中小企業診断士の過去問
令和3年度（2021年）
経済学・経済政策 問5（2）

乗数効果についての出題です。

マクロ経済学的には、景気回復策としての政府支出の増加か減税かを比較すると政府支出の方が効果が大きいとされています。

上のことを理解した上で設問を読めば、絞り込みが可能です。

aかｂ、cかdはそれぞれ逆のことを言っています。

正解はaかcとなり、１となります。

【基礎知識】

景気拡大の効果とありますが、結局は所得Ｙをたくさん増やすこととお考え下さい。

前問で、以下の式を得ました。まだ解かれていない方は前問から解いていただいた方がいいかと思います。

Ｙ＝１／（１－ｃ）・Ｃ０－ｃ／（１－ｃ）・Ｔ＋１／（１－ｃ）・（Ｉ＋Ｇ）

この時ｃは０＜ｃ＜１から、１／（１－ｃ）は１よりも大きな乗数になります。

それぞれの乗数効果を見ていきます。

政府支出を増やした場合は、１／（１－ｃ）分、Ｙが増加します。

減税をしたときはどうなるでしょうか？税金を１単位減らすと、ｃ／（１－ｃ）分所得が増加します。政府支出と減税効果を比較すると、

１／（１－ｃ）－ｃ／（１－ｃ）＝１となり、１／（１－ｃ）＞ｃ／（１－ｃ）となることがわかります。つまり、同規模であれば、減税より政府支出を増やした方がＹの増加が大きくなります。

均衡予算乗数は、前問の基礎知識より、１となりますので、増税で政府支出の増加を賄った場合は政府支出の増分だけ、Ｙが増加します。上記で減税の効果よりも政府支出増加の効果の方が大きかったですが、均衡予算乗数が１であるため、政府支出を増加した効果は、増税による景気抑制効果で打ち消されてしまうことになります。

【選択肢評価】

ａ、ｂ　各乗数より、景気拡大効果は政府支出を増加した方が大きい。よってaは正しい。

ｃ、ｄ　均衡予算乗数が１より、政府支出の増加分と所得の増加分は等しくなります。よってｃは正しい。

Y=1/(1-c)×(C₀-_cT+I+G）を前提として、

a:政府支出の増加はGの増加、減税額は-_cTの減少となります。限界消費性向（ 0 ＜ c ＜ 1 ）ですので、GとTが同じ値の時、G＞_cTとなります。よって、景気拡大の効果は政府支出の増加の方が大きいです。

b:aの説明より不適切です。

c:増税は-_cTの増加となります。aの説明のとおり、GとTが同じ値の時、G＞_cTとなりますので、政府支出の増加による総需要の拡大効果は増税による総需要の減少分を上回るので、増加させた政府支出の分だけ景気拡大の効果があります。

d:cの説明より不適切です。