技術士の過去問
令和3年度(2021年)
基礎科目「設計・計画に関するもの」 問5

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問題

技術士 第一次試験 令和3年度(2021年) 基礎科目「設計・計画に関するもの」 問5 (訂正依頼・報告はこちら)

構造設計に関する次の(ア)〜(工)の記述について、それぞれの正誤の組合せとして、最も適切なものはどれか。ただし、応力とは単位面積当たりの力を示す。

(ア)両端がヒンジで圧縮力を受ける細長い棒部材について、オイラー座屈に対する安全性を向上させるためには部材長を長くすることが有効である。
(イ)引張強度の異なる、2つの細長い棒部材を考える。幾何学的形状と縦弾性係数、境界条件が同一とすると、2つの棒部材の、オイラーの座屈荷重は等しい。
(ウ)許容応力とは、応力で表した基準強度に安全率を掛けたものである。
(工)構造物は、設定された限界状態に対して設計される。考慮すべき限界状態は1つの構造物につき必ず1つである。
  • ア:正  イ:誤  ウ:正  エ:正
  • ア:正  イ:正  ウ:誤  エ:正
  • ア:誤  イ:誤  ウ:誤  エ:正
  • ア:誤  イ:正  ウ:正  エ:誤
  • ア:誤  イ:正  ウ:誤  エ:誤

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は5です

(ア)誤り

オイラー屈折というのは部材の両端を抑えたときに部材がぐにゃと曲がる現象のことです。

これが柱などだと危険ですね。

部材が長くなればより曲がりやすくなると考えられるためより危険といえます。

従ってこの記述は誤りです。

(イ)正しい

オイラー座屈の座屈荷重の式は以下になります。ここに引張強度は含まれれないため

文中の前提のとおりならば座屈荷重は等しいといえます。

Pcr2EI/L2k

E…ヤング係数

I…断面2次モーメント

Lk…座屈長さ

(ウ)誤り

許容応力は基準強度に安全率を「除した(割った)」ものになります。

σalF/S

Sが安全率

(エ)誤り

終局限界状態と使用限界状態など一つとは限りません。

受験している専門部門によってこの問題は選択するかどうかが大きく変わると思います。

もう少し複雑な計算問題も出ることが想定されるので、難しそうであれば切ってしまったほうがいいかもしれません。

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02

座屈荷重についての設問です。

 

(ア)誤り

両端がヒンジで圧縮力を受ける細長い棒部材について、オイラー座屈に対する安全性を向上させるためには部材長を長くすることが有効である。

座屈荷重Pcr=nπ2EI/L で表されます。

n: 端末条件係数、E:弾性係数、I:断面二次モーメント、L: 柱の長さ

部材長が短いほど座屈荷重は大きくなり、安全性は向上するので、誤りです。

 

(イ)正しい

引張強度の異なる、2つの細長い棒部材を考える。幾何学的形状と縦弾性係数、境界条件が同一とすると、2つの棒部材の、オイラーの座屈荷重は等しい。

座屈荷重は、(ア)の式のとおりであり、引張強度によらないので、正しいです。

 

(ウ)誤り

許容応力とは、応力で表した基準強度に安全率を掛けたものである。

σalF/S

σal: 許容応力度、σF: 基準強度、S: 安全率

安全率は、掛けるのではなく、割ります。

 

(工)誤り

構造物は、設定された限界状態に対して設計される。考慮すべき限界状態は1つの構造物につき必ず1つである。

限界状態には、供用中における使用限界状態、繰り返し荷重における疲労限界状態および断面破壊や変位などにおける終局限界状態があり、1つではないです。

選択肢5. ア:誤  イ:正  ウ:誤  エ:誤

適切です。

参考になった数8

03

材料力学に関する出題です。

 

(ア)両端がヒンジで圧縮力を受ける細長い棒部材について、オイラー座屈に対する安全性を向上させるためには部材長を長くすることが有効である。

誤った記述です。長いものほど圧縮力をかけると折れやすいイメージです。

ちなみにオイラー座屈荷重はPcr=nπ2EI/L です。

n: 端末条件係数、E:縦弾性係数、I:断面二次モーメント、L: 柱の長さ


(イ)引張強度の異なる、2つの細長い棒部材を考える。幾何学的形状と縦弾性係数、境界条件が同一とすると、2つの棒部材の、オイラーの座屈荷重は等しい。

正しい記述です。オイラー座屈において引張強度(破断するときの応力)は関係ありません。上の理論式からもわかります。

ちょっとイメージとあわないかもしれませんが、引張強度が大きい材料は縦弾性係数も高い傾向はありますので座屈荷重も大きいものが多いには多いです。しかし直接の関係はありません。


(ウ)許容応力とは、応力で表した基準強度に安全率を掛けたものである。

誤った記述です。基準強度はその材料の破損の限界を示すものです。安全率は設計によって1より大きい値を設定しますが、例えば安全率3という場合には許容できる応力は基準強度の1/3ということになります。よってかけたものではなく割ったものです。

σalF/S

σal: 許容応力度、σF: 基準強度、S: 安全率


(工)構造物は、設定された限界状態に対して設計される。考慮すべき限界状態は1つの構造物につき必ず1つである。

誤った記述です。土木学会の提案しているものに限っても、

コンクリート構造物の供用中に生じるひびわれ幅やたわみ等について検討する使用限界状態

繰り返し荷重を受ける部材でコンクリートや鋼材の疲労に対する安全性を検討する疲労限界状態

断面破壊,剛体安定,変位,変形等に対応する終局限界状態があります。

1つの構造物についても1つだけを検討するわけではありません。

選択肢5. ア:誤  イ:正  ウ:誤  エ:誤

以上から本選択肢が正解です。

まとめ

少し突っ込んだ選択肢もある難しめの問いでした。一応材料力学を学習していれば正解の選択肢を選ぶことはできそうですが、(エ)については建築・土木関係の専門の方でないと回答するのは難しかったかもしれません。

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