中小企業診断士 過去問
令和6年度(2024年)
問151 (経営法務 問15)

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問題

中小企業診断士試験 令和6年度(2024年) 問151(経営法務 問15) (訂正依頼・報告はこちら)

喫茶店を立ち上げる予定の甲氏は、中小企業診断士であるあなたに、以下の2つの質問をしている。空欄①と②には、あなたの回答としてa~dの記述のいずれかが入る。各空欄に該当する記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

質問1
甲氏 :「喫茶店のある商店街の様子を撮影した動画を作成します。しかし、この商店街で流れている音楽が動画に録り込まれるかも知れません。著作権法上問題がありますか。例えば、部屋を撮影し、背景に画家の絵が写り込んでいても、著作権侵害にならないことがある、と聞きました。これと同じ趣旨で、動画にたまたま音楽が録り込まれた場合でも、著作権侵害にならないことがありますか。」
あなた:「いわゆる写り込みに関する著作権法第30条の2の規定ですね。( ① )。」
a  この規定は動画に録り込まれた音楽には適用されません
b  この規定は動画に録り込まれた音楽にも適用され得ます。著作権侵害とはならない要件が規定されているので、それを検討する必要があります

質問2
甲氏 :「店舗の内装は斬新なものとしました。壁、天井、机、椅子などを木目調で統一し、配置にも工夫を凝らしています。このような内装はデザインなので意匠登録できますか。また、建物の外観も特徴がありますが、これも意匠登録の対象となりますか。」
あなた:「( ② )。」
c  店舗の内装は意匠登録の対象とはなり得ますが、建物の外観は意匠登録の対象とはなり得ません
d  店舗の内装および建物の外観は意匠登録の対象となり得ます
  • ①:a  ②:c
  • ①:a  ②:d
  • ①:b  ②:c
  • ①:b  ②:d

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この過去問の解説 (2件)

01

著作権法の写り込み(空欄①)と意匠法の建物の外観(空欄②)に関する問題です。

 

・著作権法の写り込み(空欄①)

文化庁がホームページ上で、著作権法第30条の2の規定対象となる著作物の利用行為として以下のような例を挙げています。

「街角の風景をビデオ収録したところ、本来意図した収録対象だけでなく、ポスター、絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれる場合」

「ポスター、絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれた映像を、放送やインターネット送信する場合」

→解答群bに該当

 

(出典:文化庁「いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について」)

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/utsurikomi.html

 

・意匠法の建物の外観(空欄②)

2019年(令和元年)に意匠法が改正され、建物の外観も意匠登録の対象となっています(令和2年4月1日より施行)。

→解答群dに該当

選択肢1. ①:a  ②:c

冒頭の解説より、「①:b、②:d」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢2. ①:a  ②:d

冒頭の解説より、「①:b、②:d」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢3. ①:b  ②:c

冒頭の解説より、「①:b、②:d」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢4. ①:b  ②:d

冒頭の解説より、「①:b、②:d」の組み合わせであるため正解の選択肢となります。

まとめ

【補足】

 

建物の外観が意匠登録の対象となったのは、建物の外観もブランド価値を構成する要素として重視され、デザインが模倣されることを防止する必要性が高まっているためです。

 

2019年に意匠法が改正される以前にコメダ珈琲が、あるコーヒー店の外観が自社の店舗に極似しているとして裁判で訴えたことがあります。

 

このことからも、コメダ珈琲という全国的に有名なコーヒーチェーン店の外観に似せることで、顧客吸引力が増すということを認識していることが想像されます。

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02

本問は、著作権法における「写り込み」の規定(第30条の2)と、意匠法における保護対象の範囲についての問題です。どちらも近年の法改正により対応が変化している分野であり、ビジネス展開においても影響のある重要な論点です。

選択肢1. ①:a  ②:c

この選択肢は誤りです。「①:a ②:c」の組み合わせは不適切です。

①の「この規定は動画に録り込まれた音楽には適用されません」という記述は誤りです。著作権法第30条の2の「写り込み」の規定は、写真や動画に録り込まれた音楽にも適用されます。文化庁のガイドラインでも、「街角の風景をビデオ収録したところ、本来意図した収録対象だけでなく、ポスター、絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれる場合」などが例として挙げられています。

②の「店舗の内装は意匠登録の対象とはなり得ますが、建物の外観は意匠登録の対象とはなり得ません」という記述も誤りです。2019年(令和元年)の意匠法改正により、建物の外観も意匠登録の対象となっています(令和2年4月1日施行)。

選択肢2. ①:a  ②:d

この選択肢は誤りです。「①:a ②:d」の組み合わせは不適切です。

①の記述が誤りであることは先に説明した通りです。一方、②の「店舗の内装および建物の外観は意匠登録の対象となり得ます」という記述は正しいです。2019年の意匠法改正により、内装デザインと建物の外観の両方が意匠登録の対象になりました。しかし、①が誤っているため、この選択肢全体としては不適切です。

選択肢3. ①:b  ②:c

この選択肢は誤りです。「①:b ②:c」の組み合わせは不適切です。

①の「この規定は動画に録り込まれた音楽にも適用され得ます。著作権侵害とはならない要件が規定されているので、それを検討する必要があります」という記述は正しいです。著作権法第30条の2では、付随対象著作物の利用について規定しており、一定の要件を満たせば著作権侵害とはならないとしています。しかし、②の記述は誤っているため、この選択肢全体としては不適切です。

選択肢4. ①:b  ②:d

この選択肢は正しいです。「①:b ②:d」の組み合わせが適切です。

①の記述は正しく、著作権法第30条の2の「写り込み」の規定は動画に録り込まれた音楽にも適用され得ます。ただし、この規定が適用されるためには、「写真の撮影、録音又は録画の方法によって著作物を創作するに当たつて、当該著作物に係る表現を創作するに際し必然的に生じる」ことや、「軽微な構成部分」であることなどの要件を満たす必要があります。

②の記述も正しく、2019年の意匠法改正により、店舗の内装デザインと建物の外観の両方が意匠登録の対象となっています。内装デザインは「内装の意匠」として、建物の外観は「建築物の意匠」として、それぞれ保護されることになりました。

まとめ

本問の正解は選択肢4です。

著作権法第30条の2では、写真や動画を撮影する際に、意図せず入り込んでしまう他人の著作物(「付随対象著作物」)について、一定の要件の下で著作権侵害にならないと規定しています。この規定は音楽も対象となり得るため、設問の事例のように商店街の音楽が動画に録り込まれた場合にも適用される可能性があります。ただし、主たる被写体として意図的に録音している場合などは適用されませんので、実際の場面では具体的な状況に応じた判断が必要です。

また、2019年(令和元年)の意匠法改正により、それまでの「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」から保護対象が拡大され、「内装の意匠」や「建築物の意匠」も登録できるようになりました。これにより、店舗の内装デザインや建物の外観も意匠登録の対象となり、独自性のあるデザインを法的に保護できるようになっています。

この改正は、カフェやレストランなどの店舗展開において特徴的な内装・外観をブランド価値として活用する企業が増えていることや、コンビニエンスストアやカフェチェーンなどの店舗デザインの模倣が問題となっていたことが背景にあります。例えば、コメダ珈琲のような特徴的な外観を持つコーヒーチェーン店のデザインが模倣された場合に、法的保護を与えることができるようになりました。

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