技術士の過去問
令和元年度(2019年)再試験
適性科目 問39

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問題

技術士 第一次試験 令和元年度(2019年)再試験 適性科目 問39 (訂正依頼・報告はこちら)

IoT・ビッグデータ・人工知能( AI )等の技術革新による「第 4 次産業革命」は我が国の生産性向上の鍵と位置付けられ、これらの技術を活用し著作物を含む大量の情報の集積・組合せ・解析により付加価値を生み出すイノベーションの創出が期待されている。
こうした状況の中、情報通信技術の進展等の時代の変化に対応した著作物の利用の円滑化を図るため、「柔軟な権利制限規定」の整備についての検討が文化審議会著作権分科会においてなされ、平成31年1月1日に、改正された著作権法が施行された。
著作権法第30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)では、著作物は、技術の開発等のための試験の用に供する場合、情報解析の用に供する場合、人の知覚による認識を伴うことなく電子計算機による情報処理の過程における利用等に供する場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、利用することができるとされた。具体的な事例として、次の( ア )~( カ )のうち、上記に該当するものの数はどれか。

( ア )人工知能の開発に関し人工知能が学習するためのデータの収集行為、人工知能の開発を行う第三者への学習用データの提供行為
( イ )プログラムの著作物のリバース・エンジニアリング
( ウ )美術品の複製に適したカメラやプリンターを開発するために美術品を試験的に複製する行為や複製に適した和紙を開発するために美術品を試験的に複製する行為
( エ )日本語の表記の在り方に関する研究の過程においてある単語の送り仮名等の表記の方法の変遷を調査するために、特定の単語の表記の仕方に着目した研究の素材として著作物を複製する行為
( オ )特定の場所を撮影した写真などの著作物から当該場所の 3DCG 映像を作成するために著作物を複製する行為
( カ )書籍や資料などの全文をキーワード検索して、キーワードが用いられている書籍や資料のタイトルや著者名・作成者名などの検索結果を表示するために書籍や資料などを複製する行為
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この過去問の解説 (3件)

01

<正解>5

[解説]

著作権法第30条の4

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)

の具体的な事例に関する個数問題です。

(ア)から(カ)は、以下のとおりとなります。

(ア)該当します。

人工知能の開発のための学習用データとして

著作物をデータベースに記録する行為や

収集した学習用データを第三者に提供する行為

(当該学習用データの利用が人工知能の開発という目的に限定されている限り)

は、「著作物に表現された思想又は感情を享受」することを目的としない行為

にあたると考えられます。

よって、該当します。

(イ)該当します。

リバース・エンジニアリングと言われるような

プログラムの調査解析目的のプログラムの著作物の利用は、

プログラムの実行等によって

その機能を享受することに向けられた利用行為ではないと評価できることから、

「著作物に表現された思想又 は感情」の「享受」を目的としない利用に該当するもの

と考えられます。

よって、該当します。

(ウ)該当します。

いずれの行為についても当該著作物の視聴等を通じて、

視聴者等の知的・精神的欲求を満たす

という効用を得ることに向けられた行為ではないもの

と考えられることから、

著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない行為であると考えられます。

よって、該当します。

(エ)該当します。

研究の過程で、ある単語の送り仮名等の表記の方法の変遷を調査するために、

特定の単語の表記の仕方に着目した研究の素材として著作物を複製する行為は、

あくまで研究の素材として著作物を利用するものであり、

当該著作物の視聴等を通じて、

視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ること

に向けられた行為ではないものと考えられます。

よって、該当します。

(オ)該当します。

特定の場所を撮影した写真などの著作物から

その構成要素に係る情報を抽出して

当該場所の3DCG映像を作成する行為は、

当該著作物の視聴等を通じて,

視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ること

に向けられた行為ではないものと考えられ、

著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない行為であると考えられます。

よって、該当します。

(カ)該当します。

書籍や資料などの文章中にキーワードが存在するか否かを検索する行為は、

当該著作物の視聴等を通じて、

視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ること

に向けられた行為ではないものと考えられることから、

キーワード検索を行うために書籍や資料などを複製する行為は、

著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない行為として、

権利制限の対象となるものと考えられます。

よって、該当します。

これらのことから、

(ア)から(カ)で該当するものは、

(ア)から(カ)の全て6個となり、

5が正解となります。

[参考]

文化庁「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方について」

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/1422075.html

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02

ア.人工知能の学習のためであれば利用できます。

イ.リバースエンジニアリングは利用できます。

ウ.カメラやプリンターの開発を目的としているため、利用できます。

エ.研究の素材として利用する目的としているので、利用できます。

オ.3DCG映像の作成は利用可能です。

カ.制限対象に当たりません。

よって6個該当しますので、答えは5です。

参考になった数17

03

本問に関しては、文化庁発出のhttps://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/pdf/r1406693_17.pdf が参考になります。7ページに具体例が示されています。(ア)~(カ)の事例は全て含まれていますので、正解選択肢は5.となります。

参考になった数3