因であるストレッサーを除去もしくは軽減する情動焦点型コーピングと、ストレス問題を抱える従業員の考え方を変化させる問題焦点型コーピングがある。

情動焦点型コーピングと、問題焦点型コーピングの説明が逆になっています。

そのため、誤った選択肢です。

選択肢4. 従業員の仕事上のストレスへの対処は、専門知識をもった心理カウンセラーに任せ、職場の上司や同僚が関与することは避けるべきである。

ストレスの対処に上司や同僚の関与も必要です。

そのため、誤った選択肢です。

選択肢5. どのような役割を果たすことが周囲から自分に期待されているのかが明確でない場合に生じる「役割曖昧性」は、役割の解釈の自由度を高めるため、ストレスを軽減する。

役割や期待が明確でないことがストレッサーになることがあります。

そのため、誤った選択肢です。

参考になった数0