【基礎知識】
当問題のポイントは、
・ 優先株式による出資の話であること
・ 甲さん(創業者)にとって有利な条件であること
がわかります。それを踏まえて、解答を検討していきます。
株主の構成を創業者と投資家の2つに分けて考え、優先株を投資家が引き取るケースをお考え下さい。
ベンチャー企業の投資を回収するには、第三者に売却、IPO(株式公開)の2つが考えられます。IPOの場合はキャピタルゲインを得ることができるため、創業者、投資家ともに儲けることができますが、第三者に売却する際には創業者と投資家の間で取り合いが起こります。
優先株では、一定の優先権を投資家に付与することで、ベンチャー企業には困難な資金調達を可能にする側面がありますが、一方で資金調達を人質に不利な条件、つまり、第三者売却や配当金の支払い等の際にいかに投資家にお金を持っていかれないようにするかが、当問題のポイントです。
まず「優先株とは」についてです。
一般の株式と比較して、配当が高かったり、解散時に優先的に資産を受け取れるといったメリットがある反面、議決権に一定の制限があったり、株価が高めに設定されている株式になります。議決権制限を行いながら、高額の資金調達が可能であるため、スタートアップ期の企業などでよく使われます。
与える優先事項は会社法で以下の内容と定められています。この中から優先事項を設定し、優先株の内容を決定します。
① 剰余金の配当
② 残余財産の分配
③ 議決権制限株式
④ 譲渡制限
⑤ 転換請求権
⑥ 一斉(強制)転換条項
⑦ 全部取得条項
⑧ 拒否権条項
⑨ 役員選解任権
優先株には大きく2つの分類の考え方があります。
・ 参加型 or 非参加型
・ 累積型 or 非累積型
〇参加型 or 非参加型
剰余金の配当において、優先株があれば、優先株分をまずは分配します。そして残分について普通株で分配を行います。
参加型はこの普通株の分配についても保有株式相当分が分配される株式です。つまり、優先株式分の配当+普通株式分の配当が分配されます。当然株価は高いのですが、投資家には大きなメリットがあります。
一方、非参加型は優先株式分の配当のみが支払われるものになります。当然株価は参加型と比べて安くなります。
また、参加型と非参加型の間、つまり普通株式の分配分に一定の上限が定められた制限参加型があります。
参加型は投資家に有利、非参加型は企業(創業者)に有利になります。
〇累積型 or 非累積型
累積型はある年の優先株の配当金が少なかった場合に、そのマイナス分を翌年度以降に持ち越せる優先株です。非累積型は持ち越すことができません。当然累積型は投資家に有利、非累積型は企業側に有利ということになります。