技術士の過去問
令和2年度(2020年)
適性科目 問33

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問題

技術士 第一次試験 令和2年度(2020年) 適性科目 問33 (訂正依頼・報告はこちら)

科学研究と産業が密接に連携する今日の社会において、科学者は複数の役割を担う状況が生まれている。このような背景のなか、科学者・研究者が外部との利益関係等によって、公的研究に必要な公正かつ適正な判断が損なわれる、または損なわれるのではないかと第三者から見なされかねない事態を利益相反(Conflict of Interest:COI)という。法律で判断できないグレーゾーンに属する問題が多いことから、研究活動において利益相反が関われる場合が少なくない。実際に弊害が生じていなくても、弊害が生じているかのごとく見られることも含まれるため、指摘を受けた場合に的確に説明できるよう、研究者及び所属機関は適切な対応を行う必要がある。以下に示すCOIに関する(ア)~(エ)の記述のうち、正しいものは○、誤っているものは×として、最も適切な組合せはどれか。

(ア) 公的資金を用いた研究開発の技術指導を目的にA教授はZ社と有償での兼業を行っている。A教授の所属する大学からの兼業許可では、毎週水曜日が兼業の活動日とされているが、毎週土曜日にZ社で開催される技術会議に出席する必要が生じた。そこでA教授は所属する大学のCOI委員会にこのことを相談した。
(イ) B教授は自らの研究と非常に近い競争関係にある論文の査読を依頼された。しかし、その論文の内容に対して公正かつ正当な評価を行えるかに不安があり、その論文の査読を辞退した。
(ウ) C教授は公的資金によりY社が開発した技術の性能試験及び、その評価に携わった。その後Y社から自社の株購入の勧めがあり、少額の未公開株を購入した。取引はC教授の配偶者名義で行ったため、所属する大学のCOI委員会への相談は省略した。
(エ) D教授は自らの研究成果をもとに、D教授の所属する大学から兼業許可を得て研究成果活用型のベンチャー企業を設立した。公的資金で購入したD教授が管理する研究室の設備を、そのベンチャー企業が無償で使用する必要が生じた。そこでD教授は事前に所属する大学のCOI委員会にこのことを相談した。
  • ア:○  イ:○  ウ:○  エ:○
  • ア:○  イ:○  ウ:○  エ:×
  • ア:○  イ:○  ウ:×  エ:○
  • ア:○  イ:×  ウ:○  エ:○
  • ア:×  イ:○  ウ:○  エ:○

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この過去問の解説 (3件)

01

利益相反に関する問題は、産業に関与する研究者・技術者が避けて通れない問題ですので、技術士試験でもよく問われます。

この問題は、単なる正誤選択ではなく、「(ア)〜(エ)の正誤の組み合わせ」について、正しいものを一つ選ぶ、という形式です。このような形式の場合は、まず、(ア)〜(エ)の項目を一つずつ丁寧に読み、正しいかどうか判断します。続いて、組み合わせをきちんと書き出して、その組み合わせと一致する選択肢を選ぶようにします。項目ごとの正誤判断ももちろん重要ですが、続くこの過程でミスが起こりやすいので、気をつけてください。

まず、それぞれの正誤ですが、

(ア)→正しいです。精査の結果、利益相反状態は確認されなかった、なっても決して無駄ではなく、疑念を未然に防ぐ上では適切な対応です。

(イ)→正しいです。このような対応は、多くの雑誌で、査読者マニュアルに明記されています。

(ウ)→誤りです。本人と同一生計である配偶者や子、親も利益相反の検討対象となるので、これは委員会へ相談すべき事案となります。

(エ)→正しいです。大学外の営利企業が大学内の施設を無償で利用した場合、利益相反状態を疑われる可能性がありますので、事前に相談することが必要です。

これらの正誤を正確に並べると、3.が正解となります。

参考になった数17

02

<正解>3

[解説]

利益相反(Conflict of Interest:COI)に関する記述内容についての正誤の組み合わせ問題です。

(ア)から(エ)の記述内容は、以下のとおりとなります。

(ア)正しい記述内容です。

兼業許可と異なる兼業活動が行われる場合に、

所属する大学のCOI委員会に相談することは、

適切と考えられます。

よって、正しい記述内容です。

(イ)正しい記述内容です。

査読を依頼された論文の内容に対して、

公正かつ正当な評価を行うことができるかについて、

疑義がある場合には、

その論文の査読を辞退することは、

適切と考えられます。

よって、正しい記述内容です。

(ウ)誤った記述内容です。

配偶者名義で少額であったとしても、

性能試験及びその評価に携わった企業の未公開株を購入することは、

利益相反に該当する可能性があります。

そのような場合に、所属する大学のCOI委員会への相談を省略することは、

適切でないと考えられます。

よって、誤った記述内容です。

(エ)正しい記述内容です。

公的資金で購入した研究室の設備を

自らのベンチャー企業に無償使用させることは、

利益相反に該当する可能性があるため、

所属する大学のCOI委員会に相談することは、

適切と考えられます。

よって、正しい記述内容です。

これらを踏まえて、各選択肢を検討すると以下のとおりとなります。

1 (ウ)が〇となっているため、

不適切な組み合わせとなります。

2 (ウ)が〇、(エ)が×となっているため、

不適切な組み合わせとなります。

3 (ア)から(エ)の全てが合致しているため、

適切な組み合わせとなります。

4 (イ)が×、(ウ)が〇となっているため、

不適切な組み合わせとなります。

5 (ア)が×、(ウ)が〇となっているため、

不適切な組み合わせとなります。

よって、3が正解となります。

参考になった数3

03

利益相反に関する正誤問題です。

利益相反とはある行為によって一方の利益になると同時 に、他方への不利益になる状態を指します。

(ア)兼業の活動日が異なるとき、大学のCOI委員会に相談するのは判断として正しいです。

(イ)自らの自らの研究と非常に近い競争関係にある論文の査読を行う際、公正かつ適切な評価を行えない可能性があるため、査読を辞退するのは判断として正しいです。

(ウ)不適切です。たとえ配偶者であっても、同一生計とする配偶者及び一親等の者(両親および子供)の利益も利益相反の検討対象にしなければならないことが、「厚生労働科学研究における利益相反の管理に関する指針」に記載されています。

(エ)一般的に外部の研究室の設備を使用する時は有償になるため、ベンチャー企業が無償で使用する必要が生じた際、大学のCOI委員会に相談するのは判断として正しいです。

したがって、3が正解となります。

参考になった数2