宅地建物取引士の過去問
令和4年度(2022年)
権利関係 問4

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問題

宅建試験 令和4年度(2022年) 権利関係 問4 (訂正依頼・報告はこちら)

A所有の甲土地にBのCに対する債務を担保するためにCの抵当権(以下この問において「本件抵当権」という。)が設定され、その旨の登記がなされた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
  • Aから甲土地を買い受けたDが、Cの請求に応じてその代価を弁済したときは、本件抵当権はDのために消滅する。
  • Cに対抗することができない賃貸借により甲土地を競売手続の開始前から使用するEは、甲土地の競売における買受人Fの買受けの時から6か月を経過するまでは、甲土地をFに引き渡すことを要しない。
  • 本件抵当権設定登記後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Cが本件抵当権の実行として競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てなければならない。
  • BがAから甲土地を買い受けた場合、Bは抵当不動産の第三取得者として、本件抵当権について、Cに対して抵当権消滅請求をすることができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

この問題は抵当権に関する問題です。

図などを描いて関係性をしっかり把握しましょう。

選択肢1. Aから甲土地を買い受けたDが、Cの請求に応じてその代価を弁済したときは、本件抵当権はDのために消滅する。

この選択肢のDは新しい所有者であり、抵当権がある不動産を購入した第三取得者です。

新しい所有者Dが抵当権者Cに、代わりに借金を返済することで、抵当権は消滅します。

これを代価弁済といいます。

従って、正しいです。

選択肢2. Cに対抗することができない賃貸借により甲土地を競売手続の開始前から使用するEは、甲土地の競売における買受人Fの買受けの時から6か月を経過するまでは、甲土地をFに引き渡すことを要しない。

抵当権者であるCが、甲土地の抵当権を実行するために競売を行った結果、Fが甲土地を買い取った場合、FはCと同じ立場に立ちます。

Fが甲土地の所有者となったことで、甲土地に設定されていた抵当権がFの所有者権に優先することになります。このため、甲土地を借りていたEは、Fに対して甲土地の返還をしなければなりません。

つまり、Eの賃借権は、Fの所有権に対して優先することができないことになります。よってFに対して引き渡さなければなりません。

従って、誤りです。

選択肢3. 本件抵当権設定登記後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Cが本件抵当権の実行として競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てなければならない。

申し立てなければならないという箇所が誤っています。

抵当権が設定された土地に建物が建てられた場合、抵当権者はその土地と建物を一緒に競売にかけることができます。(この方法を一括競売といいます。)

従って、誤りです。

選択肢4. BがAから甲土地を買い受けた場合、Bは抵当不動産の第三取得者として、本件抵当権について、Cに対して抵当権消滅請求をすることができる。

債務者や保証人、後継者は抵当権消滅請求という方法で債務を免れることは許されず、本来の債務を弁済すべき立場にあります。

この問題のBは債務者です。債務者なので抵当権消滅請求をすることはできません。

従って、誤りです。

まとめ

関係性をしっかり理解して、丁寧に問題を解くことが大切です。

「することができる」「しなければならない」など言い換えるひっかけ問題も多いので、ひっかからないように問題文をしっかり読み対策をしましょう。

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02

担保物権界のスターみんな大好き抵当権の問題です。

まずは当事者の関係をきちんと把握しましょう。

基本的に主な登場人物はこの3者

本問C 抵当権者 抵当権という権利を持つ者 

本問A 抵当権設定者 抵当権という権利を自らの所有物に創設した者 

本問B 債務者 抵当権が担保する債権(被担保債権と呼称されます)の債務者 

選択肢1. Aから甲土地を買い受けたDが、Cの請求に応じてその代価を弁済したときは、本件抵当権はDのために消滅する。

(代価弁済)第三百七十八条 抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

第三者Dが登場し代価弁済の条文そのままの行動をしています。

1 抵当不動産の所得者Aからこれを買った第三者D(無償ではNG)が、

2 抵当権者Cの要求に応じて代価を支払ったとき(Dから勝手に支払ってもダメ)は、

3 CとDとの間において当該抵当権は消滅する

この規定はさっさと借金を取り立てたいCのための規定なのでC主導で話が進みます。

結構条件が細かいので注意が必要です。

選択肢2. Cに対抗することができない賃貸借により甲土地を競売手続の開始前から使用するEは、甲土地の競売における買受人Fの買受けの時から6か月を経過するまでは、甲土地をFに引き渡すことを要しない。

第三百九十五条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である「建物」の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その「建物」を買受人に引き渡すことを要しない。

この猶予期間は、いわゆる追い出し屋からアパート等住民を守るために設けられたので土地には適用されません。ついでに建物についても家賃を払わないと追い出されます。

選択肢3. 本件抵当権設定登記後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Cが本件抵当権の実行として競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てなければならない。

抵当地の上の建物の競売)第三百八十九条 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することが「できる。」ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。

引っ掛け問題ですね。「できる」だけで「しなければならない」わけではありません。抵当権者の自由です。

参考までに一括競売の要件を記しておきます

1 更地に抵当権を設定する

2 抵当権設定後にその土地上に建物を築造する

3 建物所有者が抵当権のされた土地に対抗できる権利を有していない

1により後で建物を建てる者は土地に抵当権が設定されているのがわかるので、このリスクを承知ということになり公平です。

選択肢4. BがAから甲土地を買い受けた場合、Bは抵当不動産の第三取得者として、本件抵当権について、Cに対して抵当権消滅請求をすることができる。

(抵当権消滅請求)

第三百七十九条 抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。

第三百八十条 主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

原則として被担保債権が存在する限り抵当権も存続するので、これをなくすには借金全額を返さなければなりません。

この例外の規定が代価弁済であり抵当権消滅請求です。抵当権消滅請求は第三取得者側からアクションなので実行してもいいと思える第三者である必要があります。

問題に戻り本問のBは抵当不動産の被担保債権の債務者です。借金した本人ですから抵当権を消滅させたければ原則に戻り借金全額返せが合理的です。

まとめ

比較的頻度の高い論点にひっかけを交えたいじわるな問題です。中途半端に覚えている人ほどはまりやすい。

ここらは勉強量で差が出やすい部分です。

繰り返しテキストを読むことであやふやな部分を潰していきましょう。

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03

この問題を読んだ時に、関係図を書くと整理しやすいです。

BのCに対する債務ということは、C(債権者:権利がある人)→B(債務者:義務がある人)という状態です。

Aの土地に、Cの債権を担保するために抵当権が設定されています。(登記済み)

選択肢1. Aから甲土地を買い受けたDが、Cの請求に応じてその代価を弁済したときは、本件抵当権はDのために消滅する。

抵当権が設定された不動産を取得した人を第三取得者といいます。

この選択肢ではDが第三取得者となります。

 

もし、B(債務者)が返済を行わないと、C(債権者)が抵当権を実行し土地の所有権を失う可能性があります。

C(債権者)からの請求に応じて、Dが代価を弁済した場合(代価弁済)、抵当権は消滅します。

よって、この選択肢は正しいです。

選択肢2. Cに対抗することができない賃貸借により甲土地を競売手続の開始前から使用するEは、甲土地の競売における買受人Fの買受けの時から6か月を経過するまでは、甲土地をFに引き渡すことを要しない。

C(債権者)がA土地に抵当権を設定したあと、A→Eに貸している状態で、抵当権の実行によりFが買い受けたという状況です。

 

抵当権の実行により買い受けたFは、C(債権者)の権利を引き継ぎます。

先に抵当権が設定された土地を、Eが借りているので、権利を引き継いだFに対抗することはできません。

 

6か月の猶予があるのは、建物に抵当権が設定されているときです。

よって、この選択肢は誤りです。

選択肢3. 本件抵当権設定登記後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Cが本件抵当権の実行として競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てなければならない。

抵当権設定後に、建物が建築された場合、C(債権者)は土地とともに建物を競売することができます。

申し立てなければならないものではありません。

よって、この選択肢は誤りです。

選択肢4. BがAから甲土地を買い受けた場合、Bは抵当不動産の第三取得者として、本件抵当権について、Cに対して抵当権消滅請求をすることができる。

A→B(債務者)が買い受けた場合、Bは債務者でもありますので、抵当権消滅請求をすることができません。

 

抵当権消滅請求とは、第三取得者から抵当権の消滅を請求することです。

反対に、債権者から第三取得者に抵当権の消滅を請求することを代価弁済といいます。

よって、この選択肢は誤りです。

まとめ

抵当権は苦手としている方は多いかもしれませんが、自分なりに関係図を書いて整理するといいでしょう。

どちらが債権者・債務者なのかなど、問題を読み間違えないように注意が必要です。

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