中小企業診断士 過去問
令和6年度(2024年)
問159 (経営法務 問23)

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問題

中小企業診断士試験 令和6年度(2024年) 問159(経営法務 問23) (訂正依頼・報告はこちら)

消費者契約法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 事業者の軽過失に起因する債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する消費者契約の条項は、消費者契約法上、有効である。
  • 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権につき、当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する消費者契約の条項は、消費者契約法により無効となる。
  • 事業者の重過失に起因する債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項は、消費者契約法上、有効である。
  • 消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める消費者契約の条項は、その全体が消費者契約法により無効となる。

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この過去問の解説 (2件)

01

消費者契約法に関する問題です。

 

この手の問題は、消費者の立場になって各選択肢の記述を素直に読み、ご自身が最も納得できる内容を選択すれば正答することは可能です。(そのような「感覚」が、往々にして正しい場合があります)

 

選択肢1. 事業者の軽過失に起因する債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する消費者契約の条項は、消費者契約法上、有効である。

事業者の軽過失に起因する債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する消費者契約の条項は、消費者契約法上、無効です。

 

事業者の過失による債務不履行であるのに、消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を事業者が免除されるのは、たとえその過失が軽いものであっても消費者にとっては不利益であるため不適切な選択肢です。

選択肢2. 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権につき、当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する消費者契約の条項は、消費者契約法により無効となる。

事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権につき、当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する消費者契約の条項は、消費者契約法により無効となることは最も適切な記述です。

 

事業者の債務不履行が重過失であるのに、事業者にその解除権の有無を決定する権限があるのは消費者にとって不利益であるため正解の選択肢となります。

選択肢3. 事業者の重過失に起因する債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項は、消費者契約法上、有効である。

事業者の重過失に起因する債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項は、消費者契約法上、無効です。

 

事業者の債務不履行が重過失であるのに、消費者に生じた損害を賠償する事業者への責任が、たとえ一部であっても免除されるのは消費者にとっては不利益であるため不適切な選択肢です。

選択肢4. 消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める消費者契約の条項は、その全体が消費者契約法により無効となる。

消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める消費者契約の条項は、損害賠償の予定額と違約金を合算した額が平均的な損害の額を超える部分が消費者契約法により無効とななります。

 

損害賠償の予定額や違約金を定める消費者契約の条項全体が無効になると、事業者にとって著しく不利益(消費者が契約を解除し放題となり、法律の履行が困難となる)になります。

 

一方で、損害賠償の予定額や違約金の上限を定めなければ、消費者にとって著しく不利益(事業者が、法外な損害賠償や違約金を請求することを抑止できない)になります。

 

したがって、消費者と事業者の双方にとって納得できる額の損害賠償額や違約金を設定することが合理的であり、不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

 

一般的に法律の文章は難解で読みづらいため、各選択肢で解説しているような平易な表現に置き換えて(本試験では、頭の中で変換して)みると判断しやすくなります。

 

本問では重過失や軽過失という用語が出てきますが、単に「過失が重い」「過失が軽い(軽微である)」と読み換えるだけで十分です。(過失の程度が問われているのではなく、無効or有効の判断が問われています)

 

※余談ですが、法律の文章がなぜ読みにくいのかを分析した研究結果が、2022年のイグノーベル賞文学賞を受賞しています。

参考になった数5

02

本問は消費者契約法における不当条項規制に関する問題です。消費者契約法では、消費者の利益を不当に害する契約条項を無効とする規定が設けられています。特に第8条から第10条にかけて、事業者の損害賠償責任を免除する条項や、消費者の解除権を制限する条項などについて詳細に規定されています。

選択肢1. 事業者の軽過失に起因する債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する消費者契約の条項は、消費者契約法上、有効である。

この選択肢は誤りです。消費者契約法第8条第1項第1号では、「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項」は無効とされています。この規定は事業者の過失の程度(軽過失か重過失か)を問わず適用されます。

つまり、事業者の軽過失であっても、債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は無効です。消費者契約法は消費者保護の観点から、事業者に一定の責任を負わせることを目的としているためです。

選択肢2. 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権につき、当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する消費者契約の条項は、消費者契約法により無効となる。

この選択肢は正しいです。消費者契約法第10条では、「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」を無効としています。

事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権につき、当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する条項は、法律上消費者が有する解除権を事業者の裁量に委ねることになり、消費者の権利を制限するものです。このような条項は、消費者契約法第10条により無効となります。

選択肢3. 事業者の重過失に起因する債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項は、消費者契約法上、有効である。

この選択肢は誤りです。消費者契約法第8条第1項第3号では、「消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項」は無効とされています。

ただし、この規定は「当該事業者の故意又は重大な過失によるもの」に限定されています。つまり、事業者の重過失に起因する債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項は無効となります。したがって、この選択肢の「有効である」という記述は誤りです。

選択肢4. 消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める消費者契約の条項は、その全体が消費者契約法により無効となる。

この選択肢は誤りです。消費者契約法第9条第1号では、「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」について、「当該超える部分」を無効としています。

つまり、損害賠償の予定額や違約金の全体が無効になるのではなく、平均的な損害の額を超える部分のみが無効となります。したがって、「その全体が消費者契約法により無効となる」という記述は誤りです。

まとめ

本問の正解は選択肢2です。

消費者契約法における不当条項規制の主なポイントは以下の通りです:

事業者の損害賠償責任を免除する条項

債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は無効(軽過失でも適用)

債務不履行による損害賠償責任の一部を免除する条項は、事業者の故意・重過失の場合のみ無効

不法行為による損害賠償責任の全部を免除する条項は無効

不法行為による損害賠償責任の一部を免除する条項は、事業者の故意・重過失の場合のみ無効

消費者の解除権を制限する条項

事業者に解除権の有無を決定する権限を付与する条項は無効

損害賠償額の予定・違約金条項

平均的な損害の額を超える部分のみが無効

これらの規定は、情報・交渉力において優位な立場にある事業者が、不当な契約条項を設定することを防止し、消費者の利益を保護することを目的としています。

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