技術士の過去問
平成27年度(2015年)
適性科目 問43
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問題
技術士 第一次試験 平成27年度(2015年) 適性科目 問43 (訂正依頼・報告はこちら)
事業者にとって、消費者に安全な製品を供給することは重要な責務であるが、製品事故等の発生を完全にゼロにすることは極めて困難なため、事故の発生又は兆候を発見した段階で、適正な届出と回収・修理などのリコールを自主的に実施することが求められている。また、特に消費者に対して人的危害が発生・拡大する可能性があることに気付きながら適切なリコール等の対応をせず、重大な被害を起こしてしまった場合には、行政処分の対象となるばかりではなく、損害賠償責任や刑事責任に発展する場合もあり、その責任は製造事業者や輸入事業者についてはもちろんのこと、販売・流通事業者、設置・修理事業者等も該当する場合がある。よって迅速かつ的確にリコールを実施することは、ますます重要になっており、消費者をはじめ社会全体から事業者に対する評価を維持・向上することにもつながっている。
リコールに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
リコールに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 製品設計の欠陥により製品事故が発生した場合だけでなく、製品の経年劣化によって重大事故が発生した場合であっても、リコール回収の対象になり得る。
- 自動車や家電製品などとは異なり、医薬品は法律に基づいて品質管理がなされているので、リコール回収の対象とはならない。
- リコール対象製品が追跡可能で、すべての対象製品を回収することができた場合であっても、事業者は関係行政機関等ヘリコールの報告を行う必要がある。
- 製品欠陥による事故のおそれだけでなく、製品の表示内容の誤りであってもリコール回収の対象となり得る。
- 製造事業者が、法律に基づいてリコール回収を行ったからといって、直ちに製造物責任法( PL法 )の責任を負うとは限らない。
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この過去問の解説 (3件)
01
1.適切です
経年劣化において重大事故を引き起こす可能性があるものについてはリコールの対象になり、長期使用製品安全点検・表示制度が設けられています。
2.不適切です
医薬品は、医薬品医療機器等法に定められており、リコールの対象になります。
3.適切です
リコールを行う場合は、必ず経済産業省など関係機関に届け出る必要があります。
4.適切です
表示の欠落や誤りについてもリコールの対象になります。
5.適切です
リコール回収を行ったとしても、PL法に抵触しない場合もあることから正しい記述です。
よって、2が正解です。
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02
各項目の内容は以下の通りです。
1.正しい記述です。
事故の原因が経年劣化によるものでも、
危険の発生や拡大防止のために措置を講じる必要があります。
2.誤った記述です。
医薬品は薬機法によるリコール回収の対象となります。
3.正しい記述です。
関係機関へ速やかに報告する必要があります。
4.正しい記述です。
誤表示によって、事故等の危険が発生する場合にはリコール回収の対象になり得ます。
5.正しい記述です。
被害発生の恐れがありリコール回収を行った場合など、
実際に消費者に損害が発生していないケースもあります。
したがって、不適切なものは2なので、2が正解です。
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03
製造物責任については、技術士試験ではよく問われます。関連法令をよく思い出しながら、落ち着いて選択肢を読んでいきましょう。本問は「最も不適切なもの」を選ぶ点にも注意してください。
1. 一般的な製品のリコールについては、消費生活用製品安全法に定義されています。第二条第5項に「この法律において「製品事故」とは、消費生活用製品の使用に伴い生じた事故のうち、次のいずれかに該当するものであつて、消費生活用製品の欠陥によつて生じたものでないことが明らかな事故以外のもの(他の法律の規定によつて危害の発生及び拡大を防止することができると認められる事故として政令で定めるものを除く。)をいう。一 一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生した事故 二 消費生活用製品が滅失し、又はき損した事故であつて、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれのあるもの」、第三十八条に「消費生活用製品の製造又は輸入の事業を行う者は、その製造又は輸入に係る消費生活用製品について製品事故が生じた場合には、当該製品事故が発生した原因に関する調査を行い、危害の発生及び拡大を防止するため必要があると認めるときは、当該消費生活用製品の回収その他の危害の発生及び拡大を防止するための措置をとるよう努めなければならない。」と定義されており、経年劣化による事故が起こった場合も、回収の対象となりえます。よって、適切な選択肢です。
2. 医薬品については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の第六十八条の九に、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品の製造販売業者又は外国特例承認取得者は、その製造販売をし、又は第十九条の二、第二十三条の二の十七若しくは第二十三条の三十七の承認を受けた医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の使用によつて保健衛生上の危害が発生し、又は拡大するおそれがあることを知つたときは、これを防止するために廃棄、回収、販売の停止、情報の提供その他必要な措置を講じなければならない。」とありますので、リコール回収の対象となりえます。よって、不適切な選択肢です。
3. 消費生活用製品安全法第三十五条に、「消費生活用製品の製造又は輸入の事業を行う者は、その製造又は輸入に係る消費生活用製品について重大製品事故が生じたことを知つたときは、当該消費生活用製品の名称及び型式、事故の内容並びに当該消費生活用製品を製造し、又は輸入した数量及び販売した数量を内閣総理大臣に報告しなければならない。」とあります。追跡や回収の有無は定義されていませんので、「事故が生じた時点」で報告義務が生じます。したがって、適切な選択肢です。
4. 欠陥がある製品を製造・販売し、結果的に消費者が損害を被った場合、製造業者に過失が無かったとしても、製造物責任法の規定により原則としてこの損害の賠償責任を負わなければならず、また、欠陥がある製品を製造・販売したことによる企業イメージ低下や、実際に消費者の被害が発生することによる企業イメージの低下のリスクの回避を目的として、製造者・販売者が自主的なリコール(製品の回収・交換・返金など)を行うことがあります。これらは、法律に規定されたリコールではありませんが、実施例は多くあります。製品の表示内容の誤りであっても、後に消費者の損害につながる可能性があるので、自主的リコールの対象となった事例もあります。以上より、適切な選択肢となります。
5. 1.で示したように、消費生活用製品安全法における回収(リコール)の対象となる「製品事故」は、「消費生活用製品が滅失し、又はき損した事故であつて、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれのあるもの」を含みます。この場合は、消費者に危害が発生していなくてもリコール対象となりますが、消費者に危害が発生していないので、製造物責任法(PL法) 第三条の「製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。」により、PL法に定められた責任に対象から外れる可能性があります。したがって、この選択肢は適切です。
以上をまとめると、正解選択肢は2.となります。
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